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2012.09.24(月)
前も一人でぐるぐる考えて、また同じ事の繰り返しで、何度も一人でぐだぐだになって結局怜をはらはらさせて、を繰り返している自分に明羅は自分で恥ずかしくなってきた。
急に自分の周りでCDや協奏曲なんて、話が大きくなってしまった事に現実感がない事も関係していたのかもしれない。
自分に現実味がないのに宗の言葉がリアルに聞こえて、自分の不安定さが出てしまったのだろう。
「ごめん…ね…?」
明羅はそっと怜に謝った。
「何が?」
「いつも……。一人でぐるぐるして。…怜さん、嫌にならない?」
「別に嫌にはならないが。……宗に言われるのはかなり面白くない」
怜がいつものように身体を綺麗にしてくれるのにはどうしても羞恥心を覚えて、それが終わればほっとしてしまう。
「お前考えすぎ。だから、考える前に口に出せっての」
むぅっと明羅は口を結んだ。
「まったく…毎回俺の心臓が縮む。いつお前に捨てられるかと思って」
「……それ絶対、ない、から」
「だから、俺もそう言ってるのにお前は全然聞いてないだろ」
怜が明羅の身体を拭いて着替えさせてと甲斐甲斐しく動く。
「……だから、こうして怜さんなんでもしてくれるでしょ?俺、そんな…」
「俺がしたいんだからいいだろうが」
「…………」
したいって…。
「俺、恥かしいんだけど…」
「そう?いいから、いいから」
…よくない。
「今日はゆっくりしてろ」
「ん…ピアノ…。ラフマニ、聴きたい」
しばらく怜さんのピアノちゃんと聴いてなかった。
怜さんは何も言わないでピアノに向かった。
贅沢だ。
ヴォカリーズ、悲歌、リラの花、楽興の時、プレリュードはト短調だ。
あとは鐘。
さわさわとずっと肌がざわわいている。
なんでこんな風に怜の演奏にだけ反応してしまうんだろう。
こうして音の中に包まれていると自分がいかに小さい事でぐだぐだしていたのかよく分かってしまう。
ばかだな、と苦笑が出てくる。
ばかな自分に怜はそれでも安心を与えてくれる。
愛想つかされても仕方ないくらいなのに。
明羅はソファから立ち上がって怜の傍に寄っていった。
ベンチ式のピアノ椅子の怜の横に座って背中を怜に軽く預ける。
「なんだ?」
演奏を終えた怜がくすっと笑った。
「…甘えたに来た」
「んじゃ、そこいろ」
そのまま続けて怜が曲を弾いていくのに明羅は身体を委ねた。
「昨日はごめん」
朝、明羅は電車の駅で宗に謝った。
「いや、解決したのか?」
「ん~~、解決はしてないけど。焦らなくていいかな、って」
明羅が苦笑した。
「それでいいだろ。こっちは凡人だからまったくもって桐生が何を悩んでいるのか分かんねぇな」
「?」
「あんな曲、音楽が俺は分かんねぇけど、CDに出来る位の、しかもテレビに使われる位の曲作ってる奴が何に焦っているのか俺には理解出来ない」
「テレビ?」
そういえば生方がなんたらかんたらと言ってた。
ここ最近全然テレビをつけていなかったから知らない。
「あちこちで流れてるぞ?知らないのか?」
「…知らない」
明羅が答えれば宗が呆れていた。
「…迷惑な話だ。…いや、でも昨日に限っては桐生には感謝、かな」
くすっと宗が笑っていた。
何に感謝なのだろう?
1月が終わって学年末テストも終え、学校に行く日はほぼなくなり、2月になってピアノ協奏曲の練習がしたいと怜が言うので明羅の家に行って2台ピアノで練習したりした。
前に両親の前で弾いた時は入り込みすぎたけど、今度は冷静で、あれこれと怜と言いながらの練習だった。
その帰り、遅くなって飯食ってくぞ、と怜が明羅はそのまま食事に連れて行かれた。
個室の高級そうなレストランで明羅はなんで?と首を傾げる。
しかも店の店員に予約してた二階堂です、なんて言ってるのに目を見開く。
予約?
「今日、お前の誕生日だろう?2月4日」
「……覚えてた、の…?」
「当たり前だ」
怜がむっとした。
個室でよかった。夜景の見えるレストランで個室。
店員がいなくなってから明羅は怜に抱きついた。
「18だろ。おめでとう。ん~~まだ成人が遠いな…あと2年か」
怜が困った様に言っている。
「ん?なんで成人?」
「だって俺淫行で掴まっちゃうだろ」
「な……」
「早く大人になってね」
「………知らない」
ふいっと明羅は恥かしくて顔を背けた。