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書記クンは猫かぶり 23

23 泉(IZUMI)

 つい…。
 つい、だ。

 だって八月朔日が抱きしめてくるから。
 ナイフを突きつけられた時も八月朔日は怯む事もなく、当然のようにして泉を背に庇いながら守ってくれた。
 そして大事そうにさっきは抱きしめられて…。
 男にそんな事されて嬉しいなんて自分は一体どうなっているんだ、と思ったってそう感じてしまったんだから仕方ない。

 それなのにその本人がダメだといって離すから…。
 物足りなかった。
 それでつい…。
 横になった八月朔日を見てたら…。
 キスしたい、なんて誰にも思った事もないのだが…。

 …絶対、八月朔日には好かれてる、よな?
 じゃなきゃ抱きしめるとか普通しないはず。
 自分だって好きでもなきゃ男にそんな事されるのなんかごめんだ。
 抱きしめられるのなんて気色悪い。
 さっき母親がこなかったら告白されていたのだろうか…?

 違うのか…?
 泉に分かるはずはないけれど、待っていればいいのか?
 …やきもきする。
 襲ってやればいいのか?
 いや、今は怪我もしてるし…。
 しかし、キスしたって八月朔日はなんでもなさそうだったけど…?
 わけがわからない、と泉は目を閉じた。

 とにかく絶対、間違いなく嫌われちゃいない。
 …でも自分がどうも定まっていないのは気になるところだ。

 六平がいうとおり、学校では猫かぶっている状態になっているはず。実際はただ何もしなくていいからしていないだけなんだけど。わざわざ人の顔と名前を率先して覚えなくてもいいし、授業受けとけばぼうっとしてていいから。
 書道では小さい頃から大人の中でやってきたし、父親の主催だなんだという時はそれなりに気は張ってきた。
 それが学校では抜けるだけだ。
 六平の陰に隠れて抜けさせすぎているけど。
 六平も人になんか基本興味なんかないからどうでもいいと思っているところがあって居心地はいい。それでいて泉よりかはずっとしっかりしてるから都合がいいんだ。

 だけど、八月朔日の前だとそれが崩れて、素が出ている。
 いや、出てしまうんだ。
 …別に大人しくもないとことか…八月朔日は学校と違う、と思わないのか?
 …大人しくしてたほうがいいのだろうか?
 でも今の所八月朔日から学校と違う、とか言われた事はない。
 あんなに頑なに八月朔日を視界に捕らえないようにしていたのに、今は隣で寝てる。

 …どうしよう?やっぱ襲うか?
 今日はダメだけど、怪我がよくなったら…。
 縫った傷は一週間位で抜糸と言ってたから…、そうするとこの一週間だけか。八月朔日がいるのは。
 チッと心の中で舌打ちする。
 それを過ぎてもいてもいいのに。
 人と一緒にいるのが苦じゃないなんて。

 …『飛翔』を八月朔日に分かられているからだ。
 アレに気づかなかったならばここまで盲目的にならなっただろうとは思う。
 自分を抑えて、それで終わったはずだ。
 なのに八月朔日は現れたんだ。目の前に。
 そしたらもうダメに決まってる。
 離してなんかやらない。
 ……このままだったらやっぱり襲おうか…。
 思わず不穏な事を思ってしまう。

 …でもとりあえず八月朔日の言葉を待てるだけ待とう。
 自分からは言わない。これ以上自分が八月朔日に振り回されるなんて。
 八月朔日が泉を庇い守ってくれた背と抱きしめられた腕と、髪を撫でた手と…今日は色々な事がありすぎた。
 本当に腕だけの怪我でよかった。もし足とか、骨折だったらインターハイに出る事は無理だったかもしれない。
 いや、腕だってしばらくは部活を休まなきゃない事になるから、最後の練習の追い込みをかけられないことになるんだ。
 自分のせいで八月朔日が跳べなくなるのだけは嫌だ。
 八月朔日の怪我は自分の所為なんだ。

 泉を庇ったから…自分だけだったら怪我はしなかったのかもしれない。それどころか襲われもしなかったのかもしれない。 
 泉は暗がりの中顔を横に向け八月朔日の姿を確認した。

 「…七海さん?…もう寝た?」
 小さく囁くように八月朔日の声が聞こえて思わず泉の顔が弛んだ。でもどうせ電気もついていないし見えないはず。
 「…いいや」
 「……インターハイ…七海さんの為に頑張りますね」
 「俺…?」
 「そう。……それだけ、です。おやすみなさい」
 「…………おやすみ」
 泉は不覚にもぐっと涙がせり上がってきて目を閉じた。

 八月朔日の言葉は怪我の事、『飛翔』のこと、泉がずっと練習を見ていたこと、その全部を受け止めてのインターハイ頑張ります、だ。
 …自分のために…なんて。
 
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続きに拍手コメお返事です~^^


nkmm様
 着ぐるみはトラかな~?(^m^)
 襲っちゃうので(笑)
 言われてみれば七海の方が肉食系ですね^^;
 経験済みですし~(^m^)
 ありがとうございます~^^

kin様
 浴衣に反応!(笑)
 浴衣いいですよね(^m^)
 私は着られませんけど^^;
 ほずみは朝起きたらきっとぐちゃぐちゃなはず(笑)
 ありがとうございます~^^

S様
 お母ちゃんはお約束ごとです(笑)
 そしてやはり浴衣!(笑)
 八は我慢大会出場中なのでした(^m^)
 ホント人参ぶら下げられた馬ですね!(大笑)
 ありがとうございます~^^

SW様
 誘い受けになってましたねぇ~^^;
 いや、襲い受けか?
 魔性……なぜか似合ってしまうななみんですね(笑)
 そうね~!遥冬とは違うなぁ~…どこが違うんだろ???^^;
 ありがとうございます~!

okw様
 お風呂上りは八くんの欲目もあると思われます(笑)
 デレデレなってるよね…^^;
 可愛くなってますか~?^^よかったです。
 私もわちゃわちゃしてるの好きなので、つい…(^m^)
 ありがとうございます~^^

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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