47 泉(IZUMI) 恥ずかしいだろ!
泉は顔を赤くしたままスタンドに向かった。
歩調を緩めて顔を取り繕う。
八月朔日よりも自分の方が緊張しているみたいだ。
はぁ、と深呼吸を繰り返しながらスタンドをきょろりと眺める。
すでに他の競技は始まっており、スターターの音や声援、歓声、色々な声が飛んでいる。
高跳びの方…と思いながら集団を探せば、目立つのであっさりと見つけることが出来た。
「八月朔日の調子はどんな感じだ?」
戻ってきた泉に会長が聞いて来た。
「予選ではバーを落とさないって言ってましたよ」
「強気だな」
くっと会長が笑った。
「へぇ~。八月朔日がそんな事言うなんて珍しいね」
一番この中では八月朔日と仲がいいだろう五十嵐くんが笑った。
もしかしたら八月朔日よりも自分のほうが緊張しているかも、と思う位に泉はどきどきしていた。
「お前が緊張してどうすんだよ」
六平が隣でば~かと笑っている。
「俺、初めてこういう大会とか見る!」
三浦くんが会長に話しかけていた。
「敦、お前高跳びってどん位跳べる?」
「さぁ~?マジメにやった事ねぇし」
まさか生徒会の面々とこうして八月朔日の応援に来るようになるとは思ってもみなかった。
不思議な感じ…。
秀邦組はもちろんずっと見知っていたけど、こんな風に一緒に出かけるなんて事今まで一度もなかったのに。
高跳びの選手入場に拍手が沸く。
いた!八月朔日だ。
じっと視線で八月朔日を追っているとふっと八月朔日が泉の方に顔を向けた。
あ…気付いた…。
思わず顔が緩むのが自分でも分かると六平がじっと泉を見ていた。
「なんだよ」
「いや~?別に?」
ニヤニヤとしているのにむっとするが、六平なんてどうでもいい。
一瞬でも八月朔日を見逃しちゃいけない。
選手の名前が呼び上げられる。
八月朔日は予選1組らしい。
次々と跳び始める選手、でも八月朔日はまだ跳ばないようでパスしている。
八月朔日がパスしたバーの高さでも引っかかって落としていく選手も多い。
低い時から跳んで緊張ほぐした方いいんじゃないのかな、なんて余計な事まで考えてしまう。
パスしているのは八月朔日の他にも何人かいる。八月朔日もそうだが、それらの選手は落ち着いている様に見える。
3回跳んで失敗した選手が消えていく。
かなり悔しそうな人も多い。
もしかしたら緊張でいつもよりも跳べていないのかも…。
八月朔日は大丈夫だろうか?
まだ八月朔日が跳ぶ気も見せないのに泉の方が落ち着かなくてどきどきがおさまらない。
八月朔日が時折ふいと顔を上げて泉の方を見ると顔を確認し、そして視線が絡まる。
頑張れ…。
泉が心の中で声を出すと八月朔日はそれが聞こえたかのように小さく頷く。
バーが上げられた。でもまだ八月朔日は跳ばないらしい。
さっきパスした選手も今度は次々と跳んでいく。
…大丈夫。
泉は胸で手を合わせながら見守るしかない。
次々と選手が脱落していく中、ゆっくりと八月朔日がアップを始めた。
バーはもう2m近くまで上がっている。
八月朔日は大丈夫。
そう自分に言い聞かせる。
そしてインターハイで初めての八月朔日の跳躍。
ふわりと軽やかに浮いた八月朔日の身体がバーを一発で飛び越えると拍手とどよめきが上がった。
他の選手が見るからにぎりぎりで跳んでいるのに八月朔日はまだ余裕を感じられた。
「…バーを落とす気がしないってのは本当らしい」
会長が感心したように言い、三浦くん、五十嵐くんはわっと声をあげ、他の人は冷静に見ていた。
「随分余裕あるように見える」
「軽やかだな」
副会長や六平が話しているけど、泉は見るのに夢中で話す余裕がない。
でももっと、もっとだ。
マットから起き上がってまた八月朔日が泉の顔を確認する。
「…………八月朔日ってわりとあからさまだな?お前もそうだけど」
「ああ?何が?」
六平が話しかけてくるのがウザく感じてしまう。
「なんか二人の世界って感じ?」
「……うるさいっ」
「あ、分かる~~~~!」
五十嵐くんも笑っている。
「俺達だっているのに八月朔日ってば七海さんしか見てないんだもん!あとでからかってやろうっと!……あ~でも八月朔日ってば真顔で肯定しそうだからやめといたほういいかな…」
「…………」
じろりと六平と五十嵐くんを睨むと五十嵐くんはぴゅっと六平の影に隠れる。
他の人に分からないのは当然だ。八月朔日と泉と間にあるのは『飛翔』なんだ。
繋いだのが八月朔日の高跳びのジャンプなのだから…。
------------------
続きに拍手コメお返事です^^
rs様
可愛いありがとうございます~^^
インハイに入りました^^
すぐ終わっちゃうけど^^;
少しでも楽しんでいただければ幸いです^^
ありがとうございます~^^
mm3様
蓮の母ですか~?(笑)
可愛いありがとうございます~^^
恋する男になってますか?wwww
ありがとうございます~^^
tnt様
たまらん、ありがとうございます(^m^)
青春ですね~!私も羨ましい…(笑)
いつもありがとうございます~^^
S様
そうなの~!待ってるのは一条家の豪華な食事(え?違う? 笑)
あ、食事じゃなくて、食材でした(^m^)ププ
待ってるのはニンジンクンですね…wwww
ありがとうございます~^^
okw様
どこの会場でしょうね~?(笑)
絶対目立つ!180センチ超が4人に可愛いのが4人いたら…
そりゃ~~~も~~~!ね!(爆笑)
腐女子は食いつくでしょうねぇ~^^;
ちゅーもらって勿論がんばりますよ~(^m^)
おマヌケ結果だったら告白できないもん~(笑)
ありがとうございます~^^
テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学