何かが追いかけてくる。
怖い…。
一所懸命碧は逃げた。
暗い闇?何だろう?分からないけど、ただ怖い。
「…くん…碧くん…碧くん……碧!」
「んっ!はっ…」
碧はがばっと目を覚まして起き上がると、荒く息を何度も繰り返した。
周りが真っ暗…。夢の闇…?
「碧くん…?大丈夫か?」
あ、真っ暗じゃない…。夜、か…。
薄暗がりに人影が見えた。ああ、そうだ、久世さんだ。
「だ、い…じょうぶ…」
久世さんの声に安心してほうっと深い溜息が出た。
「…夢?」
「うん…なんか…追いかけられてる感じ…真っ黒い…闇?かな?なんだろ…」
「……不安かな…?」
久世さんは隣に寝ていたらしい。そりゃそうだ。これは久世さんのベッドなんだから。
「すみません…起こしちゃった…」
「いや、いいよ。寝て。……熱は?」
久世さんは碧の身体に手を添えてそっと横にしてくれると額には冷却シートが貼られているので、首に手を触れてきた。
う、わ…。
人肌に触れるのが久しぶりで思わず碧はぞくりと感じてしまう。
「いくらか下がった、かな」
「え、と…多分…?」
久世さんが暗がりで碧の顔を見ているのが分かる。
なんか変に緊張するな…と碧はどきっとしてしまった。
久世さんはきっと何も思わないでただ碧を可哀相だからベッドに入れているんだろうけど…。
いや、ダメだ。
久世さんはダメ。
そう自分に言い聞かせる。
久世さんはそういう相手じゃないんだから。
その久世さんの手が碧から離れようとしたのに思わずはしっと碧は掴んでしまった。
「あっ!……ごめ…んなさい…」
慌ててその手を離す。
違う。今は夢でちょっと不安になっただけだ。
あの闇が碧を捕らえそうで怖かっただけだ。
いい年して夢が怖いだなんて…。いや、きっと久世さんの言うとおりに不安があんな夢を見せたんだ。
「不安なんだろう?」
「…………多分…」
そこは素直に頷くしかない。不安なんかじゃない、なんて言ってもそんなのは嘘だ。
「……仕方ないな。…まぁ小さな子と思えばいいか」
「…え?」
「おいで」
ぐいと久世さんが碧の身体に手をかけて引っ張った。
そして横向きに抱きかかえられてぽんぽんと背中をあやすように叩かれる。
これじゃ本当に小さい子供みたいじゃん!
そう思いながらもいいのかなと久世さんの胸の辺りを手で掴む。
何かに縋っていたかった。
こうしていれば安心できるかも…そう思った途端にまた眠気が襲ってきた。
体温が…誰かが傍にいるというのに安心する。
きっと不安と熱とで弱っているんだ。
それだけだ。きっと…。
背中を規則正しく優しく刻むように、まるで赤ちゃんにしているようにぽんぽんと叩かれるのが気持ちいい。
子供じゃないのに…。
久世さんにしたら見た目で碧なんか子供に見えてしまうのかもしれないけど。
三つしか違わないはずなのに。
抗議したい気もするけれどもう意識は沈みかけている。
「いいよ、寝て…」
久世さんの声が碧の頭の上から聞こえる。
久世さんの心臓の規則正しい音。
背中の手。
温かい……。
すぅ、と碧は意識を手放した。
温かい…。
気持ちいい…。
半分覚醒しながら碧はゆらゆらとしたような安心した気分を味わった。
「ん…」
「碧くん…?起きた…?」
声が聞こえて現実の世界に引き戻される。
「ん、ぁ…?」
ゆっくり目を開けると目の前に久世さんの顔があった。
「う……わ……」
いつもはびしっと髪を整えてる久世さんの前髪がルーズに額にかかっているのに色気がある。大人のオトコの魅力、みたいでちょっとイイ。
そんなのどうしたって碧に醸し出せる雰囲気では絶対ない。
「お、は…よ…ござい…マス」
「おはよう。具合は…まだちょっと熱あるか…」
久世さんの手が碧の首筋に触れて思わずぎゅっと目を閉じた。
はた、と今の状況に気付く。
碧は手をぎっしりと久世さんの服を掴んだままでしっかり腕の中に納まっている。
「す、す……スミマセン…」
碧が慌てて手を離すと久世さんが笑っていた。
「いいよ。小さい子みたいで可愛いし」
確かに久世さんのイイ身体に比べたら細っこい碧の身体なんて子供みたいなものだが、そう言われるのは男としてちょっと微妙だ…。
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続きに拍手コメお返事です^^
msm様
お返事遅くなりました^^;
ひなというより毛を逆立てた仔猫ちゃんみたいな感じですね^^;
母になっちゃいますか~?(笑)
ありがとうございます~^^
S様
勿論…巣立たせられないでしょう(笑)
巣立って行っちゃったら帰ってこない…^^;
ありがとうございます~^^
YR様
私、食事シーン書くの多いです(笑)
…何故か^^;
歴史は色々なんです~自分の好みのとこだけ!(笑)
古代エジプト、あとはヨーロッパはわりと全部好きかな。
イギリス、フランス、スペイン…ハプスブルグも好き。
フランス革命は特に好き^^ あ!北欧も好き~♪
神話、伝承系は国内海外問わず大好きですね~
日本史だと、飛鳥時代。鎌倉~室町時代、戦国、幕末…かな。
平安は好きではないけど、陰陽師とかは好きとか、
一部限定好きが多々です(笑)
飛鳥は聖徳太子、鎌倉辺りは北条氏、幕末は新撰組~(^m^)
もっとありますけど…書き始めたら止まらなくなっちゃう^^;
手芸系は最近はもう全然してませんけどね~^^;
もっぱらPC前ばっかりです(笑)
ありがとうございます~^^
kin様
いい感じに進んでますか?(^m^)
老けてても(笑)いいですか?^^;
熱出てのアレコレ…はちょっとだけかな…(笑)
秀邦のほうもありがとうございます^^
笑っていただけて嬉しいです(^m^)
ちょこちょこと書きたいネタはあるんですけどね^^
機会があれば^^/
ありがとうございます~^^
テーマ : BL小説
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