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月からの甘い誘惑 35

 しばらくして久世さんが戻ってきて車の窓を叩いたのにキーロックを外すと久世さんが運転席に座った。
 「…っ!」
 ぐずぐずと鼻をならして泣いていた碧の顔を見て久世さんが一瞬固まる。
 そして碧の差し出したキーを受け取り、黙って手を伸ばすと後ろの後部座席のシートからティッシュの箱を取り碧に渡してくれた。
 「…すみ、ません」
 ひくひくと声が泣きしゃっくりを上げてしまう。
 みっともないと思うけれど自分で止めようがない。
 ティッシュで鼻を盛大にかみ、ほっとすると久世さんが手を伸ばしてきて碧の肩に触れた。
 びくりと思わず身体がびくついてしまった。

 「……されてない…?」
 「………?」
 ああ、強姦、って事か?男に強姦が使えるのかは知らないけれど。
 「されてない…」
 「…そうか…」
 ほっとしたような久世さんの低い声にまたじわりと涙腺が緩んでくる。
 だってこんな自分を心配してくれているのが分かる。
 「……っ」

 一所懸命こらえていたけどやっぱり嗚咽がもれてしまう。
 みっともないし久世さんに見られたくなくて顔を窓の方に向け、顔を手で覆うと久世さんが手をさらに伸ばしてきてぐっと碧の身体を引き寄せた。
 「…もう大丈夫だから」
 耳に久世さんの声が響いてくる。
 そういやもう何回目だ?久世さんの前で泣いてるの。
 火事の時に熱の時に…三回目だ。

 そしてそんな優しい言葉をかけられたら感極まって治まるものも治まらなくなる。
 久世さんの手が優しく碧の身体を宥めるようにポンポンと叩いてくれる。
 やっぱ赤ん坊と一緒か。
 でもいい。
 碧は甘えてもいいだろうか?今だけ…そう思いながらぐっと体重を久世さんに預けた。
 すると久世さんがさらにぎゅっと碧の肩を引き寄せてくれる。
 ほら…これだけでも幸せだ。
 碧の嗚咽が治まるまでしばらく久世さんはそうしてくれていた。

 「スミマセン…も…だいじょ…ぶ」
 そっと碧が久世さんから離れると久世さんはエンジンをかけて静かに車を出した。
 涙は止まったもののすんすんと鼻がなる。
 情けないな、恥ずかしいな、と思うけど、それも今更な気もしないでもない。
 なんかホントずっと久世さんには迷惑ばっかかけてる。

 「……由紀乃さん…いい、の…?」
 「ああ。いつも電車で帰るから。…気にしなくていい」
 …いつも電車?付き合ってるのに?
 でもお見合いでって言ってたから好きとかそういうのではないのかな…?
 もっと本当は聞きたい所だけど碧が口出しする所ではないし、聞きたくてそして聞きたくないというのが本音だ…。

 それ以降も車はずっと無言で、そのまま久世さんのマンションに到着する。
 車を降りると久世さんが碧の貰った荷物を持ってくれ、その久世さんの後ろを小さくなりながらついていった。
 服はもう着替えたからみすぼらしい事はないはず。
 泣いたせいで目は腫れぼったい気はするけどもう涙も止まっていた。
 エレベーターでも碧は俯いて小さくなる。
 ホント久世さんに申し訳なくて。
 これで好きとか言っても迷惑以外のなにものでもないのは断言できる。
 無言のまま久世さんの部屋に到着。
 玄関に入ってすぐ電気をつけると先に部屋に入った久世さんがくるりと碧に振り向いた。

 「…本当に大丈夫?」
 「……大丈夫」
 思わず顔を上げてしまって久世さんと視線が合ってしまった。
 思いのほか久世さんが真剣な眼差しで碧を見ていてドキッとしてしまう。
 「………」
 久世さんが確かめるように碧の顔を覗き込むと眉をほんの少し顰め、そして手を伸ばして碧の首筋にそっと触れてきたのに碧は思わずぎゅっと目を閉じた。

 何っ?
 さわりと久世さんの手が碧の首筋を撫で、そして離れた。
 「……シャワー先に行ってきなさい」
 「…あ、は、はいっ」
 服の入った袋を手渡されながら言われて碧は慌ててそれを受け取り、部屋に押し込むとばたばたと風呂場に向かった。
 ばばっと着ていたものを脱ぎ、さっさとシャワーを浴びる。

 でも本当にどうなるかと思ったけど、何もなくてよかった…。
 温かいお湯の出るシャワーにやっと安心出来た気がした。
 そして久世さんに今触れられた首筋を自分でも触ってみる。
 「…あっ!」
 風呂場の鏡でみたらそこにキスマークがついていた!
 あの時だ!と顔を背けた時にそういや社長に口をつけられていた事を思い出した。

 これを見たから久世さんは触れたのか!
 こんなの…久世さんに見られたんだ…。
 今更だって分かってる。
 けれど久世さんには見られたくはなかった。
 ボディソープでごしごしと洗ったって落ちるはずもない。
 消したいのに…消えない…。
 
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続きに拍手コメお返事です^^

 
USGちゃん様
 ヒーローです(老け顔ですがwwww)
 私もCP以外の絡みは苦手なので^^;
 滅多にないです。
 たまにはさせてみようかと思う事もありますが、
 …やっぱりできないです^^;
 ありがとうございます~^^

S様
 そうなの!実は久世の方がダメダメなのよ(笑)
 シャチョサーンは結構しつこい…かな…^^;
 でもないか…遊んでる…かな?(笑)
 ありがとうございます~^^

Kin様
 ありがとうございます~^^
 社長クセ強いですね(笑)
 でも何気にちょっとお気に入りだったり…
 なのでつい出番が多く…(^m^)
 気がお早い!(笑)でもそう言っていただけて
 嬉しいです////
 ありがとうございます~^^

mm3様
 無事でした~!勿論(笑)
 王子サマ(老けてるけどwwww)
 なんか可哀相だわね…(笑)
 さて…好き好きか健気に隠すのか(^m^)
 うーん…どっちだろ…?^^;
 どっちも…のような…?(笑)
 ありがとうございます~^^

nck様
 引越しはダメですか!
 …当たり前ですね(笑)
 引っ越したら終わっちゃう~^^;
 あと一歩、かな~?(^m^)
 ありがとうございます~^^
  

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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