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月からの甘い誘惑 40

 「いい!片付けは俺がするって!」
 作ってもらって食べさせてもらって置いてもらってるのに片付けもいいから、なんて許されるはずない!
 「いいよ。俺は今日は一日何もしないでぼうっとしてただけなんだから。碧は立ちっぱで仕事だったんだから」
 「そんなの平気!」
 押し問答のように流しの前で久世さんと洗い物の取り合いだ。碧が久世さんを押しやるようにして背中でぐいぐいと久世さんをブロックしながら押すとふっと久世さんの体重か消えて軽くなり、体勢を崩した。

 「っ!」
 「あ!」
 がんと衝撃は走ったけど痛くはない。
 恐る恐る目を開けてみたら久世さんがちゃんと碧を抱きかかえて転ばないように身体を押さえてくれていた。
 「あ…スミマセン…」
 「………いや…。じゃ…碧に任せる」
 久世さんは慌てたようにして碧を立たせるとそそくさといなくなってしまう。

 そんなに触るのヤなのかな…?
 思わず碧は顔を俯けた。
 さっきまでの誰かにご飯を作って待っててもらえるという嬉しい気持ちも入った複雑なほわほわした気持ちが急激にしぼんでしまう。
 迎えにも来てくれて、ご飯も一緒なのに…。
 黙ったまま食器を洗い片付けていく。
 そしてシャワーを貸してもらい、疲れたからもう寝るね、と久世さんにに言えばほっとしたような顔をされてしまう。

 碧は久世さんの事好きだけど…。
 久世さんはそんなに嫌なのかな…?
 だったら優しくしないでくれればいいのに。
 碧は久世さんのベッドの端で小さく丸まって布団を被った。
 久世さんのベッドはいつでも優しく碧を包んでくれる。
 それに泣きたくなってきてしまう。
 「………女々しい奴…」
 自分を罵り、碧は目を閉じた。

 それなのに久世さんは日曜日も欠伸を噛み殺しながら碧を送ってきてくれた。
 「……ありがとうございます…でも本当に俺帰りは電車で…」
 「いいと言ってる。…心配なだけなんだ。碧は気にしなくていい。俺がそうしたいからしてるだけだ」
 「……なんで…?」
 車を降りた窓から思わず碧は泣きそうに顔を歪めた。

 「碧?」
 「な、なんでもないっ!行ってきます!」
 思わず潤んだ目をぐいと拭って走って久世さんの車から離れた。
 なんであんな事言うんだよ?
 心配するとか!
 いや、久世さんからしたら碧は小さな子供なのか?
 だからあんな事言うの?
 ひな鳥だから?
 でもじゃあなんで触れるのは嫌なの?前は平気だったのに!
 「分かんないよ…」
 
 そんなぐじぐじになっていたって仕事は待ってくれはしない。
 おまけに日曜だから人も多い。
 さらに雑誌に掲載されたモデルが着用してて紹介されたもんだからさらにいつもよりもお客さんが多くてお昼休みをとったのは3時過ぎというハードさだった。

 それも朝自分で作った弁当をかき込むだけ。
 でも今日も出かけないという久世さんにも昨日は何も出来なかったからと弁当を置いてきた。
 食べてくれたかな…?
 そんな事を思いつい久世さんを思い出してたら携帯が鳴った。
 表示は社長で明日仕事が休みの碧に合わせて部屋を見せてくれるんだった!と慌てて電話に出た。

 「もしもし」
 『明日昼の1時に駅のタクシー乗り場近辺にいろ。そこまで迎えに行く』
 「…はい。分かりました」
 忙しいのか芹沢さんは用件を言うだけで電話は切れてしまった。
 そうだ…久世さんに言わないと…。
 でもまだそこに決めたわけでもないし…と往生際の悪い事を思ってしまう。

 だって久世さんが優しいんだ…。
 でも触るのは嫌がられてるんだ。
 どうしたらいいんだよ、と考え込みたい位だったのにシーナ!と店長に呼ばれて碧はさっさと店に戻るしかなかった。

 忙しかった店を出ればいつもの様に店のちょっと先に見慣れた久世さんの車が停まっていた。
 結局言うか言わないかも決まっていない。
 久世さんは明日仕事でいないし言わなくてもいいだろうか、とちょっとずるい考えを持ってしまう。
 こんなに碧は自分に言い訳してしまうんだ。
 だって…一緒にいたいと思うんだ。
 でも嫌がられたいわけじゃない。

 それを考えればさっさと久世さんちから出て行った方いいに決まってるのに、こうしてわざわざ迎えに来てくれるなんて優しい事されるからいい気になってしまいたくなるんだ。
 「すみません」
 助手席のドアを開けて碧が乗り込む。
 「お疲れさん。あ、昼弁当ありがとう。手作りの弁当なんて高校の時以来だ」
 くすくすと久世さんが楽しそうに笑っているのにまた気持ちがふわりと舞い上がってしまうんだ。
 
 
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続きに拍手コメお返事です^^

S様
 いや~!昨日のコメントには笑わさせていただきました!^^b
 そのまんま~~~~~!!!wwww
 そうそう!ってな感じで~
 公開したい(笑)
 シャチョサ~ンは色々頑張ります(笑)
 いや、頑張ってるわけじゃないんだけど^^;
 久世は悶々中でした!(爆笑)
 もうすぐ爆発(^m^)
 ありがとうございます~^^

名なし様
 はじめまして^^いらっしゃいませ~♪
 唯一だなんて…そんな^^;
 少しでも楽しんでいただけて
 癒しになっていただければ幸いです(><)
 素敵になってるといいのですが~…/////
 お褒めのお言葉、お気遣いも
 ありがとうございます~m(__)m
 名なし様も(スミマセン…お名前なかったので ^^;)
 寒いですし、お体にはお気をつけてくださいね(><)
 

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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