スーパーで色々食材を買って久世さんのマンションへ。
帰ってきてすぐにまず洗濯機を回した。
立派な乾燥機付きの物があるのに使わないなんて…。
スーツはさすがに放置されていなかったのは救いだろう。
仕事着だろうからそれも分かる。
それから簡単に晩御飯の用意。
炊飯器も小さいのがあってご飯をセットして、炊き上がるまでに味噌汁作って、豚肉とほうれん草はソテーして。サラダつけて。
簡単なこんな物位しか出来ないのにいいのだろうか…?
あまり大きくはないダイニングに男二人で向かい合わせっていうのが変な気はするけれど。
そういえば一人暮らしして誰かとこうして顔を合わせて外以外で食べるのは初めてだ。
「俺、ホント適当だから…久世さんの口に合うか…」
心配になって言い訳がましくなってしまう。
「うまいよ」
久世さんに満足そうなのが見えてほっとしてしまう。
なんかすっごい久世さんの事を気にしている。
そりゃ、気に入らないって放り出されたらかなり困った事になってしまうから仕方ないけど。
今の所嫌だ、とは思われてはいないらしい。
洗濯をして、干して。
バスルームも乾燥室になるのにシャワーを済ませ、バスルームにも洗濯物をぶら下げた。
落ち着いてソファに座ると大きな欠伸が何回も漏れる。
昨日あまり眠れなかったからだろう。
それとちょっと悪寒がさっきよりする感じもする。
「…眠い?」
「あ…スミマセン…昨日…興奮してたのか…あんまり眠れなくて」
「当然だろうな…」
「眠くなったら寝ちゃうんで気にしないでください」
そう言いながら碧はソファに沈んだ。
やる事全部終わったらなんか急に具合も悪くなったような気がする。
コホ、と咳まで出てきた。
「……もしかして具合悪い?」
久世さんが眉間に皺を寄せて、いつも柔和な表情だったのが怖い顔になっていた。
怒るともっと怖い顔になるのかな…?
思わず変な事まで考えてしまう。
「気にしないで下さいっ。これ以上久世さんに迷惑かけるわけいかないですし」
久世さんが立ち上がって碧の前に立つとそっと額に手を触れた。
「熱…あるじゃないか」
「え?あります?」
「あります?じゃないだろう!やっぱりソファじゃダメだな」
「いえ!あの!ホント!大丈夫…です!放置しててください。あとすぐ治るだろうから」
「治らなかったらどうする?」
どうする、と問われても…。
「今日は俺のベッドに寝なさい。おいで」
久世さんが碧の腕を引っ張って立たせた。
「で、でも…」
「具合悪いのにでもも何もない。確か冷却シート使っていないのあったはず。あとで持ってきてやるから」
そう言いながら有無を言わさず碧を引っ張って久世さんは自分の寝室に碧を連れて行って寝ていなさい、とベッドに寝かせられた。
「…ベッドでかい…」
「無駄にね」
くすりと久世さんが笑う。
「キミは細いし、気にする事ない。シングルだったらさすがに考えるけど」
まぁ、確かに…。普通は野朗同士でシングルのベッドはごめんだろう。だからといって広いからいいのか、という事もないと思うけど。
「体温計と冷却シート持ってくるから」
久世さんの気配がなくなるともう碧の意識は沈みそうになってきた。
ベッドが気持ちイイ。
ソファでだって別にいいんだけど、こんなとっぽりと包まれるような布団で寝られるなんて、寝不足と具合の悪い身体にはもう拒否出来そうにない。
眠気の誘惑に逆らう事無く碧は目を閉じていた。
すぐに久世さん戻ってくるはず、…そう分かっていたのに…とてもじゃないがもう意識はベッドの中に引きずられそうに気持ちいい。
ベッドに寝られるって幸せなんだ…。
家があって寝る所があって、そして今は一人じゃないのが助かっているのかもしれない。
どうしても一人だったら先の事ばかりを気にしていたかも。
それが久世さんがいるから、久世さんの事を多く考えているのかもしれない。
それがあまり自分が沈んでいない助けになっているんだ。
なんか何もかも久世さんに頼りきって迷惑かけている。
そしてさらにこうしてベッドまで占拠してしまったんだから…。
そう思いながらも碧は意識を手放した。
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