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月からの甘い誘惑 23

 洗濯をするのはいいんだけど、久世さんの脱いだパジャマ代わりに着ていたスウェットがなんで床にあるんだ?
 どうやら脱ぎながら着替えに向かってその途中で放置していくらしい。
 そりゃ床に散らばるはずだ。
 なんでだろ?

 それを苦笑しながら拾って洗濯機を回す。
 それに今日は天気がいいので布団も干そう。
 掃除機もかけて…。
 碧の住んでいた部屋よりもずっと広い久世さんのマンションだ。
 掃除機をかけ終え、洗濯物を干してふぅと息をつき、PCをたちあげた。

 「借りま~す」
 家主はいないけれど断ってパソコン前に陣取るとアパート情報を見ていく。
 条件を入れて検索。
 やっぱりどこもヒットはなしだ。
 あちこちのサイトで入れるけれどやはり無理らしい。
 もう少し離れた所ならあるけどそうすると通勤がヒドイ。
 「ないか~…」
 椅子で仰け反ってしまう。
 やっぱ家賃値上げか…。給料値上げしてくんねぇかな~…。
 とか思っていると社長から電話だ。

 「もしもし?」
 『シーナ、まだヤローのうちにいるのか?』
 「いますよ?だって俺行くとこねぇもん」
 『俺の所にきたらいいだろ』
 「やだ。行かない」
 『………ウチの服いるか?』
 「あ!それは欲しい!…です」
 『じゃあ今度の土曜店終わったら付き合え』

 「…いいけど…。ホテルは行かない」
 『一度寝てるんだから二度でも三度でも同じだろ』
 「違います。一度目は社長だって知らなかったから!分かったらそれは無理」
 『……黙っていれば分からないだろうに』
 「嫌です」
 『…火事見舞いってことで服はどうにかしてやる』
 「それはマジで助かります!ホント…何もないから…」
 『………土曜に持っていってやる。そのあと付き合うのが条件だ』
 言うだけ言って社長の電話が切れた。
 服は助かるけど…。困るなぁと碧はまた溜息が出てしまう。

 「あ、給料上げてって言えばよかった…」
 でも言ったら言ったで、いいからウチに来いって言われそうだけど…。
 「……寝るの…?」
 えっち、そういやここんとこしてなかった。遊んでばっかもなぁと一応は思って。でもここは久世さんちだし、出したくても出すのも憚れる。
 そんな事考えるとますます出したくなってきてしまう。

 久世さんも一人ですんのかな…?
 あの由紀乃さんて人を抱くの?
 どうやって…?
 碧、と呼ばれた久世さんの声を思い出しただけで下半身に熱が集まってきてしまった。
 どうせ久世さんは夜まで帰ってこないし、いいかな…。
 碧はPCの前から離れて久世さんの寝室に移動した。
 布団は干してるからないけどベッドに横になってベルトを外すと半分勃ちあがった自身を取り出す。
 熱出てたと時に久世さんが抱きしめてくれた事を思い出しながら、声を思い出しながら…その久世さんの手に触られているのを想像しながらすっかり勃ちあがった自身を上下に擦る。

 「く、ぜ…さん…」
 碧と呼ぶ声を思い出す。
 優しく抱くんだろうか…。
 後ろまで疼いてくる。
 男に抱かれるのが好きなわけでもないけれど気持ちイイのは好きだ。 
 「んっ…」
 Tシャツをめくり自分で乳首まで刺激してしまう。
 「…ぜ…さ、…ん…」

 久世さんのベッドでこんな事して…。
 そう思えばますます背徳感が増し感じてしまう。
 身体を丸くして自分で胸まで触って何してんだと思いながらも止められない。
 抱かれたい…。
 自分からそう思ったのは初めてだった。
 滅茶苦茶にして欲しい。
 衝かれたい。

 「んっ…あ…っ」
 久世さんに抱かれている所を思い浮かべながら手を動かすピッチを早める。
 「あ、あぁ…っ」
 びくびくと身体を震わせ白濁を吐き出した。
 「…あ~あ……」
 久世さんに抱かれてるの想像してしちゃった…。
 自分の手に放ったものを見てがっくりしてしまう。
 そんな気なんて久世さんないのに…。
 ここに置いてもらってるだけでもありがたいのに…。

 「……すみません…」
 思わず小さく謝ってしまう。
 でも想像だけならいいよな…。
 別に本当に、真面目に本気で望まないなら…。
 「…早くアパート探さないと…」
 このままここにいたらダメかもしれない。
 きっと出ていきたくなくなるかもしれない。
 碧はベッドを降り、手を洗うとまたPCの前に座った。
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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