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月からの甘い誘惑 3

 「おいで」
 行っていいよと現場検証に来た警察の人に言われて碧は銀行の人に腕を掴まれ、何も考えずについていった。
 「乗って」
 「…車?」
 「そう。帰り道なんだけど。いつもは野次馬根性でわざわざ車停めて…なんて事なしないんだけど、車も渋滞して動かなくてな…」
 言い訳するように言いながら助手席のドアを開けて碧を促した。
 車に詳しくない碧は車種も分からないけれど大きめの白いセダンだった。

 「…すみません」
 「いいよ」
 渋滞だったと言ったけど、火事の所為でだったのだろう。もう時間も経って渋滞ではなくなっているのに男の人はウィンカーを出してスムーズに道路の流れに乗った。

 「あの…俺、椎名 碧(しいな みどり)です。碧は碧眼のあお、って言う字でみどり」
 「俺は久世 優眞(くぜ ゆうま)。……シーナってあだ名じゃなかったんだ?」
 「そう。苗字。でもカタカナ呼びでされてるでしょ?」
 「ああ…でもシーナより碧の方が似合っている」
 「え?そんなん言われたの初めて…だ…」

 自分が派手な外見をしている事は碧は自分で分かっている。
 髪は金髪に近い茶髪だし、ピアスは開けてるし、アクセサリーもじゃらじゃらつけている。服も自分とこの店の物で派手めだ。
 それで名前が碧の方が合ってる、なんて…。この人大丈夫かな?と思ってしまう。
 「親御さんに連絡は?」
 「いい、です。そのうちするけど…」
 「でも未成年…」
 「あの…俺、ハタチ越えてますけど?22歳」
 「え!?」

 久世さんが驚いた表情で碧を見たのにはぁ、と碧は溜息を吐き出した。
 よく若くは見られるけど。
 「……俺と3つしか違わない…?」
 「えっ!!!?」
 今度は碧が久世さんを凝視する。
 ……30歳位かと思ってた…。
 すると久世さんが苦笑する。多分久世さんは自分でも碧が思っていた事を分かったのだろう。
 きっといつもそう見られているに違いない。
 だってどうしたって25には見えない!

 「………見た目は10も年が離れてそうだけど…3つだけ…」
 「いいな…羨ましい…。俺なんかどうしたって見た目でチャラく見えるし…」
 「そう?まぁ、…最初はそう見えるかも…でもキミはちゃんとしてるから」
 「え……?そ、う…?」
 久世さんが碧のどこを見てそう言うのか分からないけれど、何となくそう言われるのは嬉しい。
 「話し方もきちんとしているし」
 「え?……なんかタメ口だし…きちんと、はしてない…と思う、けど」
 なんか誉められてばかりにこそばゆくなってくる。

 「イマドキの子の話し方じゃ……って…三つしか離れてないのか」
 ぷっと碧は思わずふき出した。
 「イマドキの子って……!」
 「……いや、悪い…。最低でも5歳は違うだろうと思ってたから…」
 ばつが悪そうに久世さんが言うのにまた笑ってしまう。
 「久世さんは落ち着きすぎ!」
 「………はっきり老けてると言ったって別にいい」

 「ううん。老けてるんじゃないよ。物腰が静かで落ち着いているからそう感じるだけ」
 なんかこの人いいかも…。
 ちゃんと話したのは初めてだったけれど。
 「……あれ……?」
 久世さんが信号で車を止めると、薄暗い夜の空を車のフロントガラスに顔を近づけて見ていた。
 「……幻月…?」

 ゲンゲツ?
 ナニソレ?と碧は聞きなれない言葉に首を傾げる。
 「ほら、見えないかい?月の右側と左側に小さく光っているのが」
 言われて碧もフロントガラスに顔を近づけた。
 車は大分走って周りの景色は随分と明かりがなくなりビルもなくなっていたので月がよく見えた。
 「…仄かに?」

 「そう。幻の月って書いてゲンゲツ。知ってる?」
 「知らない。初めて聞いた」
 「俺も見たのは初めてだけど…」
 へぇ、と碧はずっとその月を見ていた。
 明るい月に輪がかかって右側と左側に小さく幻の月が見える。

 幻月…。

 初めて聞いて、そして見た。
 きっと普通にいつも通りだったらそんな事知らないままだった。
 今日の有り得ない状況だったのに、その月の幻想的な光景に思わずほっと安心を覚えた。
 ああ、コレを綺麗だ、なんて思える自分がまだいたのだと。
 久世さんがあそこに来てくれてよかった。
 碧を引き取ってくれて、寝床を提供してくれて、こうして車に乗せられ、こんな月見せられて。
 いつもと同じ毎日では絶対気付かなかった事だ。
 ……そう思う事が出来た。

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続きに拍手コメお返事です^^


 
S様
 ですね~~~!(笑)
 瑞希並みです^^;
 瑞希は転がり込まれたけど、この子は転がり込みますwwww
 ありがとうございます~^^

mm3様
 王子サマでした~(笑)
 …でもそんなイメージじゃないですが^^;
 こちらこそありがとうございます^^
 よろしくお願い致します~(^m^)

JN様
 秀邦全員の区別つきましたか!すごい!(笑)
 嬉しいです////ありがとうございます~^^
 そして、勿論!絶対ハピエンです~~(^m^)
 ありがとうございます~^^

MR様
 名前はね~(笑)
 凝っちゃいます^^;
 たま~に適当なのもありますが…
 あ、孝明は適当からでした(予定になかったし! 笑)
 ありがとうございます~^^

tm様
 MLですね~^^;
 BL部屋だけどいいのかな?って、今更ですけど^^;
 はい、書き終わってます~^^
 書き終わってないと私うp出来ないんです~(><)
 プロットとかなんもないので^^;
 いつも適当なので読み直ししないと話が前と後ろでおかしくなっちゃう~^^;
 ありがとうございます~^^

msm様
 家が萌えてたら…(笑)
 いえ、燃えてたら困るどこじゃなくホント途方に暮れますよね↓
 とりあえず拾ってもらえたので大丈夫です~^^;
 ありがとうございます~^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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