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2012.09.21(金)
ええと、どういう事なのだろうか?
明羅はピアノを片付ける。
「正式にはエージェントを通すから。リハや何かの時には明羅も同席するように」
「え……うん」
「私達は明日早朝の便で向こうに帰るから見送りもいらない。次会う時はコンサートでだ。佐和子さんは別の公演があるから来られないが」
「あ、そうなの?」
じとりと佐和子は明羅と怜を見比べていた。
「何?」
「いいえ~~」
「?」
明羅は首を捻った。
「…………すみません」
怜が頭を下げていた。
「……別に」
母が不機嫌そうで明羅は珍しいなとじっと見た。
でもそれ以上何も言葉はない。
「じゃ、俺怜さんと帰るね」
それ以上は会話も何故か弾まなくて苦笑してるのが3人だった。
いや、怜さんはかなり困った様子だったんだけど。
「…ねぇ、本気でさっきの言ってるの?」
「ん?何が?曲の事?」
父親に怜さんの車に乗ってから聞いてみると父が不思議そうな顔をした。
「そう」
「音楽に関して冗談は言わないけど?」
「……だよね」
「怜君、明羅をよろしく」
怜は黙って静かに頭を下げた。
「はぁ……勝手にお婿…」
「?」
佐和子がわけのわからない事を呟いていた。
オムコ?
なんだそれ?ドイツ語…?
「じゃ」
いつも分かれはあっさりだ。
だって小さい頃からずっとの事だから。
「なぁ、お前……全然分かってないよな?」
「分かってない?」
車でしばらく走ってから怜さんが言った。
「…だよな。ま、いいか。……俺もピアノもう1台買おうかなぁ」
「はい?なんで?」
「だって…そしたら今日のアレ、いつでもお前と合わせられるだろ?お前今日も入り込んでただろう?」
「……うん」
「あれが家で出来るならピアノもう1台あってもいいなぁ、と思って」
「部屋狭くなるでしょ。そしたら家行けばいいよ。いつでもあるもの」
「そうじゃなくて。俺がいつでもしたいなぁと。今日だって本当ならあのままベッドにGOしたいところだったのに」
「そ……何、言って…」
「だって、明羅くんってば熱烈なんだもん。引きずり込まれそうになちゃった」
「ね、熱烈!?」
「そう。もう、どうしようかと思っちゃった」
「……な、何が、……熱烈…?」
「え~~?やだ、言えな~い」
「怜さんっ、ふざけないでよ」
「いや、まじでふざけてないけど?……だからベッドにGOしたかったって言ったでしょ。切ないよ~、大好き~、みたいな?」
かぁっと明羅は耳まで真っ赤になった。そして母の言った言葉にはっとする。
「……………」
オムコ……お婿か!?
「れっ!怜さんっ!!!」
「んん?」
「お婿って……」
「あ、やっと気付いた?」
怜が苦笑した。
「もう、俺殺されるかと思っちゃった。もしくは明羅取られちゃうかと」
「…え?」
「どうやって明羅くん掻っ攫って逃げようか算段してたんだけど、ちゃんと返してもらえてよかった」
「……もし取られちゃったらちゃんと取り戻しにきてくれる?」
「行くよ。言ってるだろ?離す気ないからって。っ!こら、危ないって」
運転してる怜さんの腕にしがみついた。
「ったく」
その怜の手が明羅の頭を撫でた。
「さ、面接も終わったようだし、今日は安心してデキるな」
明羅は恥かしくて顔を俯ける。勿論いやじゃないけど。
「………動けなくなる、のは、ちょっと…」
「善処します」
本当かな…?
明羅はぼうっとして車の窓の外を見た。
気持ちよく弾けた。
あんなに怜さんの前で弾くのは嫌だったのに。
「ねぇ…」
「ん?」
「ピアノ…気持ちよく弾けたんだ…」
「ああ。分かってる。俺もだ…そうだな…うちじゃ2台ピアノは無理だが連弾でもしてみるか?」
「……したい、かも」
怜が笑った。
「よし。あ、今度ライブハウスでジャズの連弾でもするか?たまにはそういうのもいいだろ?」
「いいけど…人前はちょっと。だって男二人並んで座ってって…」
気持ち悪くない…?
ちょっと考えてみてもどうもやっぱり変な感じはする。
「お前ドレスでも着る?」
「着ないからっ!」
明羅は怜の肩を叩き、怜はくっくっと笑っていた。