碧は何がご機嫌なのかずっと顔が笑顔だ。
まったくこっちは気が気じゃなくて仕方なかったのに!
あの社長は絶対碧の事を狙っているんだ。
いや…寝た事がある…のか…?
碧は酔っ払ってるから顔を真っ赤にして無邪気だ。
「久世さ~ん…」
くいくいと運転席に座る久世の袖口を引っ張ってくるのが可愛い。
可愛いけど、もうずっとあの芹沢っていう碧の会社の社長の言葉が頭の中をぐるぐると回っている。
腰のホクロ…。
「……車出すぞ?」
「は~い!」
何が楽しいのかくすくすと碧がずっと笑っている。
「久世さん…」
車を出すと碧が頭をわざわざ久世の方に倒してきて体を密着させてきた。
車に乗った途端暑いと言って碧は上着を脱いでシャツをひっぱりだしていたので、体を久世の運転席に伸ばしていると、わき腹が少しばかり見えた。
腰のホクロ…。
気になって気になって仕方ない。
夜の車の中で光りは乏しい。
それでも碧の肌の白さが浮いて見えるのに視線が何度も碧のわき腹を捕らえてしまう。
交通量ももう少なくなっているから多少余所見しても大丈夫だったからよかったが…。
どうにも運転してても腰のホクロが呪文のように頭を巡るのに確かめた方が早い、と久世はどこか人目のつかないような場所と運転しながら車を停められる場所を探した。
家までだってさほど時間はかからないだろうにもう手を伸ばせば確認できる状況に待っていられないくらい気持ちが焦っていた。
…でもそれで碧の腰にホクロがあったら…?
いや、もしあったとしてもきっとこの間見たんだ。
キスマークの事まで思い出してきてまた腹立だしくなってくる。
この先住宅が切れ、工場の駐車場があったな、と久世はスピードを上げ少々乱暴な運転で勝手に駐車場内に車を入れた。車は工場の社用車のみしか停まっていないようで明かりもない。あるのは月の明かりのみだ。
「久世さん?」
酔っていても意識はちゃんとあるらしい、車を停めた久世に碧がどうしたの?という顔で見上げてきた。
「碧…ちょっと」
自分のシートベルトを外し、碧のシートベルトも外して、シートを倒し、碧の体を助手席にひっくり返すようにしてうつ伏せにした。
「な、何?ど、どうしたの…?」
碧の背中のシャツをまくる。月明かりが碧の肌を青く浮き上がらせたがよく見えない。
手を前に回して碧のベルトをかちゃかちゃと外した。
「く、久世さ…ん…?」
ウェストを緩め、ちょっとズボンを下げ腰の下の部分が見えた。
………ある。
尻からほんの少し上に大きいというほどでもないほくろがあった。
「ひゃっ」
思わずそこを撫でると碧が声をあげた。
「な、なにっ!?…ど、ど、…どうした…の…?」
「碧……社長に…この間……服は脱がせられたのか…?」
「さ、さ、されてないっ!」
…じゃあなんでここのホクロを知っているんだ?
久世は碧のそこに唇を這わせ、舌で舐めてからきゅっと吸い上げた。
「あ、あっ!」
碧がうつ伏せのままシートに掴まり声をあげる。
つっと舌で碧の背中を舐めあげると碧が体を震わせた。
「この間…脱がせられてない?」
「ないってば!ボタン飛んだのも社長蹴り上げて逃げてからだし、そのまま逃げたもん!」
「…じゃあなんでここにある碧のホクロ知っているんだ…?」
声が低くなってしまったからか碧がびくっと体をひくつかせた。
「ほ、ほくろ…?」
「そう…ここに…」
きゅっともう一度唇を這わせた。
「腰のホクロは見たか?と聞かれた」
「そ…そんな……し、知らないっ」
「知らないはずないだろう」
「や!……い、わないっ」
「碧」
碧はぎっちりとシートを掴んで顔を伏せ首を激しく左右に振っていた。
言わないって事はやっぱりそう言う事なのか…?
「碧……社長…が好き…なのか…?」
「ない!!!」
速攻で碧が否定したのに目を見開いた。
「好きだった…のか?」
「ない!」
過去でもない…?
「なんで?俺…好きなの久世さんだ……」
「じゃあ…どうして……」
「言わない!久世さんに嫌われたくない!……絶対…」
嫌う?そんな事ありえないのに。
「嫌いになんかならない」
嫉妬で狂いそうにはなるが。
あの男も碧を知っているのか…?
くそ!
それが分かったとしたってもう碧を離す事なんて出来そうにない。
「碧」
碧の背中にキスを落とす。だめだ…抑えられそうにない。
テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学