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月からの甘い誘惑 7

 店長が来て、バイトの子達も来て。日常が戻ったような気がしてやけにほっとしてしまった。
 誰もいない店に一人でいると世界から取り残されたような気分になってしまう。

 「店長、ちょっといいですか…?」
 碧がやる事を終えて事務室に籠もっていた店長に声をかけた。
 「あの…有給…って使えますか…?」
 「有給!?いつ?」
 「ええと…明日から三日、四日…位?」
 「そんなに!?」
 「……スミマセン…」
 思わず碧は小さくなった。

 「シーナが有給なんて…?急にどうしたんだ?」
 「ええと…ですね…実は昨日住んでたアパートが燃えてなくなっちゃったんです」
 「はぁ!?…………あ!もしかしてニュースでやってた!?」
 「ええと…ニュース見てないんで知らないですけど…」
 どうやらニュースで流れていたらしいのに碧の方が驚いた。

 「それで、何もかもなくなっちゃったんで…」
 「おいおい…大丈夫か?今は?どこにいる?」
 「………知り合いの所に…。なので早く次のアパート見つけなきゃないし、色々と…。あ、それと服も全部なくなったんで店のツケで持ってっていいですか?」
 「そりゃいいけど。…そういう訳なら有給も仕方ない…あと確か会社から火事見舞いとか微々たるモンだけど出ると思うぞ?」
 「本当ですか!?いくらだって嬉しいですよっ!」

 「有給もいいよ。変わりに俺が全部店出るから」
 「スミマセン」
 「そういう時は仕方ないな。…何かいるものとかあるか?俺が使わないようなものとか持ってきてやるか?」
 「ありがたいんすけど!それ…新しく住むとこ決まったらで!今は人んちだし」
 「……だな。了解」
 「助かりますっ!ありがとうございます」
 「いいよ。そのかわりその後はキリキリ働けよ?」
 「ハイ!ありがとうございます!じゃ、銀行行ってきます」
 「よろしく」
 話の分かる店長でホントよかった。
 人のちょっとの言葉の優しさが身体に滲みる。
 
 両替と通帳の記帳の為に銀行へ。
 久世さんいたかな、どこかな、と碧はいつもよりもきょろきょろと首を伸ばして久世さんの姿を探した。
 いた!
 電話中らしい。
 電話を手にメモを取っている久世さんがいた。
 その久世さんがふっと顔を上げ、碧に気づいたので碧は両替機の前で列に並びながら小さく久世さんに手を振ると久世さんがふっと口元に笑みを浮かべた。

 なんか、嬉しい。
 昨日まではただ頭を下げて挨拶するだけだったのに、かっこいいあの人のマンションの部屋があんな事になってたなんてきっと知ってるのはこの銀行の中でも碧だけだろう。
 それにも思わず笑いが出てきそうになってしまう。
 両替機が空いて碧が機械操作をしていると久世さんが出てきた。

 「碧くん」
 「あ……ええと、…コンニチハ」
 なんと言っていいのか分からずに思わずカタコトのように挨拶すると久世さんがくっくっと笑っていた。
 「聞くの忘れたんだけど。碧くんは何時に仕事が終わる?」
 「ええと7時半頃、…かな」
 「じゃあ店のちょっと先で待ってるから」
 「え?」

 「あと、これ、俺の携帯の番号だからあとで俺のにも入れておいて?」
 「あ、うん…はい」
 渡された紙には電話番号とメアドが書かれていた。
 「じゃまた夜にね」
 「あの…ありがとうございます」
 久世さんがくすと笑ってまた中に戻っていく。
 なんか、いつもと違うのが嬉しく感じて仕方ない。

 なんだろう?
 久世さんから貰った紙を大事に手に持ち、そして銀行でやる事を終えて視線がまた合った久世さんに小さく手を振り碧は銀行を出た。
 まだ久世さんに捨てられる事はないらしいのに安心した。
 心配いらない、と昨日も言われたけれど、よく知りもしない自分をおいてくれるなんて。
 自分がもし久世さんの立場だったらどうしただろうか?
 ただ顔を知っているだけというだけで受け入れる事なんてするだろうか?

 きっとしない気がする。
 それを考えれば本当に久世さんには碧は感謝の言葉しか出ない。
 いつかきっと恩を返さないと。
 でもその前にちゃんと金返すのが先決だ。
 それにしたってただで住まわせてもらうのもアレだし、家賃って入れた方いいのか?
 でもあんなとこいくらするかなんて碧に見当なんかつかない。
 う~~~ん…
 考える事がてんこ盛り過ぎる…。
 はぁ、と碧は店に戻りながら溜息を吐き出した。
 
-----------------
続きに拍手コメお返事です^^
 
mm3様
 私も掃除苦手~(笑)
 でも一応散らかってはないけど^^;
 ざっぱなもので^^;
 久世さん、いい男になってましたか~?
 優しいです^^
 お掃除できないけど。ふけて見えますけどwwww
 ありがとうございます~^^

rmm様
 実年齢より落ち着いてます(いえ、ふけてます! 笑)
 ステキになってるとよいのですが…
 どうでしょう~^^;
 ありがとうございます~^^

nck様
 男の子だし大丈夫だろう は部屋が汚くても大丈夫だろう、
 ですよ~(笑)
 ウチの子健気くん多いです(^m^)私の好みなので(笑)
 でも碧くんはそこまででもないかな…^^;
 本当に!あと今年も一ヶ月!
 大掃除……知らんふりしたいです(><)キラーイ!
 お気遣いもありがとうございます~^^

YR様
 本が財産…そう言うとかっこいいですね!(^m^)
 まるきり私の好きな分野の本ばかりですが…^^;
 ちなみにBL本はみんな処分しちゃったので
 今はそんなにないです(笑)
 歴史関係が多いかな…^^;
 
 服は私も欲しい!っていうのはないですね~…
 服にお金かけるなら本欲しいなので^^;
 本だったら高くても迷わず買いますけどねwwww

 テディ・ベアは一時期凝って作ってた事ありました^^
 みんななくなっちゃったけど^^;
 未だに目とかパーツや道具は持ってます^^
 お嫁は…^^;
 頑張ってください(><)
 ありがとうございます~(^m^)
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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