「ご馳走様でした…」
「うん」
ファミレスから出て碧も思わぬステーキに満足してしまった。
一体久世さんの所から出て行く時に借金はいくらになるんだろう…?
「駐車場まで歩きながら不動産屋あれば見ていこうか」
「……はい…。あのすみません…付き合わせてしまって」
「いいよ、全然。保険も入るし一応少しは足しにはなるだろうからそれで探さないとね」
「はい…ホントにありがとうございます…」
全然縁もゆかりもない人だったのに、たまたまあの現場に居合わせただけでこんな事になって久世さんには迷惑だったろうに。
「あら!優眞さん!」
「…由紀乃さん」
向いから歩いてきた女の人が久世さんに声をかけてきた。向こうは男の人連れ。
「優眞さん、こちら家のお隣で幼馴染の健介くん」
「久世 優眞です」
「今野 健介…です」
由紀乃と久世さんが呼んだ人の連れの男の人が久世さんを睨みつけるようにして挨拶していた。
「今日はそちらの方とご用事だったの?」
「そうなんです。すみません。埋め合わせに今度食事にでもお誘いしますね」
「あら…。じゃあ待ってます」
ふふと由紀乃さんと久世さんが呼んだ女の人は嬉しそうに笑った。
上品な綺麗な人だ。
…食事に誘う…?
どういう関係?
「優眞さんにふられちゃったから健介くんにお買い物についてきてもらったの」
「すみません」
「あ、いいの!別に咎めているのと違うんですから!では、また…。ご連絡お待ちしてますね」
由紀乃さんて人は艶やかに微笑んでじゃあ、と幼馴染の人と行ってしまう。
その間もずっとその由紀乃さんて女の人の幼馴染という人は久世さんを睨んだままだった。
「…あの…」
「え?ああ…あの人は…この間お見合いさせられて…その相手」
「へ!?」
「ウチの頭取の娘さんなんだ…。付き合っている女性はいるのか、と聞かれていないって言ったら一度でいいから会ってと言われて…」
困った様に久世さんが頭をかいている。
「そ、う…なんだ…へぇ~…さすがだね…久世さん優秀だからそんな風に声かかる、…んだね!」
「まだ結婚とか…考えた事もないのに…」
はぁ、と久世さんが溜息を吐き出している。
「でもお似合いだと思うよ?」
「ああ?」
「なんとなく…だけど」
「…そうか?」
「……うん…。綺麗な人だし」
「まぁ…頭取には似てない」
ぷっと碧は笑ったけど結構心の中はショックが大きい。
「…お付き合い…してるの?」
「……という事になるのだろうか…?まだ会ったのは2、3回だが…」
似合ってる…。
ふんわりした感じで綺麗な女の人。
久世さんの隣に立ったら似合う。
スーパーのガラスに自分と久世さんが映った時は違和感だらけで、今もそれは同じ。
どうしたって久世さんと碧が一緒にいるのは合わない感じだ。
合う合わないを碧が考えるのもおかしな話なのだけれど。
「碧?どうかしたか?」
顔を俯けた碧に久世さんが覗き込んできた。
「ううんっ!なんでもないっ!…早く出て行かないとね!俺邪魔だ…」
「別に急がなくていい。それに碧がいなくなったらどうせ家に呼べなくなるだろうし同じ事だ」
「……でも少しは片付けるでしょ?」
久世さんが肩を竦める。
あんまり片付ける気はないらしいのに碧は苦笑した。
「する気ないだけなのに」
「ないな。別に俺は困らないから」
「え~!それはダメだと思うけど!」
「仕事用のワイシャツやスーツはクリーニングに出しているし、何の問題もない」
言い切る久世さんに声を出して笑ってしまう。
「嫌われちゃうよ?」
「それならそれでも別にいい」
いいの…?あまり乗り気なようではない久世さんの様子にちょっと気持ちが浮上して来る。
というか…お見合い相手って言われてショック受けて、興味なさそうな感じに浮上って…。
ダメな方にいっちゃってる気がする。
…かなり傾いてる気がする。
だって優しいんだ。
なんの見返りもないのにこんなによくしてくれたらどうしたって碧だって好意は出てくるに決まってる。
好意だけ!
好きと違う!…好きになっちゃダメなんだから。
お似合いのお見合い相手だっているし。
そう思うのにあの人は久世さんの事をよく知らないんだと思えば優越感を感じてしまう。
あの人よりきっと碧の方が多く久世さんを知っているんだ、とつい思ってしまうんだ。
だめだ、というのに…。
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お知らせです~♪
おきわさんから秀邦の五六七のイラストいただきました~^^
チョー可愛いです~~(^m^)
是非行ってみてください~^^/
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