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月からの甘い誘惑 14

 「碧くん」
 久世さんの声にはっとしたけれど泣いてた顔を見られたくなくて布団の中から顔を出せない。
 ぎし、と久世さんがベッドの端に腰かけたのが分かった。
 「寝た?」
 寝てない、と布団の中で碧は首を振った。
 「冷却シートまだ貼ってたほうがいいだろう」
 そういって久世さんがそっと布団をめくってきたのにどうしよう!と思いつつ顔を出させられてしまった。

 「……っ」
 泣いてた顔を見られてつい碧は顔を久世さんから背けた。
 「………ここにいるのが嫌になった?」
 「ちが、う!……俺…だって…久世さんに迷惑しか…かけてないし…」
 「別に迷惑だなんて思ってないけど?」
 「だ、って…っ…」
 緩んでいた涙腺はまた涙を排出し始めた。
 「俺……なんも…なくて…」

 「ああ、はいはい…気にしなくていいって言っているのに…」
 ヨシヨシと久世さんの手が碧の頭を撫でてくる。 
 「そんなに気を張らなくていいから…。何もなくなっちゃって不安なのも分かるし、一人で頑張ろうとしているのも分かるけど、……こうなったのも何かの縁だろう。ちゃんとキミが大丈夫ってなるまで責任負ってやるから」
 「な、んで…?」
 「なんでだろうなぁ?でもなんとなく放っとけないから、かな…。だからそんなに気にしなくていい……」

 そう言いながら久世さんが碧の額に冷却シートを貼ってくれる。
 みっともない泣き顔なんか大きくなってから人に見られたのが初めてでばつが悪い。
 でも久世さんには迷惑かけっぱなしだし、昨日の夜も子供みたいにしてしまった事もあってかなんとなくいいか、とも思ってしまう。
 きっと久世さんが受け止めてくれている事が分かるからだ。

 なんでだろう…?

 碧が大丈夫になるまで責任を負う、とかひな鳥扱いなんて…今まで別に義理だってなんだって何もなかったのに。たった顔見知りってだけで、碧なんて名前も知らなかったのに…。
 そういえばあの燃えるアパートの前で碧の事をシーナ、と久世さんは呼んでいた。久世さんは碧の事を知っていたんだ…?
 それにそういえば、あの時も久世さんは碧を抱きとめてくれていた、と今頃思い出した。
 身長が平均より高い久世さんは碧をすっぽりと包むように…。昨日も…。

 だからきっと甘えたくなるんだ。
 今まで自分に虚勢を張って生きてきたのに久世さんの前だと全部崩れている気がする。
 目がまだ潤んでいるのは自分でも分かっていたけど、いいや、とそのまま久世さんをじっと見上げた。
 久世さんは碧が間借りしている久世さんのベッドの端に腰かけてよしよしとまだ頭を撫でてくれていた。
 きっと久世さんの中で碧は小さい子に分類されているのかもしれない。
 年相応に見られないのはいつもの事で、それは碧の中では面白くない事だったけれど久世さん相手だといいか、とも思ってしまう位に久世さんの視線に慈愛がこもっていた。

 「…迷惑…じゃない…?いていい…?」
 「いいよ」
 建前かもしれないけれど、その言葉を信じる事にする。
 誰にも甘えるなんてことした事がないのに、ついその目に縋りたくなる。
 きっと弱っている所為だ。
 全部を無くして不安な時に拾ってくれただけでもありがたいのに、さらにこんな熱出して、それでも優しくされたらどうしたって碧の中で久世さんは特別になってしまう。

 「…ありがとうございます……」
 「うん。…さ、寝て。動くのは明日からでいいから」
 ポンポンと久世さんが軽く碧の頭を叩いたのに恥ずかしいなぁ、と思いながらも小さく碧は頷いた。
 もう小さい子扱いでもいいや、と開き直ってしまう。
 久世さんがきっとすごいオトナに見えてしまうからだ。…碧とは反対に。

 思わずくすっと碧は笑ってしまった。
 実際は三つしか違わないのに見た目で10歳位も違って見えるなんて。
 きっと精神的にも同じ位違っているのかもしれない。だから久世さんは落ち着いて見えるんだ。
 顔をちゃんと見れば若いって分かるのにどうしても印象は30歳位に思えてしまうんだから。
 泣いたり不安になったり、感情の起伏が忙しい碧は確かに立派な大人とはいえないかもしれない。それに意地になる所とかもだ。
 少し久世さんを見習って大きく構えていられるようになりたい、と碧はじっと久世さんを見上げた。
 
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続きに拍手コメお返事です^^
メールフォーム分もあります~^^;
tm様
 すみません!迷惑フォルダに入ってて気付くの遅れました(><)
 なぜか迷惑に行く時と行かない時があるんです…謎…(--;)
 ありがとうございます~^^
 よかったでした~(><)
 いつもどうかなぁと心配なのですが…^^;
 ありがとうございます~^^

S様
 新作久しぶりですからね~^^;
 ずっとシリーズみたいな感じだったので~
 秀邦のラスト気に入っていただけてよかったです~(^m^)
 嬉しい////
 これから出てくるサブね…(大汗)
 私的には嫌なパターンなんだけど(笑)
 ありがとうございます~^^

okw様
 お忙しいのにありがとうございます~(><)
 シーナ見た目チャラでもちゃんとした子でした(笑)
 okwさんもそんなでしたか~(^m^)
 ラブラブもいいけど、くっ付くまでのドキドキも
 やっぱり私も好きなので~^^
 ありがとうございます~^^

yk様
 ありがとうございます~^^
 好み同じですか!^^
 うれしいです~(^m^)
 そうなんです~!血なまぐさい時代好きです~(笑)
 そしてかっこいい男もそうですよねー!
 そう!BLの対象にはならんです!(><)
 あ、でも新撰組の中でははアリかな(笑)実際にあったしね…^^;
 ちなみに私が好きなのは鬼の副長です!マジでかっこいい////
 それと、会長達は普通じゃないと思います(笑)
 体調よくなさそうですけど大丈夫ですか?(--;)
 お大事にしてくださいね(><)
 私は眠いだけで風邪もひきません^^;
 ありがとうございます~^^
  

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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