43 蓮(REN) 七海さんが小さく頷いたのを見て、すぐに唇を重ねた。
ただ合わせるだけじゃなくて舌を絡める濃厚なやつ。
だってもう七海さんの全部が欲しくて…。
何度も何度も交わした。
「ん……ぅ……」
七海さんの声にまた抑えのきかない衝動がわいてきそうになるのに七海さんを放した。
「ダメ!止まんなくなる!」
ここは生徒会室!おまけに昼休みですぐ時間の終わりはやってくる。
「七海さん」
七海さんを抱きしめたまま椅子に座って七海さんも横抱きにする。
「………コレはさすがに恥ずかしいけど?」
「だって!べたべたしてたいから!足んなかったんですもん!」
恥ずかしいといいつつ七海さんは蓮に付き合ってくれる。
「あ!そうだ…あの…七海さん…聞いていい…?」
「何を?」
「携帯の番号」
「……いいに決まってる」
なんだ!そうなのか!
番号とメアドを交換。
「七海さんいつでもかけて?メールも!」
「…夜でも?」
「もちろん!…俺もいい?」
「……ああ」
なんだよかった!
「ところで、なんでイライラ?六平さんに当たるって…」
「……………」
七海さんが黙ってぷいと蓮から視線を外した。
「はぁ……そうですよね…六平さんとはもう小学校からの付き合いで…俺なんかまだ数ヶ月…話すようになってからなんかまだ何週間ですもんね…」
「そんなんじゃ!………八月朔日の…邪魔しちゃいけないと…思って…」
「俺の邪魔?さっきも言ってましたけど…何が俺の邪魔なんです?」
「……俺が、だ。八月朔日はインターハイに出る選手で、それなのに俺といたばっかりに怪我して…それに俺に付き合って…」
「あのね…七海さん?俺、はっきり言ってここんとこ調子悪かった」
「……うん…見ててわかった」
「でしょ?他の誰にも分からない程度ですけどね!七海さんなら分かってると思ってました」
でも七海さんは何も言ってこないで、それどころかかえって顔を合わせる回数が減ったんだ。
「それ!七海さんのせいです」
「え?…なんで?…邪魔しないようにしてた…のに」
「邪魔って?会わない事?そんなの逆に決まってる!俺は七海さんが見てくれていれば頑張れる!……ずっと……生徒会室から七海さんが見てくれていた事…知ってました。あの不調の時の一言が俺を変えたんです。あれからもうずっと七海さんだけを目で探していた。……ずっと避けられてましたけど」
「……それは…」
「いいです。別にそれでもよかったんだ。七海さんが見てくれているのは知ってたから。…でもそれでよかったのはそこまでです。今は足りない!七海さんに触れたい、抱きしめたい、キスしたい。…それなのに、七海さんは全然そうでもないのかと…」
「そんな事!……あんな雑誌で取り上げられるほどなのに…俺なんかが…いいのかと…」
「はぁ?何言ってるんですか?それを言うのは俺のほうですよ!すでに書家として名を馳せて、先生と呼ばれて、立派なお家に立派なご両親に。俺なんて片親でしがない公務員の息子で…」
「関係ないっ!」
「俺も全く同じですけど?」
七海さんに軽くキスする。
「こんな事したいの七海さんにだけです」
「……………五十嵐くんにしたくならない?」
「じゃあ聞きますけど、七海さんは六平さんとキスしたいと思うんですか?」
「無理!!!」
ぶるぶると七海さんが恐ろしいといわんばかりに首を振った。
………そこまで嫌なの?とちょっとおかしくなる。
「俺もそうですけど?無理。あくまで友達だけ。アイツの裸見たってなんてことないです。勃ちません」
「……そう?」
七海さんが窺う様に蓮の顔を覗きこんだ。
「なぁ…八月朔日」
「なんです?」
「こういうこと…しても八月朔日は嫌じゃない?」
七海さんが蓮の頬を手で挟んでキスする。
「嫌なわけないでしょ!もっとしていいです」
「…じゃあ…セックスも…無理やりじゃなかった…?」
「はぁ?無理やりって…だったら勃たないでしょ!…というかしたの俺ですけど?……七海さん、一体何考えてたんですか…俺なんか、もう七海さんえっちする気ないかも…ってかなり凹んでたのに…」
「じゃあする…?」
「しますけど。でもインターハイまではしないです。それが自分のけじめだから。でも七海さんがいてくれないともうダメなんです」
「…ん……。……インターハイまで待つ。あと…ちゃんと見てる」
顔を俯ける七海さんが可愛い!
「七海さん……」
そしてもう一度確かめるようにキスした。
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