杉浦はいつも冷静で、単純馬鹿な大海は一体何考えてるのかなぁ?と悩む事も多いけど、とりあえず嫌われる事もなく高校を卒業してもう何年にもなるというのに未だ一緒にいることが出来ていた。
大海は今は杉浦の兄のいるチームに所属し全日本の選手で、杉浦はトレーナーとして一緒にチームに所属している。
何事もなく、というわけではなかったけれど、それでもやっぱり杉浦が大事なのに気持ちの変化はなかった。
バレーで高校を強豪校に決めていたら絶対に会う事はなかったかも、とも思うけれど、もしかしたらそうでなくとも会っていたかもしれないとも思う。
綺麗なのは相変わらずで。東京に出てきてからモデルとかにもスカウトされたらしい。
その度に大海はやきもきしたのだが、杉浦にはまったくその気もない事が救いだ。
目も相変わらず。
酷い時もあるけれどそうじゃなければ一応大丈夫で、悪化していないことにほっとする。それでも心配は心配。いや、もう目だけじゃなくてどこもかしこも心配なのは変わらずで、どこも成長してないと自分でも嫌になるくらいだ。
今はマンションに隣同士で部屋を借りているが、でもほぼ同居状態。杉浦の方の部屋は物置みたいな状態で生活スペースは大海の部屋のほう。
所属チームも一緒だから遠征でも休みでも、なんでも予定は一緒。
大きなベッドで隣に、いや、腕の中にいる杉浦の身体は何も着ていなくて、イタズラ心が湧いてくる。
遠征や試合が重なればさすがに外ではなかなか一緒に寝ることが出来なくて唯一そこが大海は不満だ。
別に気にしなくても、と大海は言うけれど杉浦は絶対に頷かない。
試合の前日はエッチ禁止ってのもあるけど。
それが久しぶりの腕の中で、安心しきった顔で寝てる顔が可愛くて愛しい。
さわりと肌の上に手を這わせれば杉浦の身体が身じろぎする。
それに思わず大海の口元が弛む。
「……ちょっと…?何してる…?」
「あ、起こしたか?悪い」
「……全然悪いなんて思ってもないくせに…」
はぁ、と呆れたようにため息を吐き出す杉浦にキスする。
「……昨日、あんなにしたのに……まだ足りないの…?」
杉浦が顔を仄かに赤くしてるのは大海のまた固くなっているモノが身体にあたっているからだろう。
なんで何度も数え切れないくらい体を重ねて、一緒に何年もいるのにこんな初々しい感じなのか。
「足んねぇよ」
こめかみにキスして唇にキスして。
本当に馬鹿みたいに未だ夢中だ。
互いの実家にはもうほとんど帰らない。
ずっと高校の時から彼女も作らずに二人でいるのに関係を気づいてる風で自然家を避けるようになった。
ただ杉浦のお兄さんだけはさすがに確認されて分かられていた。
黙認されているので一応は認められたのだろうか?と疑問だが、絶対外では出すな!と厳命されている。
まぁそれは当然だろうけど。
だからこそ家に帰ってきた時はもう一時だって離したくない位だ。
この外での我慢があるから何時までたっても変わらない関係でいられるのかな?とも思えば複雑だ。
「永瀬、飽きない…?」
「はい?何が?」
ついと杉浦が大海の顔を手で制してくる。
「…もう、何年も、一緒にいるのに」
「…………杉浦は俺に飽きたんだ?」
「誰もそんな事言ってないだろ」
杉浦は怒ったように顔を真っ赤にした。杉浦も同じような事を考えていたのか。
「全然……。足んねぇ、って言っただろ。まったく自由になんかなんねぇんだもん。杉浦ってば明日は試合だからダメ、とか。疲れてるからダメとか。外だったらダメだし。ほら!全然足んないっしょ?」
「………だってあんまり一緒にいたら…飽きるだろ」
「はぁっ!?何!?……もしかして、わざと…?」
しまった!という顔をしてふいと杉浦が大海から視線を外した。
「…………ふぅん。そうなんだ?…………杉浦は俺がしつこくて嫌なんだと思ってたけど」
「そんな、事は絶対ないっ!」
「大人しく待てしてた俺がバカだったわけだ?」
「……そんな事はない」
「杉浦に嫌われんの怖くて必死に我慢してる俺見て嬉しい?」
「…違う」
杉浦の表情が歪む。
たまにはちょっと意地悪を言ってもいいだろう。
いつも意地悪言われて我慢してるのは大海なんだから。
それでも幸せだと思えるんだから。
くすっと笑えば杉浦がほっとしたような顔をするのに満足してぎゅっと抱きしめればおずおずと背中に手が回ってくる。
まったく何年経っても可愛いすぎる反応に毎回あてられてしまうのだ。
計算してるのか?
…とたまに思ってしまう事があるけれど、どうでもいい事だった。
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