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会長様は俺様閣下 1

1   翔太(SHOUTA)


 「いいかい、一条 和臣様だ」
 「和臣様?」
 「そう。粗相のないようにな」
 粗相ってどんなだろう…?
 三浦 翔太は首を傾げた。
 大好きだったお母さんが病気で亡くなって、お父さんの働いている一条家に翔太までお世話になる事になったのだ。

 お父さんのお仕事は和臣様のお父さんの運転手で時間が不規則。
 それでまだ6歳の翔太をお父さんが一人で育てるのが難しいから、と和臣様のお父さんが、自分の息子も7歳だし遊び相手にいいだろうと翔太まで一緒に一条のお屋敷に入る事になったのだ。
 
 お父さんに手をひかれて連れて行かれたのはお化けが出そうな暗い広いお屋敷だった。
 翔太は恐くてお父さんの手をぎゅっと掴んだ。
 「どうした?恐くないぞ」
 怖いよ、とは言えなかった。
 でも広い庭の木が鬱蒼としてる感じがする。
 なんとなく重苦しい感じがする。
 ぜったいお化けはいる。

 後から思えば日本庭園で昔ながらの日本家屋の重厚感にそう思っただけなのだろうけれど、翔太はここにお化けはぜったいいると思い込んでしまった。
 屋敷の中には畳の部屋が続いていて広い。
 こんなに畳の部屋が続くのも見た事もなかったのでやっぱりここはお化け屋敷なんだと走って逃げ出したかった。
 でも繋いでるお父さんの手を離したらきっとお化けに襲われると思って離す事も出来ない。
 連れられるまま一つに部屋にお父さんがノックして入った。
 そこは本がいっぱいだけど床の部屋で普通に見えた。
 思わずほっとしてしまう。
 「すみません、今日からお世話になります。翔太、挨拶は?」
 「三浦 翔太です。6歳になりました」
 ぺこんと勢いよく頭をさげる。
 「元気いいな。和臣」
 「はい。ええと、翔太、くん?一条 和臣です。よろしく」
 え?と翔太が頭を上げると立派な椅子に座った小父さんの隣に子供がいた。
 「三浦、翔太くんは和臣と一緒に離れで過ごさせていいか?」
 「お任せ致します。どうぞよろしくお願い致します」
 お父さんが頭を下げている。
 「そう畏まらなくていい。どうやら和臣も気に入ったようだしな」
 「そうですね。可愛い。翔太?おいで」
 和臣と名乗った自分よりもちょっと大きい。その子が翔太を呼んだ。
 さっきは<くん>をつけてたのにもう呼び捨てだ。

 そういえばと翔太はここに来る前にお父さんに言われていた事を思い出した。
 「ええと…和臣、様?」
 「様はいらない。和臣でいい。父様?いいですね?」
 「お前がいいなら構わん。随分気に入ったようだ」
 「ええ。翔太」
 和臣が翔太に向かって手を差し出してきたのでそれに向かって翔太はととっと走って行ってその手を掴んだ。
 「翔太は僕のものですね?」
 「まぁ、そうなるだろうね」
 和臣と小父さんの会話に翔太は首を傾げた。
 「う~ん……翔太くん、和臣をよろしくね?」
 小父さんが椅子から立ち上がると翔太の前にわざわざ屈んで目線をあわせてそう言ってくれたのに翔太は思い切りこくんと頷いた。
 「はい」
 「おりこうさんだ。和臣…?」
 「なんですか?」
 「あんまり苛めるなよ…?お母さんを亡くしたばかりなんだし」
 「わかってますよ」
 本当かねぇ、と呟いている小父さんと手を繋いだ和臣を見比べた。
 「ええと…和臣、でいい、の?」
 「いいよ。翔太。何?」
 「よろしくお願いします」
 にかっと笑うと和臣は一瞬驚いた顔をしてからそして笑顔を見せてくれた。
 よろしくお願いします、ってちゃんと言うんだよ、とお父さんに言われていた。
 だからそう挨拶した。
 別にそれを後悔してるわけではないけれど。
 あの時の和臣の笑顔も可愛かった、と翔太は初めて会った時の事を思い出せばいつも浮かぶのは和臣の笑顔だった。
 
 それが悪魔の微笑みなんて全然知らなかった。
 いや、全部が悪魔じゃないんだけど…。
 基本は優しいんだろうけど、何しろ意地悪だ。
 それはもうずっとずっと変わりない。
 それなのに未だに和臣と一緒にいる。
 離れられない、離してもらえない。
 きっとずっと。
 はぁ、と翔太は初めて会った時の和臣の笑顔を思い出して溜息を吐き出した。
 
 
 

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