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2013 Christmas Live 8

 タクシーを捕まえて尚と乗り込みホテルに向かった。

 初めて尚が本当の友達といる所を見た。
 学校でも尚は友達も知り合いも多いけれど、本当の友達とはこんなに違ったのか…と遥冬は初めて見る尚の顔に嬉しさを滲ませていた。
 「岳斗が初めて!よかった!ってさ!」
 尚がはしゃぐように言ったのにぴき、っと遥冬の額に小さく怒りマークが浮かぶ。
 「…………………よかったね」
 「ああ!ホントに!マジで!今まで散々だったからな~!」
 うっくっく!と尚が嬉しそうに笑っている。

 岳斗くんが尚の特別なのは遥冬だって分かっているけど…。
 「岳斗変わってねぇなぁ~」
 「……そうだね、可愛いまんまだった」
 「まぁな~」
 遥冬の不機嫌に気付かない尚に怒りマークがさらに大きくなった。
 ここはタクシーの中だから堪えないと。

 大体ずっと岳斗が岳斗がって…なんなんだ?
 ……面白くない!

 折角あんな演奏…きっと高校の頃はあんな風だったんだ、とちょっと感動して少しでも尚の事が分かったようで嬉しかったのに。
 「相変わらず派手に号泣するし…変わんねぇな…」
 「………………」
 まだ言うのか!尚は気付かないのか!?岳斗が岳斗がと言う尚にイライラしてるのに。

 「………千尋っていう人も孝明っていう人もかっこいいね。千波さんは綺麗だし」
 つんとして遥冬が小さく言えば尚が途端に慌て出した。
 「遥冬さん?あの…千尋の方よくなったとか…ないですよね?」
 「さぁね」
 「ちょ…なんで…?」
 なんでじゃないだろ!

 「お客さん、どうぞ」
 「ありがとう」
 遥冬がタクシー代を払いさっさとタクシーを降りる。
 「ちょ…遥冬」
 「尚、ホテルのチェックイン」
 「ああ」
 フロントを指差せば尚がしぶしぶフロントに向かう。

 ほんと…尚は全然分かってないのかな?ちょっとの事でも面白くないのに。岳斗くんの事は遥冬はどうしても気にしてしまうのに。
 今日実際に岳斗くんが千尋っていう人と一緒にいる所を見て、岳斗くんが千尋って人が好きっていうのはよく分かったけど。 

 …でもいいな…と羨ましかった。岳斗くんだけでなくて友達というのが…。好きという関係じゃなくて、友達という関係の3人が羨ましかった…。

 「遥冬」
 こっち、と呼ばれてホテルのベルボーイに案内されて部屋に向かう。
 部屋はツインでちょっと安心した。尚がダブルでもいいなんて言ってたけど、ダブルの部屋で説明とかだったらどんな顔すればいいのか悩んだ所だ。いや…クリスマスイブに男二人でも相当変か…?
 その上…部屋の説明を受けるけど…本当にいいのか?と疑問符が出て尚を見た。 
 「あの…尚?この部屋立派だよ?」
 説明を終えたベルボーイがいなくなって部屋に二人だけになり声をかければ尚が渇いた笑いを浮かべてた。

 「………だな。安いとこでいいって言ったんだけど…」
 だらだらと尚も焦っているらしい。
 「やばいな…ヤツに借りを作るのは怖い気がする」
 うーん…と尚が呻っている。
 「ま、いっか。そんときゃそん時だ。遥冬さんお風呂行く?」
 でも尚はすぐにけろっとして遥冬に手を伸ばして誘ってきたが、遥冬はその手をぺしっと払った。

 「行かない、僕は帰ろうかな」
 「は?何言ってんの?」
 「だって…尚は岳斗が岳斗が岳斗が…ってずっと岳斗くんの事ばっかりだ!孝明って人も言ってたけど、やっぱり尚は岳斗くんが…」
 「ないです!何言ってんだ?」
 「…尚は全然分かってない」
 「そう……?遥冬も分かってないと思うけど…?……今日のギター誉められたのはマジで嬉しかったんだ。今まで岳斗にはダメ出ししかされてねぇんだ。でも今日のはやっぱ特別だったから……遥冬…最後の曲…俺が歌ってるわけじゃねぇけど…俺はいつでもそう思って………聞こえた?」 

 最後の曲…。欲しいと…切ない歌詞と曲にじんとした…。尚のギターが綺麗に音を鳴らして…。

 「………聞こえた」
 そうだ…ギターを弾いてる間…ずっと尚は遥冬を見てくれていた。
 …そうだ…岳斗くんは見ていなかった…。
 ずっと遥冬かギターだけを見ていた…。
 …そっか…。
 遥冬は満足してちょっと顔を俯けた。

 「尚……かっこよかった……高校の時もあんな感じだったの?」
 「まぁ…今日は俺の名前は呼ばれなかったけど?高校ん時は一応呼ばれて騒がれた。…嘘じゃねぇぞ?」
 「……嘘だなんて思わないけど。………なんで僕は同じ場所にいなかったんだろう」
 高校が一緒だったら尚と同じ時間を共有できたのだろうか?

 「高校ん時?……ばぁか…。いいんだよ、そんなの…これから先はずっと一緒なんだから」
 尚は簡単に言ってくれるけど、遥冬がその言葉をどれ位嬉しいと思っているかなんて分かってないだろう。
 「尚……嬉しかったんだ…尚の大事な友達に紹介っていうのが…」 
 「当然だろ。岳斗の事は勿論遥冬は知ってるけどな。千尋と孝明は全然帰ってこねぇし!……遥冬…分かった?岳斗を可愛いとは思う。けど!岳斗は千尋あっての岳斗なんだ。俺が全部欲しいと思うのは遥冬だけなんだけど?」
 尚の手が遥冬の頬を撫で、唇を指で伝う。

 「………うん……尚が…見てくれてた…のは、さっき気付いた…そして岳斗くんが千尋って人が大好きなのも…凄くよくわかった」
 「だろ?ずっとだぞ!ずっと!高校ン時から!いや~…あの千尋のどこがいいのか…」
 「……ちょっと分かるけど?」
 「え!?なにが?どこが!?」

 「会話聞いてなかった?岳斗くんは仕事でわりといつも一緒で千尋って人の演奏だけを聞けてないって言ってた。だから千尋って人は岳斗くんの為だけに演奏したんでしょ?そういう事されたら嬉しいに決まってる」
 「……………遥冬さんは?…俺は遥冬だけを想って弾いたんだけど…?」
 「うん……分かったよ………嬉しいに決まってる。………尚?いいけどさっきからキスの一つもないけど?」
 すぐに尚がくすっと笑いながら唇を重ねてきた。キスを交わせば遥冬の中にライブでの尚の視線を思い出し、さらに特別なライブの興奮がまだ残っていてすぐに尚が欲しくなってしまう。

 尚がずっと遥冬だけを見ていてくれた…。岳斗くんがいても、だ。それが分かればもう止まれない。
 ずっとずっと岳斗くんがいなくなった後でさえも遥冬はほんの少しだけ心の奥に燻りは残っていた。なんといっても尚がキスまでしたと言ったんだから。いくら何でもないと言ったって気にするに決まっている!
 …もしかして遥冬がずっとそう思っていた事を尚は気付いてた…?
 だから急に東京に行く、なんて尚は言い出したのか…?

 「…風呂、後な?」
 唇をほんの少し離して尚が囁くのに遥冬が頷く間もなく広いベッドに押し倒された。
 
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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