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書記クンは猫かぶり 9

9 蓮(REN)

 ……なんか七海さんが可愛い…。

 どうしよう、と八月朔日は顔が緩みそうだった。
 学校では全然八月朔日なんて見えていないような感じだったのに…。見ていたのは部活の時だけかと思っていたのに…。
 椅子に座った七海さんの髪がふわりと揺れた。
 「………七海さん」
 「なんだ」

 つっけんどんな感じで七海さんが返事をする。
 そんな態度をされたってあの『飛翔』が…ここで書なんか初めて見て、唯一惹かれた『飛翔』が七海さんが書いたもので、自分を見て書きたくなって書いたなんて言われたらどうしたって七海さんにとって自分は少しは特別だよな?と思えてしまう。
 どうしよう?お願いしてみてもいいだろうか?
 もしかしたらこんなチャンスもうないかもしれない。

 「…あの…髪…触っていい、ですか?」
 「はぁ?」
 思いっきり顔を顰められた。
 自分でもイタイ奴ってのは分かっているけど、フワフワしている七海さんの髪にずっと触ってみたかったんだから仕方ない。
 やっぱダメだよな、と思っていると七海さんが別に、と顔を伏せた。

 いいの…?
 そっと肩にかかりそうな七海さんの髪の一房に触れた。
 手を払われる事もなく七海さんが椅子に座ってじっとしている。
 眼鏡の下に伏せた睫毛が見えてどきどきしてきた。
 やっぱ綺麗だよな…。
 あんまりいつも前に出るような人じゃないし、大人しそうに見えたけど…。

 なんかここでの態度で本当の七海さんは違うのかな?と思ってしまうが別に気になりもしないし、学校とは別人のような感じがかえって嬉しいとも思ってしまう。
 髪を触りながら七海さんの首にほんの少し蓮の手が触れると七海さんがびくりと身体を揺らした。

 うわ、どうしよう…。
 しかもぎゅっと七海さんが目を瞑ったのに抱きしめたい欲望に駆られた。
 だってなんか…可愛い…。
 ちょっとこのままはやばい、と蓮が手を離すと七海さんがあからさまにほうっと息を吐き出した。
 なんかそれが面白くはなかったけれど、学校でも話しかけてもいいと言われたのでとりあえずはいい事にしておく。
 これ以上変な事言ったりしたりして学校で拒否されたら嫌だ。

 「…七海さん…もっと休む?」
 「……いや、戻る」
 「俺もまた見てていいですか?」
 「……………いい」
 小さく七海さんが頷くのがやっぱり可愛い。
 なんでだろう?そんなに小さいってわけでもないのに。
 線が細いからかなぁ…?
 七海さんが立ち上がってネクタイを直し、脱いでいた上着を着た。

 「…スーツ、着慣れてますね」
 「まぁ…。着る機会は多いから」
 こういう個展とか色々やはりあるのだろうか?
 やっぱり普通の高校生とは違うんだろうな、と蓮がじっと見つめてしまう。
 「七海さん、待って」
 さっさとドアを開けて控え室を出て行こうとする七海さんの後ろを慌ててついていった。

 展示場に戻ってもやっぱり蓮が見るのは『飛翔』だけだ。
 コレが…七海さんが自分を見て書いた…。
 顔がどうしても締まらない。
 一回見た日から通って毎日見て、まるで自分の跳んでいる時みたいだなんて勝手に思ってたけど、全然勝手なんかじゃなくてそのまんまだったなんて。

 お客さんににこやかに対応する七海さんを盗み見た。
 学校では見られない姿だ。
 書の説明をしたり、案内をしたりと忙しそうだな、と思いながら見ていたらちらっと七海さんが蓮の方を見た。

 あ…見てくれた。
 相変わらずすぐ七海さんの視線は外れる。
 けれど、視線はちゃんと蓮の目と合っていた。
 「泉華先生」
 甲高い女の人の声が聞こえたのに蓮がまた七海さんを見ると、七海さんの腕に女の人が抱きつくようにしていた。

 …なんだアレ…。
 思わずむっとしてしまう。
 胸を押し付けるようにして七海さんの腕に縋り、顔を七海さんに向かって突き出し、見るからに七海さんを狙っている風だ。
 イラっとしながら蓮はそれを見ていたが、七海さんは気にした風もなく顔の笑みは崩していない。
 自分があんな事されたらきっと顔は真っ赤になって動揺するだろうに、七海さんは何もどこも変わった様子がない。
 あまつさえ、女の人の腰に手を当てて誘導までしてるのに慣れてる、と蓮は顔を顰めた。

 自分を見て書いたと言われた『飛翔』だったけれどだからどうなんだ?
 自分もすっかり秀邦の悪習に染まっていたんだ…と蓮は苦笑してしまった。
 自分が七海さんにとって特別なんじゃないかと勝手に思っていた事が、秀邦の中では普通でも一歩外に出れば違うのに…。
 
----------------
続きに拍手コメお返事です^^

 
rx様
 直ってましたか?よかったです^^
 テンプレは明るい感じが好きなので^^
 また飽きたら変えると思いますが…
 ありがとうございます~^^

MR様
 何をおっしゃいますやら… 
 私も字書くの嫌いですけど…(--;)
 字が上手な人が羨ましいです(><)
 七海さん猫かぶれてないんです~(笑)
 ありがとうございます~^^

nck様
 六平くんにはバレバレです~!
 LOVEの上級生に格上げですねぇ~(大笑)
 のろけまくりですけど^^;
 ありがとうございます~^^

ms様
 あら?いつからかくれていたんでしょうか?(笑)
 七海可愛くなってますか?^^;
 ちょっと駿也の可愛いと種類ちがいますけど(^m^)
 ありがとうございます~^^

S様
 八っつぁん…そんなに気に入っていただけてる…?
 もしかして…?
 呼び名だけでかな~?(大笑)
 ありがとうございます~^^ 
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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