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月からの甘い誘惑 33

 「こちらで構いませんか?」
 「ええ」
 ホテルの1階にある和食のダイニングに由紀乃さんをエスコートして連れて来た。

 由紀乃さんは出来た女性だ、とは思う。
 迎えに行くと言っても父がうるさいでしょうからとわざわざ電車で来て電車で帰る。
 確かに車で送っていったら頭取に絶対に捕まってしまうだろう。
 結婚を、なんて言われたら断るのはかなり困難だ。
 やはりどうやってでもお見合いなんて断るべきだったんだ。

 ふと時計を見ると7時前。
 もうそろそろ碧は店を締める位だろう。
 ……あれ…?
 思わず久世は窓際の席から外が見える所で、その外を凝視した。
 碧…?
 見間違いかと思ったが、いや、見間違えるはずはない、と久世が凝視していると背の高い男性と一緒だった。
 社長と、と言っていたがあれが社長か?
 元モデルと碧が言っていた通り垢抜けた美丈夫だ。
 どうやら二人らしい。

 久世は視線で碧の姿を追う。
 碧が歩いていたのはもうホテル内の敷地だからここのホテルに…?
 二人で…?
 いや、レストランだってここは有名だから何か食べに連れて来てもらったのだろう。

 「優眞さん?どうかなさった?」
 「え?ああ…いえ、なんでも」
 はっと目の前に由紀乃さんがいた事を思い出した。
 メニュー表を覗き会席料理のコースを頼む。
 …が、どうにも落ち着かない。
 碧がすぐそこにいるんだ。
 いや、いたからってどうなんだ、とは思うが…。
 どうにも…ああ、碧がウチに来てから丁度1週間になるのか。
 ずっと一緒にいるから気になるのか。

 「優眞さん?」
 「え…?ああ、なんでしょう?」
 「この間お会いした時に…あの…」
 「ええ」
 どことなくしどろもどろになる由紀乃さんに珍しいな、と思う。
 「幼馴染の…」
 「ああ、お隣にお住まいのと言った?」
 「ええ」

 そういえば由紀乃さんと一緒にいた男に睨まれたのだった。
 あいつはきっと由紀乃さんの事が好きなのだろう。
 だがそれに対して自分はなんとも思わないのだ。
 …かえってどうして由紀乃さんはここにいるのだろうか、と思ってしまう。

 「いいですね。幼馴染とか…俺は親が転勤族だったものでそういう幼馴染とかっていないんですよ。羨ましい」
 「……そうなんですか…?」
 「ええ、大学に入ってからようやく友人と呼べるような存在が出来ました。でもやはりどことなくよそよそしい感じですがね…。幼馴染といえば何を言わなくても小さい頃から一緒で分かり合えるような存在でしょう?」
 「…そう…かしら…?でも仰られるとおりに小さい頃は遊ぶのもずっと一緒でしたから、あの時の、という言葉だけでも物事が思い出せる事は多いですね」

 由紀乃さんの方はあの男を好きなわけではないのだろうか?
 …好きだったらお見合いしてこうして俺なんかといるわけないのか?
 どうにもこの女性がどう思っているのかなんて全然分からない。
 久世はそれよりも店内に新しく入ってくる客を気にした。もしかして碧が来るのではないかと思って…。
 だがホテル内にある他の店に行ったのかどうやらその気配はない。
 一階の和食店にいたとメールをしてみようかとも思ったが、それをしてどうするのか。
 自分は由紀乃さんと食事中で、碧は社長だという人とどこかで食事中なのだろうに。
 
 頭の中では碧の事を気にしながら、由紀乃さんの他愛もない話に相槌を打つ。
 頭取の手前、久世は自分から断る事はなかなか会社勤めとしては苦しい立場だ。由紀乃さんのほうから断ってはくれないだろうか、と思わず思ってしまうのだが、その由紀乃さんから誘われればこうして会うしかないのだ。
 会席料理で凝った作りの料理は少しずつ盛られ、そして時間をかけ一品ずつ運ばれてくる。

 由紀乃さんのおしゃべりにも付き合い、時間は結構長いものとなった。もうそろそろその時間も終わりかな、とか、碧がここにいるのなら電話して連れて帰ろうか、などと久世は頭の中では思ってしまっている。
 由紀乃さんはおっとりとした口調でおしゃべりといっても苦痛ではない。だからといって話す内容に興味があるかといえばそれほどでもないのだから、失礼に当たるとは思うのだが…。

 「この間優眞さんと一緒にいらした子…」
 「…子って…私と三つしか違わないのですが」
 「え?そうなの!?あら…とてもその…」
 「幼く見えますけれどね」
 「親戚の子なのかしら?」
 子、は直す気はないらしい。
 「親戚ではないですが、ちょっと訳ありで……」

 がたん!と久世は立ち上がった。
 「由紀乃さん、ちょっと席外します。すぐ戻ってきますので!」
 そう言い捨てて久世は慌てて店内を走りぬけホテルの外まで走った。
 「碧っ!」
 ずっと碧を見てから外ばかりを気にしていたのですぐに分かった。
 「久世…さん…?」
 「どうした!?」
 碧の格好は散々なものになっていた。
 
----------------
続きに拍手コメお返事です~^^

 
MR様
 久世…ここにいました(笑)
 酒はいかんですね~^^;
 …って私はそんな飲みませんけど(^m^)
 MRさんもですもんね^^;
 ありがとうございます~^^

AHN様
 一応がんばりました(^m^)
 あら…社長も味方が結構いそうですwwww
 ありがとうございます~^^

okw様
 確信犯ですよ~(笑)
 ちょっと刺激しないと進まないのでブッコミました(笑)
 でも未遂という甘っちょろさですけど(^m^)
 社長は押せば落ちる精神で来てますよ~^^b
 自信満々で嫌味ですね~(笑)
 ありがとうございます~^^

SW様
 やはり皆確信犯扱いwwww
 勿論でしょうけど~(笑)
 そうなの!わりと良いヤツでした~(^m^)
 何気にいい働きするので~(爆)
 胡散臭い、気にっていただけて(笑)
 アレ?今思ったけど社長に(笑)が多いな…。
 尚以来の多さだわ(^m^)
 ありがとうございます~^^

KRB様
 お忙しかったみたいですね(><)
 お疲れ様です~m(__)m
 でも今度はクリスマス、年末と
 お家が忙しい事になるのでは…^^;
 おいしいシチュですか~?(笑)
 ありがとうございます~^^
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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