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月からの甘い誘惑 5

 お弁当食べて、シャワーも借りて、かなり碧は落ち着いた。
 買ってもらった下着に久世さんがスウェットを貸してくれて袖や裾を捲くって着てリビングに戻り、ソファに久世さんからちょっと離れて座っていた。

 落ち着いてくると今日あった事が重く碧にのしかかって来る。
 あの赤黒い炎が碧の脳裏に焼きついていた。
 まるで生き物のようにうねる焔にぞくりと悪寒がし、そして今度はそれによって何もかもをなくしてしまった事に不安が押し寄せてきた。

 「……大丈夫かい?」
 ソファに小さくなって座っていた碧に久世さんが優しく声をかけてくれた。
 この人がいなかったら自分はどうなっていたんだろう?
 まだあのアパートの前で途方に暮れていたのだろうか…?

 久世さんは一見怖そうに見える。
 鋭いといっていい眼光に高い身長。細い碧とは違う大人の男の身体。
 銀行に文句を言いに乗り込んでいった時も一瞬碧は久世さんの強面に躊躇したのだ。
 でも久世さんはガキくさい碧にも深く頭を下げて銀行側の手落ちを謝ってきた。…久世さんが悪いわけでもないのに。
 大人の男の人に頭を下げて謝られたのなんてあれが初めてだった。
 
 「……あの…本当に助かりました」
 「いいよ。本当にたまたま通りかかっただけだけど…」
 「本当に…。マジで久世さんいなかったら野宿だったかも…」
 「…新しいアパート決まるまで安心していていいから」
 来た早々に掃除なんて始めてしまった碧に久世さんは嫌な顔一つしなかった。
 自分でも図々しいと思う位なのに。
 もう一度碧は頭を下げた。

 「気にしなくていいし、遠慮しなくてもいいよ」
 「…ありがとうございます…」
 人の優しさに泣けてきそうになる。
 だって誰も助けてくれる人なんかいないと思ったのに…。
 「いいけど、本当にソファでいい?」
 「勿論です!こうして置いてもらえるだけでありがたいですから!」
 結局布団の代わりになるようなものは見当たらなかったらしいのに、碧がソファを貸してもらえるならソファで、と言ったのだった。
 行く宛てがなかった事に比べればソファだって天国だ。

 「…あの…しばらく、ソファ貸してもらっても、いいですか?」
 布団買うだってそんな金ないし。
 「それはいいけど…」
 「あの!本当に俺の事はそんな気にしなくて…」
 「でも着替えとかもないだろう?」
 「服は明日店でツケで買ってきます!どうせ仕事ん時も店の物しか着られないから」
 「……お金…大丈夫かい?」
 「う……」
 あまり大丈夫でもないけど…。

 「……無理しないで。とりあえず最低限にいるものだけにしておくといい。あとで保険がおりるだろうから。ああ、そういえば碧くんは明日も仕事?何時まで出勤?」
 「仕事で、9時です」
 「着くのが8時半前でもいいなら一緒に乗せて行ってあげるけど」
 「え!?いいんですか?」
 「ちょっと時間早くてもいいなら。碧くんの店とは近いし」
 「お願いします!」
 ここからでは碧の電車の定期は使えない。交通費だってバカにならないのに、ありがたい申し出を断るはずがない。

 「じゃ、今日はもう色々あって疲れただろうから寝なさい…ってどうもやっぱりかなり下に見えてしまうな…」
 久世さんの口調が小さい子に諭すような感じになっているのに碧はぷっと笑った。
 いつもだったらちゃんと大人だ!と言い張りたくなるところなのだが、ありえない状況に甘えたい気持ちが出ている。
 それに碧とは反対に久世さんがかなり年上に見えてしまうという事もあるだろう。

 「いいですよ…俺見た目でどうしてもいっつも下に見られるし」
 「…俺とはつくづく正反対だな…」
 げんなりとしたように久世さんが言ったのに碧は笑った。どう見たって久世さんが25歳には見えないし、碧は22歳に見えないだろう。
 未成年だの、高校生だの、どこにいってもそう言われるのが常だった。
 それが嫌で仕方なかったはずなのに…。

 「今日は本当にありがとうございました。それと、あの、本当に申し訳ないんですけど…ちょっとの間…よろしくお願いします」
 「うん、ああ、もうお礼はいいよ。気を遣わない、で」
 にっと久世さんが笑ったのに碧も思わず口端が上がった。

 「助けが必要ならいくらでも言ってくれていいから。保険とかについても多分君よりは俺の方が知っていると思うし」
 「俺全然分からない…。あの、色々…教えてください」
 「うん。じゃあ今日はとにかく休む事。ね」
 「…はい」
 碧は優しい久世さんの言葉に素直にこくりと頷いた。
 
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続きに拍手コメお返事です^^

 
mm3様
 怖いですよね~(><)
 本当に…(--;)
 お金で買えないものとかなくなったら…嫌ですよね↓
 コメントありがとうございます~^^

USGちゃん様
 苦笑はこういう事でした~(笑)
 どの作品も気に入っていただけて嬉しいです////
 趣味一緒なのですね~(^m^)
 ありがとうございます~^^

YR様
 給料つぎ込んだ服なくなったらやりきれないですね~(><)
 でも私はきっと服より本だな…泣く!確実に!(T-T)
 いったいどれ位使ってるのか分かりません^^;
 コメントありがとうございます~^^

S様
 尻に敷かれる…でもないんですよ~?(^m^)
 ……多分^^;
 そうだと…思うけど…どうだろ???^^;
 ありがとうございます~^^

okw様
 そうでーす!この子でした(^m^)
 あらー!ぴったり?^^
 モチーフ!そうですね~~~!!!^^b
 久世…片付けられない大人でした(笑)
 洗濯は絶対大変(><)
 何回回すんでしょうね^^;コワ…
 ありがとうございます~^^

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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