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書記クンは猫かぶり 6

6 泉(IZUMI)

 「泉華(せんか)センセ!日曜日には展示場のほうにいらっしゃるって大先生よりお聞きしましたけれど?」
 「……ええ、行きます」
 腕にしなだれかかってきたのは父の書道教室に通ってきている若い主婦だ。
 一度誘われて寝た事があったがそれ以降は丁重にお断りしている。
 名前なんだっけ?なんて泉が思ってるなどとは言えない。
 どうにもこんなにあからさまに誘われるのには辟易してしまう。
 奥ゆかしさなんて今の女性にはないのか?
 …別にそれを求めているわけでもないが。

 「泉華先生がいらっしゃるなら私も明日に行こうかしら」
 別の女性が先の女性を押しのけるようにして泉の腕に身体を絡めてくる。
 「是非いらしてください」
 にっこりと笑って愛想を振りまき、泉はその場をさっと後にした。
 こいつらは金のなる木。
 顔の判別はつくが名前まで覚える気はない。

 今日は書道展に父が出張っているので、教室は泉が先生役だった。
 明日は自分もその書道展に行かなくてはならない。
 面倒な、とは思うが仕方ない。
 ずっとそうやってきたので別に今更ではあるが、愛想よくしてなきゃないのが面倒なだけだ。
 「めんどくさ…」
 学校にいる時が一番気楽だ。
 それと自分の部屋に籠もっている時か。
 泉は和室の広い自分の部屋にころりと大の字に寝転んだ。
 


 愛想笑いを浮かべて訪れるお客様に応対をしていた。
 展示会最終日の日曜。
 ごちゃごちゃと次々訪れる人の波に休む暇もなかった。
 なんだって最終日にどやどや来るな、と心の中で毒吐いても顔はあくまでにこやかに。
 
 ………………っ!?
 入り口に一際高い身長の見慣れすぎている制服を着た人が現れた。
 …………ちょっと待て!
 どくりと思わず泉の心臓が鳴り出しはじめる。
 なんでここにあいつが?
 泉は目が錯覚を見ているのではないかと思った。

 「泉、あれはお前の学校の子だろう?知っているのか?」
 「…知ってる…」
 父親が耳打ちしてきたのに、知らないとも言えずに頷いた。
 「少し休んできていいぞ?」
 「……じゃそうします」

 八月朔日を視線で追っていると八月朔日は泉に気がつきもしないでさっさと人波の中を縫うようにして展示場の中を歩いていく。その後ろを追いかけるようにして泉がついていった。
 どこに行くんだ?
 途中途中の展示には目もくれないで八月朔日はさっさと歩いていく。
 「!」
 そしてある一角の前で止まったのに泉は息を飲んだ。

 自分の書いた『飛翔』の前だ。
 八月朔日の跳んでいる姿を見て書いた『飛翔』だ。
 どくどくと泉の心臓が落ち着きなく大きく鳴っている。
 コイツ知っているのか?…いや、まさかそんなはずはない……。
 ごくりと息をのみ込んで気持ちを整えてから泉はそっと八月朔日の隣に立った。

 周りに人はたくさんいるはずなのに『飛翔』の前にはまるで八月朔日と自分しかいないように思えた。
 手がかすかに震える。
 「な、な、ななう、み…さ、んっ!?」
 泉に気付いた八月朔日の声がひっくり返っていた。
 部活帰りなのだろうか?日曜なのに制服姿で肩にはエナメルバックだけだ。

 「え…?あ…?ど、ど、どう…して…?」
 「どうして、はこっちの台詞だ。どうして八月朔日がここに?」
 声は冷静になっているだろうか?
 震えてはいないだろうか?
 こんな小さな展示会に八月朔日が姿を見せただけでも驚いているのに、さらに真っ直ぐ八月朔日は『飛翔』だけを目指して来たんだ。

 「え、えっと…あの、数日前に、部活の帰りにちょっとここに入ったんです。そうしたらこれが…」
 これが、と八月朔日が『飛翔』を指差した。
 「これが…?」
 泉はこくりと喉を鳴らして先を促した。
 「これが…その…なんて言ったらいいか…その、まるで俺の…事…みたい、かな……と…。……だって、飛翔…って…」
 八月朔日の言葉に思わず泉は顔を跳ね上げ、八月朔日を凝視した。
 「え、と…七海さん?」
 「……………」

 なんでコイツはそんな事を思うんだ!?
 いや、本当のところはそうなのだが!
 「七海さん……スーツ姿…も綺麗…ですね…」
 「はぁ?」
 思わずとんちんかんな事を言う八月朔日に素が出た。
 「秀邦の学ラン姿も綺麗で似合ってますけど…、スーツもいいです」
 テレテレと八月朔日が顔を赤らめながら泉を見ている。

 「あ、泉華先生!」
 教室の生徒の主婦だ。
 「こちらが奨励賞取られた『飛翔』ですね。…さすが…活き活きとして…」
 「ありがとうございます」
 泉がにっこりと愛想笑いの笑みを浮かべて挨拶すれば八月朔日が大きく目を瞠っていた。
 「……泉華…先生……?」
 「八月朔日、ちょっと来い」
 小さく八月朔日にだけ聞こえるように言って泉は八月朔日の腕を引っ張った。
 
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続きに拍手コメお返事と
メールフォームからのお返事です^^

S様
 6&7はコントしてます(笑)
 8を受けですかぁ~~?^^;
 うーん…書き終わってるから…^^;
 ざんねーん!(笑)
 ありがとうございます~^^

okw様
 距離感…七が足掻いてます(笑)
 泰明はデレすぎかと思われますが…?(大笑)
 真朱ちゃん書いてた~(笑)
 どうしましょうねぇ~?と今色々考え中でした~
 うpはないかな~^^;
 でもまず書くのが先なので~(^m^)
 書きながら考えます~^^b
 いいけど…なんかやっぱコメディ…^^;
 おかしいなぁ~(笑)
 ありがとうございます~^^

メールフォームからr様
 お知らせありがとうございますm(__)m
 直しました~(><)
 …多分直ってると思いますが…
 テンプレ変えたらあちこちリンク外れたとこあったみたいで↓
 もしまたどこかあったらお知らせいただけると
 助かります(T-T)
 お褒めと応援もありがとうございます~////

KRB様
 え~?気になりません?どんな事してるんだろ?とか(^m^)
 爽やか…でもないような…^^;
 七の所為ですけど(笑)八だけだったら爽やかなんだけどなぁ~
 どエロ…(爆)
 五&六よりはいくらか…あるかな…^^;
 多分(笑)
 ありがとうございます~^^ 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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