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熱視線 協奏曲~コンチェルト~10

 腕につけた腕時計は誕生日にと怜がくれたものだった。
 それを眺めては顔がにやけて、首に下がっている指輪を触ってにやける。
 「なぁ、卒業式俺行っていい?」
 「え?」
 「だって一応俺、親からお前預かってる身だし~、いいと思わない?」
 「………うん」
 明羅は頷いた。
 「でも元々宗の父兄なんだからいいんじゃない?」
 「え~。宗のじゃなくて」
 怜が嫌そうな顔をしている。
 「……お前今まで入学卒業は?」
 「親?小学校の時はお母さんいた。あとはない、かな?木田さん来たりとか」
 よしよしと怜が明羅の頭を撫でた。
 「しかし卒業式後に友達とどこか行ったりとかないのか?」
 「誘われは一応したけど、俺、別に行かなくていいし。友達って程でもないから」
 「……お前本当、俺よりひどいな」
 「……そうだね。友達って…宗くらい?」
 「宗は違うだろ」
 「え?」
 「あいつの認識では多分お前は兄嫁だ」
 「な……」
 ぼわっと明羅の顔が赤くなる。
 「ほんっと可愛いねぇ…明羅くん」
 「お、俺、そっち行ってる」
 そそくさとパソコン部屋に向かう明羅の後ろで怜が笑っていた。


 怜が言った通りに色々と細かなものから大きなものまで曲の依頼が舞い込むようになっていた。
 すでに父のオケの告知はされていて、CMまで流れて、怜の顔を大きく取り上げられていた。
 明羅まで名前を並んで上げられれば恐ろしくてテレビは見ない事にしていた。
 学校がなくてよかった、とほっとするしかない。
 
 
 「桐生」
 宗がクラスに顔を出してきた
 「何?」
 教室がかなり卒業式でかなりざわついている。その教室から廊下に出た。
 「おまえ馬鹿?」
 「え?何が?」
 宗が頭を抱えていた。
 「なんで兄貴呼んだんだ?保護者席が凄いことになっているらしいぞ」
 「え?」
 「二階堂 怜がいるって。今テレビで宣伝しまくりだろが」
 「あ……テレビ見てなかったから気付かなかった」
 「今更何言っても遅いけどな。一応。あ、お前の名前も凄いことになってるから」
 じゃ、とそれだけ言って宗がクラスに戻って行った。


 宗の忠告通り、確かに凄いことになっていて、怜も明羅も写真取られまくりで、逃げ帰るように卒業式を慌しく終え帰った。
 

 高校が終わった。
 明羅は怜の車で感慨にふける。
 「学校、終わっちゃった」
 「…だな」
 「………怜さん所にずっといていい?」
 「いてもらわないと困るな」
 へへ、と明羅は笑った。
 「これからもよろしくお願いします」
 「これからもっと忙しくなるぞ。まぁ物珍しげに騒がれるのは今だけだろうが」 
 怜が明羅の頭を撫でた。
 「明羅のお父さんだけ先に日本に来るって?」
 「そうみたい。なんかテレビの取材とか雑誌の取材とかあるって。怜さんは?ないの?」
 「あるさ!お断りしてるが。ただ、明羅のお父さんと対談のやつは断れなかった。決定事項に勝手にさせられてた」
 「………ごめん」
 それはきっと父のせいだろう。
 「いいんだけど……恐怖だ。絶対お前も来いよ?っていうかお前の家でだからお前いなきゃおかしいよな」
 「あ、そうなの?」
 「………やっぱほそぼそとやってた方が煩わしくない」
 怜が憮然として言った。
 「世界クラスになるからこんなんだろう?よくお前の両親やってるよな」
 「そうだね…」
 人事のように会話する。
 「でも楽しみだ~…オケと合わされたらどうなるのかなぁ。オケがいい演奏してくれるといいんだけど」
 「……………」
 じとりと怜が明羅を見ていた。
 「何?」
 「いや、なんとなく…明羅くん、もしかして……恐そうだなぁと…」
 「何が?」
 「あの人達の子供でしょ…?耳は恐ろしくいいよな?」
 「まぁ」
 「……本当に俺でいいのかね…」
 怜が嘆息した。
 
 

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