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2012.09.22(土)
「そ、宗!?」
学校の始まる日、怜さんが送っていくというのを断って電車で行こうとしたら駅に宗がいた。
「よう」
「どうしたの?」
「………ダチの家に泊まってたから」
「へぇ。近いんだ?」
「わりと」
「学校の?」
「いや」
「ふぅん」
宗がじっと明羅を見た。
「何?」
「いや……ああ…」
宗が言いにくそうにしている。
「何?」
「いや…いい」
煮え切らない宗に明羅が首を捻った。
そのうち電車が来て一緒に乗り込んだ。
「宗って進学は?」
「もう私学決まってる」
「…学年首位じゃだろうね」
「一応。桐生は?」
「俺?決まってない。というか考えてない、かな?」
宗が驚いた顔をした。
「兄貴は何も言わねぇの?」
「ん~…日本の音大だったら行く必要ないって」
「………レベルが違うな」
宗が頭を抱えていた。
「本当は夏まではピアノで音大考えてたんだけどね。怜さんのコンサート行ってやっぱり俺じゃ無理だと思って」
「お前もそんなレベルなの?」
「音大?音大は行けるよ。でもその後が無理ってこと。ピアニストにはなれても怜さんみたいに感動させられる演奏は出来ないから」
「………分かんねぇ世界だ…」
宗の感想に明羅はくすっと笑った。
「ええと、あれは?曲を作る方っての」
「それ、のこと。怜さんが日本で学ぶ必要ないだろって。学校にも親があっちいるから海外考えてるって言ってあるから煩く言われない」
なるほど、と宗が納得している。
「…本当に海外に行くのか?」
「え?ううん。考えてない。怜さん行くなら考えるけど。とりあえず怜さんの音あれば曲出来るし」
「…………分かんねぇ…」
宗が頭を振っていた。
「宗は大学出てお父さんの会社継ぐの?」
「いや、自分で起こすつもりだ」
明羅は目を見開いた。
「へぇ…なんで?あんなに大きい会社あるのに」
「いらねぇよ。親父のせいで、会社のせいで家はばらばらなのに。そんな会社いるか」
「……そっか」
怜さんもそういえば複雑そうだった。
「…怜さんも…始めはお父さんから電話あっただけでなんか凹んでた」
「だろうな。俺も同じだ。だから話もしたくねぇし顔もみたくねぇ。ああ、桐生がいる時ならそうでもないけど」
「俺?」
「ああ。ただの馬鹿に見えるから。兄貴も言ってた。普段はあんなんじゃないからな」
「……そうなの?」
電車に生徒の数が増えてくるとちらちらと視線を感じて明羅は嘆息した。
「言わない方いいかな…」
「何が?」
「今の状況。怜さんに」
「ああ……兄貴も桐生相手だとただの馬鹿になるからな。どうせ3年なんか学校は今月いっぱいだけだし放っとけばいいだろ」
明羅はじっと宗を見た。
「なんか宗、変わったね?」
「あ?……どこが?」
「どこって言われても困るけど」
「…ふぅん」
でも宗もまんざらでもない様子だったのに明羅は首を捻った。
「桐生だってすっかり俺にはクールビューティじゃなくなったし?」
「だってやっぱり怜さんと似てる、から…」
思わず顔を俯けた。ちょっと頬が赤くなる。
「その顔はまずいだろ。俺がなんか言ったみたいに見えるだろうが」
「だって仕方ないだろ…」
そのまま二人で学校に向かう。
明羅の中ですでに宗は怜の弟で身内同然の扱いになっていたのだから拒否する事もなかった。
学校につけばやはりな感じでまったく先が決まっていない奴だっているだろうによほど暇だと思う。
電車の時は学校に着いて怜に着いたよとメールするのが日課になっていたのでメールすると短く了解の返事。
それもいつもと同じでくすっと笑みが漏れる。
ブログを見るのも日課だが更新されていないのは知っている。
何度も更新しようよと言ったし、生方にも言われていたけど全然しなくて。
それはちょっと残念だと思う。
出来ないわけじゃないのに。
毎日の料理でもいいのに。
でもやっぱりそれも嫌だな、とも思う。
せっかく独り占めしてるから。
だから明羅も手を出さないのかな、と苦笑してしまう。
怜に関しては欲張りだと自覚があるので明羅もブログに関しては同罪だろう。