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番外編 夏休みお泊り会編 7

夏休みお泊り会編 7 泉(IZUMI)

 ちょっと親にお土産かって来いと言われたんで買い物に行きたいと柏木が言ったのに皆でついていく。

 「七海さん、何か買いますか?」
 「いや、別にいいかな。蓮は?お父さんにいいのか?」
 「だって家にいつ帰ってくるかも分からないし…あ、そういえば前にウチに来てって言いましたけど…」
 「うん」
 「…俺の部屋狭いし…七海さん、一緒のベッドでいい?」
 「……いい」
 「…じゃ、確実にオヤジが帰ってこない時じゃないと!いつ帰ってくるかホント読めなくて」

 「…蓮、帰って二日後から父が海外で個展開くので両親いなくなるんだ。…来るか?」
 「行きます!」
 すぐに蓮が頷く。
 「…蓮…コレ何?」
 「え?ああ、花火…七海さんした事ない?」
 「……ない、かな」

 「え?花火?何?何?」
 後ろから三浦くんが顔を覗かせた。
 「三浦くんもない?」
 「コレ花火なの?どかんどかん…コレなんないでしょ」
 「なんないよ。手に持ってする花火」
 「へぇ!ない!和臣~~~!」
 すぐに三浦くんが会長の所に報告。
 「今日は花火大会かな?」
 「かもね。…ああ、じゃあ浴衣着ようか」
 「いいですね!あ…でも…七海さん下、ちゃんと…」
 「穿かないのは寝る時だけだ!バカ」

 案の定三浦くんにねだられたらしい会長サマの計らいで夜は花火大会になった。
 明日にはもう帰る。こんなお泊り会の最後の夜に相応しいのかもしれない。
 肝試しの時に買った蝋燭で皆で囲んで花火だ。
 蓮と泉は浴衣を持ってきていたが、同じく浴衣で出て来たのは会長もだった。さすがだ。
 会長が大量に買った花火をわいわいと皆で次々火をつけていく。
 色々な色の光りに照らされて顔が白く光っている。

 「…悪くない」
 会長が満足そうに呟いているのに隣にいた七海も同意したくなる。
 今までこんな風に友達と遊びに行くなんてなかったから。きっと会長や五十嵐くんや六平も同じだ。
 「八月朔日…将来の事って考えた事あるか?」
 会長が泉の隣にいた蓮に聞いた。

 「俺ですか?俺はSP志望です」
 え?初めて聞いた。そうなのか?と思わず泉は蓮を見上げた。
 「前から思ってはいたけど…この怪我で…やっぱり大事な人を守れる存在になりたいな、と思って」
 蓮がはにかみながら答えるのに泉も少し落ち着かなくなる。
 …そうなんだ。蓮はそんな事を思っていたのか…。

 「柏木は?」
 会長が話を振っていく。
 「俺?医者」
 柏木が医者!?へぇ~~~。
 「どうせお前の事だから二宮を触らせたくないとかだろう?」
 くっくっと会長が笑っている。
 「そう!内科か外科か悩むところだ…」

 「二宮は?」
 「弁護士」
 「似合う~~~!」
 三浦くんの言葉に皆が頷く。

 「六平は?」
 「俺~?自分で小さな会社でも起こすかな~」
 「あ!じゃ俺秘書!」
 はい!と五十嵐くんが手を上げる。
 ちゃんと皆考えているんだ…。自分は…?
 泉は何も考えずにもう書家として存在してしまっていたが…。

 「俺には誰も聞いてくんないの?」
 三浦くんが口を尖らせる。
 「お前は会長のよく言えば秘書だろ。悪く言えば御者係り」
 柏木の遠慮ない台詞に違いないと皆が頷く。
 「七海はすでに書家として名前が売れているしな…」

 「今までは何も考えもしないでして来た事ですけどね…ここ最近は変わったと…自分でも思えるようになったかな」
 「そうか…?」
 「ええ…何も考えずただ与えられていた事をしてきたけど…」
 「それだけじゃあないだろう?好きでもなければ続けてもいないだろうからな」
 「……そうですね。最近分かりました。自分も書きたいと思う事があったのだと」
 それこそ会長に将来を聞く者はいない。分かりきっていることだ。
 ふふふ…と会長がふいに笑い出した。

 「素晴らしいよなぁ?」
 「何がです?」
 何が?と泉は頭を傾げた。
 「ここに俺の将来のブレーンが揃ってるって事がだ」
 「?」
 「俺のSPに、専属医者に、顧問弁護士に、系列グループ社長に、催し物の題字書きに。アレは下手な奴だと本当にみすぼらしい」

 「誰が専属医者だ!俺の専属は如だ」
 「俺も一条の系列はごめんですけど?」
 「顧問はいやだ…」
 「会長のSP…休みなさそう…」
 「……題字書きなら別にいいけど」
 「…………………受けてくれるのは七海だけか?」
 また会長が楽しそうに笑い出す。

 「ほらな?」
 ああ、と泉は納得した。
 「そうですね…」
 泉も分かる。名前に群がる人達を。大した書じゃなくても素晴らしいとおべっかを使う人達を。それが一条総裁の後継者ならばもっともっと壮絶なものなのだろう。
 こそれがここにいる者は一条の名に群がらない者ばかりだ。

 「…秀邦に入って初めて…今ここでこうして笑えている事に感謝した」
 きっと会長の本心なのかもしれない。
 「俺もです…」
 そう、出会いがなければこんな風に過ごせなかったんだ。
 去年まではただの知り合いの同級生でしかなかった。それが今は仲間だと思えるようになった。
 「ただの友人じゃないです。…仲間、ですね」
 「ああ」
 会長が目を伏せ、顔を俯かせながら満足そうに微笑んでいた。
 

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これで一応秀邦終わりです~^^
あほ~な番外編話までお付き合いありがとうございました~(笑)

明日から新作に入ります~^^/

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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