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会計クンは鷹揚自若 2

2 泰明(TAIMEI)

 私立秀邦学院高等学校。
 成績優秀者が集まる全国でもトップクラスの高校。
 その現生徒会を束ねるのは一条グループの御曹司一条  和臣(いちじょう かずおみ)。
 カリスマ性は1年生で会長に選ばれた位だ。
 容姿端麗、眉目秀麗。
 存在感、威厳、どれもすでに高校生離れしており、教師からの信も篤い。
 頭脳も全国トップ。
 すでに博士号まで持っているという噂まである位だった。
 
 その会長を支えるのが二宮 如(にのみや ゆき)。怜悧な美貌の副会長として名を馳せているのは本人は知らない。
 冷静沈着、冷徹無比という言葉がぴったりと当てはまる印象だった。
 漆黒のさらさらの黒髪に眼鏡。
 眼鏡が冷たい印象をさらに際立たせていた。
 それでもなお美人と表立ってではなく、裏での人気は会長よりも上だろうと言われるくらいだ。
 
 六平 泰明(むつひら たいめい)はその生徒会の会計をしていた。
 会長が1年生で異例の生徒会長就任。これは3年まで続くだろう。
 そしてその会長に泰明は会計にと名指しされたのだ。

 …何故かは知らないけれど。

 学年は一緒だけれど、そんなに話した事もない。
 いや六平の父の会社も一条グループの中に一応位置するしそれなりに話をする事はあった。けれど泰明自身は会長と懇意にしてたというほどのものではなかったはずなのに…。

 いつか会長に聞いてみようと思いつつ今だにその機会はなくて理由を聞いた事はなかった。
 泰明はどちらかといえば会長を煙たがっていた方だ。
 どうしても秀邦には一条の関係者の家の子息達が多くてやっかみにも繋がるのだ。それが面倒だったのだが、さすがに会長から生徒会に指名されたのを断る事は出来なくて仕方なく引き受けたのだった。

 「六平、生徒会室だろ?一緒いこう」
 「ああ」
 声をかけてきたのは同じ生徒会の七海 泉(ななうみ いずみ)だ。
 2年生から会長、副会長、書記、会計、4名、あと3年生から会計、書記が1名ずついるけれど、3年生のどちらも一条の息のかかった人間。実質会長の意のままに生徒会が、いや、学校もだろう、が動いている気がしてならない。

 一条に関係がないのは二宮副会長とこの同じクラスの七海位だろう。
 二宮副会長は外部組だけれど、いつも会長に次いで学年二位の成績。
 怜悧でいつも冷静で美人さんだ。

 秀邦の悪習といっていいだろう風習に、会長とは1年の時から噂の的だったのだが、当の会長と副会長は飄々としていたものだった。なるほど、今年の1年生が入学してくれば思わず納得した。
 まぁ、他人の事は泰明にはどうでもいい事だ。
 他人にも世の事にも興味を持つという事が泰明には滅多にないので、よく父には呆れられてしまうが、それもどうでもいい事だった。


 中間テスト明けの日曜日。
 姉の婚約式がホテルで行われるのに面倒な、と思いつつも泰明は出席していた。
 五十嵐家の末席に座っているのはやはり五十嵐 駿也だった。

 しかしそこに学校でのつんとしたイメージは欠片もなかった。
 小さくなって一番下の席にいないもののようにして五十嵐はただ座っていた。
 学校での印象とあまりにも違いすぎる五十嵐に泰明は珍しく興味を惹かれ、自然に視線は五十嵐に向けられる。
 「泰明くんは和臣くんの覚えめでたいらしいから」
 かか、と五十嵐の父親が笑う。
 顔は笑っていても目が笑っていない。

 結婚する由梨の事は触れず、ずっと泰明が会長に認められているとか、そんな話ばかり。
 どうやら五十嵐の父親に気に入られたのは由梨ではなく一条会長から生徒会に指名された泰明の方らしい。

 「うちの駿也も是非」
 揉み手をしそうな勢いの五十嵐の父親に泰明は苛立った。
 そして五十嵐を見ればさらに小さくなり、五十嵐の母親…義母なのだろうか?と兄の表情は五十嵐の話題に無表情。

 姉の由梨は五十嵐の兄に夢中らしく全然気になっていないらしいのがいいのか悪いのか…。
 のほほんとしたところがある姉だからな、と泰明は苦笑したくなる。
 そして結局五十嵐は一度も顔をあげる事はなかったし、泰明を見る事もなかった。勿論、言葉を交わすことも。

 学校でも泰明と視線を合わせた事はなかったけれど、五十嵐の纏う空気が学校と家族の前であまりにも違うのに泰明は首を捻った。

 どっちが本当の五十嵐だ?
 学校では常に顎を突き出しつんとして上から目線。
 直接に話した事はないけれど、何度か会話は耳にしたことがある。
 取り巻きを従えるような感じだった。
 高校になったらそれはなくなり常に一人でいる感じだが、つんとした所は変わっていない。
 それが今、目の前にいる五十嵐は終始顔を俯けどちらかといえばおどおどした雰囲気だ。

 どっちが本当の五十嵐なのだろう?

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さっそくの拍手コメありがとうございます~^^
続きにお返事です♪

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テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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