はのんのBL部屋

41 蓮(REN)

　なんか七海さんが冷たい…。
　いや、冷たいというのとはちょっと違うけど…なんかちょっとばかり他人行儀な気がする。
　気のせいだろうか…？
　怪我が治り、抜糸して自分の家に戻って七海さんと一緒にいる時間が減ったからそう感じるだけなのか…？
　そりゃそうだ…。
　ずっと朝も帰りも帰ってからもずっと傍にいたのに今は学校でほんの少し話せるだけだ。
　学年は違うし、朝も別。放課後は蓮は部活だ。

　七海さんが足りない…。
　毎日キスしてたのに。毎日『飛翔』を見られていたのに…。
　怪我した1週間が特別だったんだ。
　…分かってはいるけど。
　部活前に必ず七海さんが顔を出しに来てくれる。
　そしてその日の調子を見ていくのか蓮の跳ぶ姿を一目だけ見て生徒会室に行くか、生徒会がない日は帰っていく。

　あの襲われた日以降、七海さんは送迎つきだった。
　なのでそこは安心だったからいいけど。
　もし電車だったら心配でいてもたってもいられなくなる。
　毎日会えるのがこれだけで七海さんはいいの？
　蓮は全然足りなくて焦燥感ばかりが浮かんでくるのに。

　…もしかして初めてのえっちが下手すぎたとか…？

　ありえる…。
　七海さんはゴムが減ってた位で女性との経験もあるんだ。
　そういえば展示会の時にお客さんをあしらう七海さん見て思ったじゃないか！
　泉華先生、と呼びながら胸を押し付ける女性（ひと）に七海さんは全然動揺もしないで平然としていた。
　あんな事自分がされたら…と。
　それともえっちもやっぱりされるよりした方がいいって思ったのかな…？
　……そうかも…。

　次の日も七海さんは平気そうな顔してたけど、でもちょっとひどそうだった。
　そりゃそうだ。女と違うんだから。
　丁寧にしたつもりだったけど…足らなかった？
　もうしたくない…って思ってる…かな…？
　そういや携帯の番号も知らないんだった。七海さんからも聞かれないし。…自分から聞いていいのかな？でもなんで？とか言われちゃったら凹むとこの話じゃない。
　
　「八月朔日！」
　五十嵐の声にはっとした。
　「え？何？」
　「何じゃなくて、廊下に会長が来てる」
　「え！？」
　「夏休みのお泊りの話！」
　慌てて五十嵐と一緒に廊下に出た。
　「どうだ？調子は？」
　「悪くないです」
　身体的にはいい感じなのだが、七海さんが足りなくて精神面が不調なだけだ。

　「…良くもないようだ」
　「あ！いえ！そういうわけじゃ…」
　会長は正確に複雑な蓮の胸中を分かったらしい。
　「…八月朔日の大会に出る日の前日に入る事にした。で、八月朔日の試合を見て八月朔日も合流。滞在はそこから三日だ。荷物先に持って行きたい物あれば七海にでも預けとけ」
　「……俺、行っていいんですか…ね？本当に…」
　「…それは俺に問うところじゃないんじゃないのか？」
　くすっと会長がうっすらと笑った。
　「あ…すみません」

　「いや？…恋するバカ男だろ？」
　「…なんですか？それ？」
　「今生徒会の役員の中で流行ってるキーワードだ」
　ふふんと会長がにやりと笑った。
　「あ！それ泰明も言ってました！それでなんか笑ってた」
　五十嵐が言うと会長がふっと笑う。
　「じゃ用件はそれだけだ」

　「……会長も恋するバカ男なんです、か…？」
　いつでも泰然としている会長に聞いてみる。それこそバカげた質問だと思うけれど…。
　「当然。それを言ったのは俺だ」
　じゃ、と悠然と立ち去る姿がカッコイイ。
　「…ホントだよね。つまらないことで嫉妬したり誤解したり！」
　「…お前もそんな？」
　「当然でしょ。七海さんには随分嫉妬したもん！いっつもいっつも泰明と一緒いるし！」

　…分かる。
　思わず蓮は頷いてしまう。
　「でもお互い様かな？あっちはあっちで俺と八月朔日が仲良すぎだっていつもぶつぶつ言われるから」
　「え！？そう、なのか…？」
　「だよ？なんか七海さんが大変だって言ってた」
　「大変？」

　「殴る蹴るの暴行を受けるって」
　「…………は？誰が？誰に？」
　「七海さんが泰明に！どうせ暴行なんて言ってるけど軽くだろうけどね」
　ちょっと待って…。
　それって俺が五十嵐と仲良くしてると面白くないって事…？
　「…………うわぁ～…」
　五十嵐が嫌そうな顔で蓮を見た。

　「泰明が七海さんに苛められてるのにその嬉しそうな顔って、ないんじゃない？」
　「わり…つい…だって…」
　「そういえばちゃんと七海さんに言ったの？なんかうやむやになっちゃってたけど」
　「言ったけど…ちゃんとはまだ」
　「…なにそれ？ま、そんなだらしない顔してる位ならいいけど」
　「ああ」
　だらしない…確かに、と蓮も笑ってしまった。

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続きに拍手コメお返事です^^

　

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学