「碧……正直なところ自分が分からない」
キスに夢中になっていたけれど、久世さんが碧から唇を離してそう言い出した。
「碧の事は好きだ、…と思う。…ただ、男相手にが初めてで戸惑ってる」
正直で真面目な人だ…と碧は思わずくすりと笑ってしまう。
だって自分なんか一晩だけで寝てきた事ばっかりだったのに…。
「ここんとこ…の態度も…碧が嫌なんじゃなくて、自分が分からなくて…それでそれを碧が気にしていたならすまない」
碧はふるふると首を横に振った。
「ううん……嫌だって…思われてたんじゃなかったら…別にいい」
「…キスマークが気になって…苛立ってた…というのもある」
それが分かれば碧にはただ嬉しいと思うだけだ。
「久世さん…」
碧はぐいと自分から久世さんの首に抱きついた。
「…本当にされたのアレだけ…か?」
「うん…キスもされてない」
「そうか」
ほっとしたような久世さんの表情が嬉しい。
あれ…?
でもあの時はそうでも、実際には以前に社長とは一回は寝てるんだ…。
それ…言った方がいい…?
でもそれを言って久世さんに嫌われるのは嫌だ。
「碧は…」
久世さんが碧の頬をそっと撫でながら心配そうな表情を浮べる。
「俺は…その…久世さん…好き。俺…久世さんが俺の事嫌なんだと思って…これ以上嫌われるのいやだから…だから…」
「嫌うなんてない…。碧…」
碧の足の間にいる久世さんがぐいと腰を碧に押し付けてきた。
「抱きたい……。いい、か…?」
碧は直情的に訴えられ、顔を真っ赤にしながら何回も小さくこくこくと頷いた。
「でも…ホントに…?」
「ああ…。俺自身も驚きだが…碧は特別らしい…見ても触ってももっと欲しいしか浮かばない」
嬉しい!
絶対ないと思っていたのに!
「碧」
久世さんがキスしてきたのに碧も応える。
好きなんだ。
弱ってたから、よくしてもらったから…だからかな、と思ったけれど、そうじゃない。
久世さんが久世さんだからだ。
「俺…久世さんの事…好き…でいい…?」
「…碧」
シーナじゃなくて碧が似合ってるって言ってくれる久世さんが好きだ。
ちょっと強面だけど優しい久世さんが好き。
片付けをちょっとしないとこだって碧がここにいていい理由のようで好きなんだ。
何度も何度もキスする。
舌を絡めて貪るように。
夢のようだ…。
もう3週間一緒にいて…ただいるだけだったのに…こんなにもう碧の中は久世さんでいっぱいになってる。
久世さんからもはっきりと言われたわけじゃないけど、でも好きだと、そしてこうして碧に触れても萎えないでしたいと思ってもらえるのがもうそれだけで破格だ。
だってそんなの絶対ないと思ってたから…。
今週に入ってからは触るのも嫌なんだと思ってたのに…。
つけられたキスマークを気にしてだったなんて!
そうしたら社長のおかげか?
アレがなかったらもしかしたら久世さんとはそのままだったのかもしれない。
その前の火事だって!火事がなかったらこんなに久世さんを好きになるなんてなかったのかも。
まるで何もかもがこうなるのが必然であったように思えてくる。
「あっ…」
久世さんに全部脱がされて久世さんも自分の着てたのを脱いだ。
やっぱり萎えてなくて…大きいままだ…。
しかも…見慣れた自分のと随分違う気がする…。
「…デカ…」
思わずポツリと口に出てしまうと久世さんがくすりと笑った。
「なるべく痛くないようにする…」
入るのかコレ?とか思ってちょっと遠慮したくなる気もするけど、やっぱり欲しいとも思ってしまう。
「んんっ」
つんと立ち上がってた乳首を指で抓られれば思わず声が出てしまう。
「感じる…?」
「んっ」
小さく頷く。
とにかくもう久世さんに触られてるってだけでイきそうなんだ…。
なんかどこもかしこも久世さんを感じる。
体温も息遣いも手も熱も。
「久世さ…んっ…」
声が上擦ってしまう。
「好き……」
ずっと押さえていた想いが出せるのが嬉しくて何度も言ってしまう。
引かれると思ってたのに。拒否られると思ってたのに。
すると久世さんがさらに優しく何度もキスしてくれる。
「碧……」
キスも優しい。
なんでこんなに気持ちいいんだろう?
今まで寝た相手とキスしたって別に気持ちイイなんて思わなかったのに。
好きな人とのキスが特別なんて初めて知った事だった。
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