「シーナ、お昼いいよ」
「はい!じゃ行ってきます」
店長に声をかけられ碧は店を出ると久世さんに電話をかける。
『ちょっとしたら出る。先に入ってて』
「…うん」
碧は久世の言った店に一人で入ってあとで連れが来るのでと告げると席に案内された。
五分ほど待つと久世さんが店に入ってきたのが見えた。
どう見たってやっぱり碧と同席って合わない気がするけど、久世さんはきょろりと店を見渡し碧を見つけると真っ直ぐに向かってきた。
「悪い。ちょっと時間かかった」
「…いえ、全然」
「日替わりランチでいい?」
「…はい…。…ホント…すみません…」
碧が小さくなって言うと久世さんがくすりと笑っている。
「今日の帰りもこの間と同じ時間かな?」
「大体は…。レジ締めでそんな遅くならなければ」
朝も帰りも乗せてもらって、ホント世話になりっぱなしだ。
どうやって返したらいいのだろう?
体で返せるなら返すのに…ってそれは自分がして欲しいだけか。
ランチ二つ、と久世さんが店の人に告げるのでさえもスマートに見えてしまう。
碧は顔を俯けた。
優しくしないでほしい、と思いつつそれが嬉しい。
どうしたらいいのだろう?
…といったってもう十分に惹かれているのは分かっている。なにしろ昨日は久世さんのベッドで自分が抱かれるのを思いながら一人でしたんだから。
「碧?」
「え…あ、…な、何?」
「食後、コーヒーでいいの?」
「あ、はいっ」
思わずイケナイ事を思い出して頬がかっと熱くなってくる。
もうあの火事の時から久世さんは特別になってしまっていた。
これで好きになるなという方が無理だ。
お見合いも相手もいる人に何を思っているのか。
ダメだと思ってもこんな風に気遣われて優しくされたら無理だ。
やっぱり久世さんちを早く出るべきだと思う。でも出てもきっと毎朝銀行で久世さんを見ればきっと釘付けになるんだ。
「あ、ちょっとごめん」
「どうぞ」
久世さんの携帯が鳴って久世さんが電話に出た。
「はい、お疲れ様です…。ああ、それは…」
久世さんの話す声と電話を持つ手が大きいのに、目を惹かれる。
同じ男から見てもカッコイイ…。
ふと周りを見てみれば女の人何人かが久世さんをちらちらと見ているのが分かった。
だよな…。分かる…。
碧だって見惚れたくなるんだから。
「ん?」
電話を終えた久世さんがじっと凝視していた碧に首を傾げた。
「あ、な、なんでも…」
ちょっと慌ててしまった。見惚れてましたなんて言えるはずない。
「具合悪いとかない?」
「ないです。俺、ホント風邪とかひかないんだけど…」
「精神的に疲弊していたんだろう。体をちゃんと休めろ、という事だったんだよ。…今は?無理とかしてることないか?」
「…ない…です。久世さん…こそ…俺いて邪魔じゃない…?」
「全然。部屋は綺麗だし、食事は出てくるし、かえって悪いなと思うよ。別にそれを望んで声をかけたんじゃないのに」
碧は首を横に振った。
「そんなの…全然。…というか結婚したら普通にそうなると思うけど?」
わざと自分に言い聞かせるように言ってみる。…自虐的だ。
「そうかなぁ~…?」
久世さんが頭を捻っていた。
「どうもピンとこないな…」
そして苦笑を漏らす。
「とにかく碧は焦らなくていいから。俺はかなり助かっているし」
「…そう言ってもらえると…嬉しいけど…」
でも一人で久世さんに触られてるの想像しながらシタんだよ?
…と心の中で付け加える。そんなの普通キモイだろう。
まさかそんな事告げるなんて勿論しないけど。
「ご馳走様でした…」
「うん。今日帰りに買い物していこうか?弁当作れるなら作っていっていいから」
「で、も…」
「その方が俺も安心する。なんかどうも気になって仕方ないから」
…またそんな事言うんだ。
碧は顔を俯けた。
「………優しくしないで、と言った…。…碧はこんな押し付けがましいのは嫌なのか?」
「ち、がっ!」
この間思わず呟いたの、ちゃんと聞こえていたんだ!
「押し付けがましいなんて思ってないっ!」
好きになっちゃいそうだから言ったんだ。
「だったら気にしなくていい」
そうじゃない…そうじゃないんだ…。
碧は久世さんの優しさと気遣いに泣きたい気分になってきた。
-----------------------
続きに拍手コメお返事です^^
S様
あちらのほうも…ありがとうございます~(><)
お名前は笑っちゃいましたが^^;
あれでも一応少しはえち足したのよ(もっと少なかった 笑)
ありがとうございます~(T^T)
出だし…いいんですか?私、分からなくて^^;
こちらの方は…
え~?オバ様そうだったんですか~?(--;)
でも絶対足りないよね…
そして役所関係はホント絶対大変だよね…
そこ等辺スルーしてますけど^^;
社長はなかなか出てきます(笑)
いつもありがとうございます~^^
yr様
碧ちゃんでいいですよ~(笑)
可愛いありがとうございます~^^
二人の幸せまではもうちょっとかかります~
お待ちくださいね~(^m^)
ありがとうございます~^^
SW様
もう少しでちゃんと社長が出てきます~(笑)
ですよね~久世はメロメロな感じ。
分かってないのは本人達だけ?^^;
社長、もちょっとで出てくるけど
…どうかな^^;
なぜかアホー社長になってるような…
どうしていつもアホ~な感じになってしまうのか
自分でも謎です(--;)
ありがとうございます~^^
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学