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hit記念リク 尚×遥冬 1

<注意!>
 こちらは「翼を広げて、羽ばたいて。」「焔を灯して、焦がされて。」の後の話になっております(><)
 未読の方はお読みになってからお進みください~m(__)m

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 「あの…遥冬サン?」
 「何?」

 遥冬のマンションの玄関を入ってすぐに見た事のない傘がでんと置かれていた。
 「この傘…何?」
 「ああ、昨日西川が忘れていった」
 尚を出迎えに玄関まで出てきた遥冬が何でもない事のように言った。
 昨日!?忘れて…!?

 「…………西川ってダレ?」
 「え?尚も知ってるだろ?50’Sでバイト僕と一緒にしてる」
 「あ、………ああ…西川、ね」
 そういう奴いた!ちょっと派手系の奴で最近何かと遥冬に話しかけてる奴だ!
 いた…けど…なんでそいつが遥冬のマンションに…?

 「あの…遥冬サン…………そいつ、部屋に入れたの?」
 「入れたけど?」
 「…………なんで?」
 ココの、遥冬の部屋には尚以外誰も入れた事ないって言ってたのに!
 「なんで……って」
 遥冬が微かにうろたえた様子を見せる。
 ……何?なんだ?
 ざわりと尚に嫌な予感が走る。

 「あの…遥冬サン?」
 尚が窺うように視線を向けると、うろたえたのは一瞬だけ。あとは遥冬は綺麗に顔面に仮面を張りつけた。
 「何?いいけど、いつまで玄関に突っ立っているんだ?入らないのか?」
 「いや、…入る…けど」
 靴を脱いで尚はもう慣れた遥冬のマンションに上がった。

 変わっているのは玄関の傘だけだ。
 部屋のどこにも何も変わった所はない。
 遥冬の部屋の中にある自分の痕跡を追う。これみよがしに自分の物を遥冬の部屋にわざと置いていった物だ。
 尚のサングラス、ピック、使っているフレグランス、スプレー、着替え、…そのまま元の場所にある。
 ある、けど……。

 ソファに遥冬と並んで座ってからここに昨日西川は座ったのか?…と玄関の置かれた傘が脳裏にこびりついて尚は余計な事を考えてしまう。
 「………遥冬…西川と…そんな仲良かった…っけ?」
 「ああ?…最近ちょっと…結構話すようになった」
 ちょっと?結構?
 尚は眩暈がしそうになった。
 遥冬の口からそんな返事が返ってくるとは…。

 遥冬の親父の件以降、確かに遥冬は変わった。
 表情が硬いのは硬いが、以前の様に人形、というほどではなくなって大学でもやたら話しかけられるようになっていたのは分かっていたが…まさかバイト先でも…。
 しかもバイト先はこの遥冬のマンションからは目と鼻の先で確かにダチなら寄ってもおかしくはない。
 おかしくはない…けど…遥冬が…?

 「ダチ…なのか?」
 「トモダチ……とはちょっと違う…かな」
 違う!?
 じゃあなんだ!?
 「…何?尚?気になるの?」
 くすと遥冬に挑発的に笑われて思わず尚はむっとしてしまう。
 気になるに決まっている!
 今日は折角の日曜日で遥冬のバイトも休みなのに!

 いつもだったら土曜日から泊りがけで遥冬の部屋に来るのだが、尚の父方の実家で法事だったためにそれに尚は急に出られなくなった父の代わりに出席し、昨日から行ってて、帰ってきたのはついさっきだった。帰ってきて速攻着替えて来てみれば他の男の痕跡…。

 いや、別に西川とはなんて事ないから傘だってあんな風に普通に出しているってのは分かる。
 …わかるけど…。ここに遥冬が誰か自分以外を入れたというのが信じられない。
 …しかも、尚がいない時に…。
 いやいや、考えすぎだろ!

 「尚……?キスもしてくれないの?…昨日もいなかったのに…?」
 遥冬が尚の膝に乗り、首に腕を巻きつけてくる。
 ああ、もう!
 ぐだぐだ考えるなんて自分らしくもない。
 それにこれじゃまるきり遥冬を信用してないみたいじゃないか!
 …そうじゃない。ただの醜い嫉妬だ。
 でも遥冬が自分から誰かを部屋に入れるなんて…。

 どうしてもそこが気になってしまう。
 それにただのダチというなら分かるけどちょっと違う、と遥冬は言った。
 違うって、じゃあなんなんだ?
 そう問い詰めたいがバカな見栄を張る。

 尚は何も言わないで誘ってくる遥冬の紅い唇を啄ばんだ。
 これは俺のだ。
 全部、どこもかしこも!
 そんな事を思っていたってずっと捕まえていられるかどうか…。
 人形のような、と言われていた遥冬はもういない。
 それがどんなに人を惹きつけるか、なんて考えなくても分かる事だ。
 男も女も遥冬を前にすれば見惚れて呆ける。
 前よりもさらに色気が増した気もする。

 まったくもって大学では遥冬から片時も気が抜けない感じなのに!
 …バイト先は盲点だった。
 そのバイト先だって昔のよしみで尚は結構な割合で出没しているのだが…。
 自分がいない合間にとは…。
 こんど50’Sに行ったら西川は睨みつけておかないといけない。
 「…尚?何考えてるの?」
 「え?ああ…いや?」
 なんでもねぇ、と遥冬をソファに沈め、その白い首筋に唇を埋めた。
 
 
 

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