何度も遥冬を抱きキスを浴びせ、そのまま堕ちるように眠りにつき、早めに目覚めた翌朝。
一緒にシャワーを浴びてさっぱりしたところで昨日の事を聞いてみると遥冬がソファに気だるそうに座りながらボードの引き出しを指差した。
「そこ、…開けてみて」
「?」
尚は言われた所の引き出しを開けてみた。
茶封筒や何かが入った分厚い封筒、CD、が入っている。
CDはちゃんとしたのじゃなくてPCから落としたものだろう、というようなものだ。
「何コレ?」
開けてみてもいいのか?と思いつつ封筒の中を見てみる。
「………………コレ…」
中から出てきたのはLinxのライブの時のものらしい尚の写真だ。1枚や2枚じゃない。
「?」
ちらっと遥冬に視線を向けると遥冬は耳まで赤くしながら尚を見ないように顔を背けている。
「……西川にもらった」
「……………は?」
なんで奴が?
「西川が…高校生の時…彼女に誘われて尚のバンドのライブに行ったらしいんだけど…西川もギターちょっとするらしいんだけど…それで、尚のバンドの音源とか…写真とか…こっそり撮ってたのがあるって聞いて…」
コレが欲しくて…?
思わず尚の顔がにやけてくる。
「西川も尚のバンドのファンになって……だから、50’Sへのバイトもその千尋って人がいたと聞いて来たらしい…。そしたら…尚が出入りしてて…僕が…尚と仲いいのかって聞かれて…」
それでちょっと、結構、話すようになった?
「尚のギターが好きだって…僕は…尚の高校の頃を知らないし…岳斗くんの好きな千尋って人も知らない…から…」
ぼそぼそと遥冬が小声で言い訳するように話している。
じゃあもしかしてこのCDはLinxの時のライブの音源か?
この茶封筒は?
…と茶封筒を手に取ったら下からいつだったかクレーンゲームでとったぬいぐるみが出てきた。
……捨てただろうと思っていたら大事にしまってあったらしい。
それを小脇に抱えて茶封筒を開けるとまた写真や今度は調査票が出てきた。
「…それは水野が夏休み前に…尚の事を勝手に調べて…らしい」
なるほど、と納得する。全部承知なんだろうとは思っていたから別になんとも思いはしない。
写真を見れば岳斗と写ってるのやら高校の時のやはりLinxの時のからごちゃごちゃと入っている。
その中の一枚、遥冬と一緒に写っているのを抜き出し、その外はまた封筒に入れて引き出しに戻す。
ここの引き出しはもしかして尚用か?
くくっと笑ってしまう。
「………こんなの…尚は…嫌だろ?」
「ああ?何が?」
「勝手に調べられたり…とか…西川に…貰ったのも…だから尚には知られたくなかった…のに…」
ソファで隣に座った尚から視線を背けたまま遥冬が呟く。
「別に?水野さんが知ってる事は分かってたし。遥冬がそれ位俺に執着してるなら俺はその方がいいけど?」
ぬいぐるみを遥冬につきつける。
「こんなのも大事にとってた…?」
「だ、…って…初めて…尚がくれた物だ…」
遥冬が顔を真っ赤にしているのに尚は頭を抱えた。
「……学校休まねぇ?」
「休まない」
「……マジメだよな…」
はぁ、と尚は溜息を吐き出す。
「お前、そんなものプレゼントになんか入れるなよ。今度ちゃんとしたのプレゼントする。やっぱ俺もバイトすっかな…でもそうすっと遥冬にくっ付いてる時間が減るな…またギターの助っ人入んねぇかな…そうすりゃ、遥冬と一緒だしすっげ都合いいよな…」
「……僕も…尚と一緒がいい…」
「……………やっぱ学校休まねぇ?」
「休まない」
そんな可愛い事言われるし、こんなに尚の過去まで追いかける位に執着されているのが分かって、こんなゲームのいらねぇものまで大事にとっておかれるくらいに自分の事を遥冬が求めているのが分かったのに…。
「なぁ、遥冬、この写真…貰っていい?」
遥冬の顔の表情が柔らかくて綺麗だ。
「え…?……だめだ」
「だめ!?」
「だって…折角尚と一緒に写ってる…のに…」
「遥冬さ~~~~~ん……」
がばっと抱きつきソファに押し倒した。
「……なんなの?俺…バカ?」
「何が?」
「遥冬がこんなに俺の事好き好きだなんて…」
「………………誰も言ってない」
「うん。言われてないけど。でも俺は遥冬好き好きだ」
「…………恥ずかしいからやめろ」
「なんで遥冬はえっちは恥ずかしくないのにこういうのは恥ずかしいんだ?」
わざと唇ではなく頬にキスすれば遥冬は逃げようとする。
「ほらな?」
くすくすと笑いながら遥冬の唇を啄ばめば遥冬はそれにすぐに応えてくる。
今日は大学は休み決定だ!
尚が遥冬の肌に手を這わせれば遥冬は抗う事もしないですぐに甘い息を吐き出しはじめた。
Fin.
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学