39 蓮(REN) 授業を終わって部活。
やっとだ!
ランニングをして念入りにストレッチ。
ここでアキレスなんかやってしまったらただのバカになってしまう。
「おい!八月朔日」
二人組みでストレッチして、柔軟で蓮の背中を押してたやつが蓮の身体を突いた。
「何?」
ほら、と組んでいた相手が視線を向けた方に蓮が顔を向けるとそこには七海さんの姿。
「ちょっと…」
すぐに蓮は立ち上がって七海さんの所に走った。
「七海さん!…大丈夫!?」
「…平気だ!って…言ってるっ」
それだけで仄かに蓮に分かる位にだけ表情を崩す。
「八月朔日こそ…大丈夫…か?」
「多分!まだ跳んでないですけど…今、本当に跳びたいって思ってますから」
「…そうか」
七海さんがうっすらと笑みを浮べる。
「見ててくれます?」
「ああ」
当然だと言わんばかりの七海さんに抱きつきたい衝動が起きるけど我慢。
「じゃ戻ります」
「…ああ。見てる」
蓮は七海さんと顔を合わせてこくりと頷き練習に戻った。
「お前七海さんとどうなの!?」
「どうなの?」
…って聞かれたって教えてやる気なんかない。
何回も色んな人に聞かれた事だけどはぐらかす。…いや今はまだきちんと、正式にお付き合い…ってのとはなってない…はず、とか言えるはずもないんだけど。
とりあえず今はインターハイだ!
怪我した事もコーチに怒られるかと思ったが不問にされた。多分会長が手を回してくれたんだと思うけど…ホント気の回る人ですごいななぁ、と思う。
警察も一応七海さんと呼ばれて犯人の顔の確認には行ったけど、オヤジに嫌な顔をされた。
お前とんでもない奴と知り合ったもんだ、と。
それも会長の事かなぁ?と思う。
どうしてかしらないけど、会長に気に入られたらしい。
ちょこちょこと話しかけられる。それはまぁ、五十嵐や七海さんと一緒にいる事が多いから当たり前かな、と思っていたけどそうではないらしい。
「なんだよ!付き合ってるのか?」
…まだしつこく聞かれるのに苦笑してしまう。
「……それおかしくない?」
普通だったら男同士なのに!ってなるはずなのにここ秀邦では当然のように囁かれる。
「え~!今年になってからなんなの?今までトップにはなんもそんな浮いた話なんかなかったのに…。会長も副会長も、六平さんなんか五十嵐とだし!それが七海さんまでなんて!しかも五十嵐以外みんな外部組!」
「…って俺に言われてもね」
仕方ない。惚れちゃったんだもん。
「七海さんが六平さん以外と普通に話してるとこなんて初めて見た」
他の秀邦の持ち上がり組の七海さんと一緒の学年の2年生の先輩も頷いている。
それでもここにやっかみのような負の感情がないのはおおらかというか…基本お坊ちゃまの集まりなんだろうな、と蓮は思う。ここにいるのがたまたまそういう奴等だったんだ、とは思うが。
ストレッチを終えてバーをセット。
最初はいつもよりもちょっと低めから。
ゆっくりとした助走から抉るように入ってジャンプ。
空が見えた。
そしてマットに沈む身体。
うん。調子がいいみたいだ。
顔を上げて七海さんを見てみれば満足そうな表情を浮かべていたのに、どうやら悪くなかったらしいと蓮もくすりと笑った。
ああ、気持ちいい。
素直にそう思えた。
「こら~!八月朔日!さっさとよけろ!」
「うぃっす!」
いい気分に浸ってたのに。
身体を起こして七海さんの立っていた場所を見てみればもう七海さんの姿はなかった。生徒会室に行ったんだ。
「頑張らないと!」
反動をつけておきあがりマットから降りた。
インターハイまであと2週間ちょっとだ。
頑張れるとこまで頑張らないと。
怪我をした事で記録が落ちたりしたら七海さんはきっと責任を感じてしまう。今でさえ傷痕を見れば顔をゆがめるんだ。
自分にとっては誇らしい傷でも七海さんにとってはそうではない。
その責任も負わなきゃない。
それに…ちゃんと七海さんに言わないと!
昨日はつい欲望に負けて七海さんを抱いてしまったけど。好きだもつい連発してしまったけど、七海さんからの答えはまだない。
待ってるから、と言ってくれた言葉を信じて。
自分も七海さんも納得するような跳び方じゃないとダメだ。
そしてあの『飛翔』を越えるような気持ちでいないとダメだ。
もっと大きくなっている筈。だってこんなに七海さんが大事だと思えるんだから。
うし!と蓮は一人で気合を入れて腕でガッツポーズを作る。
「気合入ってるなぁ」
「当然です!」
「だよな!インターハイだもんな…。頑張れよ!」
部活での高跳びの人数は多くはなくて2年一人に1年が蓮を入れて3人。でもずっと秀邦の奴らばかりだったけれど、外部組で特待の蓮にも気さくで人にも恵まれていると思う。
「はい!」
「自信たっぷりでやなやつ~!」
皆にぐしゃぐしゃに頭をかきまわされた。
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お知らせ
坂崎 若様から七海いただきました~(^m^)
オトナで綺麗でかっこいいです~^^
こちらからどうぞ~↓↓↓
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