38 蓮(REN) 目を開けると朝になっていた。
あのまま裸で七海さんを抱きしめたまま眠って腕の中には裸体の七海さんがいた。
……夢じゃなかったんだ!
さわりと七海さんの肩を撫でるとん…、と七海さんが声を漏らした。
やば…もうそれだけでまたしたくなってくるけど…さすがに七海さんの身体の負担だろうとそこは抑えるしかない。
…痛そうだったけど大丈夫かな?
心配で顔を覗きこむ。
ゆっくりと七海さんが目を開けた。
「…おはようございます」
なんていい日なんだろう!
寝起きで寝ぼけている七海さんに何度もキスすると七海さんが手で蓮の身体を押しのけた。
「…やめろ」
「え…?」
ヤ…なの?
不安になって起き上がった七海さんの顔を覗き込んだらこれ以上ないくらいに真っ赤になっていた。耳まで。
ヤじゃなくて照れてるだけ?
昨夜は全然そんなに照れたトコなんてなくて余裕そうだったのに…。
可愛い!
「七海さんっ!」
また思い切り抱きしめてしまう。
「…朝からサカるな」
「え?夜だったらいい?」
「そういう事じゃない。それにもうお前は家に戻るんだろう?」
「……できれば一緒いたいんですけど…まさかねぇ~。オヤジに怒られるし。…あ、そうだ。今度は七海さんウチに来てくださいね!泊まりに!オヤジいない時に!…ウチ狭いですけど」
「行く」
「はい」
すぐに答えてくれる七海さんが可愛くてやっぱりぎゅうぎゅうに抱きしめてしまう。
「ほら、着替えないと…遅いと母親来る」
「あ!そうですね!」
七海さんがすたっと立ち上がると裸体を惜しげもなく晒して着替えを始めるのに思わずじいっと見つめてしまう。
「?」
どうしたんだ?という表情で七海さんが蓮を見た。
男なんだよなぁ~…でも綺麗。
「七海さん…大丈夫?」
「………平気だ」
平気だと言いながらも時折顔をちょっと顰めているのが心配だけど…。
今度潤滑剤用意しとかないと…。七海さんにもうしないって言われたらたまったもんじゃない。
やっぱネットで…か?
「八月朔日?」
「あ!はい、着替えます!」
ささっと制服に着替えて布団を畳んだ。
「……今日はもう…帰るのか…?」
七海さんがそっぽを向きながら呟いた。
「…はい。怪我も治ったのにいつまでもご迷惑かけるわけにいきませんから」
「そう…。迷惑ではないが…。……荷物は学校終わってからでいいだろう?」
「でも…そうすると部活終わってからになるから遅くなりますよ。七海さんは先に帰っててください。俺電車で…」
「終わるの待ってるからいい」
もう!ホント可愛すぎる!どうしよう…。
「七海さん…」
抱きしめようとしたら泉~?って七海さんを呼ぶお母さんの声に思わず固まる。
「行くぞ」
「……はい」
キス、も一回したかったのに…。
残念と思いつつも別に今日が最後じゃないはず、と七海さんの後をついて部屋を出た。
何度もつい大丈夫ですか、と七海さんを気遣っているとうるさい、と一蹴されてしまった。
仄かに頬が薄紅色になってたので照れてるのかな、と聞くのをやめる。
確かに困るといえば困るだろう。
「今日体育ない?」
送ってもらう車の中で小さく七海さんの聞いてみる。
「…ない」
なら大丈夫かな…。
ほっとすると七海さんがちろっと睨んで来る。
「…そこまで気にしなくていい」
そして顔を伏せながらぼそりと小さく囁いた。
そんな事言ったって気にするに決まってます!と言いたいけど放っておけ!といわんばかりの七海さんの態度に大人しく我慢しておく。
「あ、包帯取れたんだ?抜糸も?」
「ああ」
学校に着いてクラスに行けば五十嵐が声をかけてきた。
「傷残ってるね…」
「まぁ、残っても別にいいんだ」
「ふぅん…部活は?今日から?」
「そう!やっとだ!」
本腰入れないと!
成績と記録に満足いかないと七海さんにちゃんと言えない!
そこも重要だけど、この1週間…跳べないというのが辛かった。
普通の時なんか部活ない時だってなんとも思った事なかったのに、跳べないと思うと跳びたくなるんだ。
「跳ぶの楽しみだ」
「…余裕だね?普通インターハイ控えて1週間も練習出来なかったら焦るもんだと思うけど」
「焦ってはいる。…けど怪我に後悔はしてないから」
そう。これは自分の中では当然の事。そしてここからインターハイまでの期間を自分が頑張ればいいだけだ。
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