「じゃあ、帰りも迎えにくるけど…本当に大丈夫か…?支障ないか…?」
「だ、大丈夫」
日曜日だけど碧は仕事だ。久世さんは休みだけどやっぱり車で碧を店まで送ってきてくれて心配そうに何度も質問を繰り返す。
正直ちょっとだけ腰はだるい。
けどそれは全然嬉しい事で、そして車での昨日の夜の事を思い出してしまうとなんとなく視線が彷徨ってしまう。
まだ日が明るいからいいけど、月の光りの下の車の中で昨日はイタシテしまったわけで、思い出すと身体が疼いてしまいそうだ。
だって…運転席で久世さんに跨って…。
ぷるぷると碧が頭をふると久世さんが碧の頭をぐいと引き寄せた。
「何?昨日の思い出しているのか?」
「ち、ち、ち、ち、…がうっ」
久世さんに耳元で囁かれて碧の顔が真っ赤になると久世さんがくっくっと笑っていた。
「俺は思い出すけど?碧の白い身体が月の光りに照らされて…」
「わーっ!」
今から店なのに!ばくばくと心臓が大きく鳴っている。
「い、いって、きますっ」
碧は慌ててバタンと車から降りると久世さんが笑っている。碧をからかっているんだ!
「いってらっしゃい。じゃ、帰りな?」
「……うん」
へへ…とこそばゆい気持ちになる。
碧の過去を暴露したのに久世さんに呆れられなかった。それに安心した。
「碧」
「うん?何?」
久世さんに呼ばれて開いている車の窓から顔を突っ込んだ。
「……由紀乃さんの事は断ってくる」
「………え…」
嘘…。ホントに…?
「断るというか、俺からだとあちらに傷がつくから、断ってくれと言ってくるよ。……ちゃんと碧の事を本気で考えている。本当はきちんと断って綺麗にしてから碧に手を出そうと思っていたんだが、昨日フライングしてしまった」
久世さんが苦笑を漏らした。
え…?
じゃあ、ずっとキスもしなかったのって…ちゃんとしてから、って思ってたからって事?
「で、でも…あの…頭取の…って…」
「好きでもないのに一緒になるなんて出来ない。俺が好きなのは碧だ」
かぁっと碧は茹蛸のように真っ赤になる。
「ず、ず、ずるい!なんで…今、ここでそんな事言うのっ!」
今から仕事なのに!…顔が変な事になってしまいそうだ…。
「悪い」
くくっと久世さんが笑っていた。
「そういう事だ。じゃ、仕事がんばって……身体辛くしてるの俺だけど…」
「そ、それは別に!いい…けどっ!……い、ってきますっ」
そんな事言われるなんて思ってもなかった。久世さんがちゃんと考えて、と思ってたなんて知らなかった。
身体はだるいのに碧は走って店に向かった。
顔が熱い。
本気でって…まさか。
だって全然碧とは似合いそうもない人なのに。
碧とのお似合い具合でいったら社長の方が合ってるって分かる。
派手で軽めな感じで…。
久世さんはエリートなのに…碧なんかでいいのだろうか…?
でも…好きだ。
似合ってなくたってなんだって久世さんの事は好きなんだ。
抱かれれば嬉しいし、今みたいな事言われちゃったら身体が蕩けてしまいそうに嬉しい。
…けど…ホントにいいの…?
久世さんの将来潰しちゃわないのかな…?
碧の為に久世さんの先がなくなるのは嫌だ。
好きだよ。好きだけど…。一緒にいられればいいけど。
将来の事を考えれば不安になってくる。
それでいい?間違ってない…?
碧はいい。間違ってないから。でも久世さんは…?
今だけでいいならいいけど…お見合いを断るって、頭取の娘さんを断るって…。それって久世さんにとっていいの?
嬉しい反面考えてしまう。
だって…。
昨日のパーティーでも久世さんは社長連中の中にいたって堂々としていた。碧は人形だったけど、久世さんは違う。
でもそんな事を思っているのは心の表面だ。イイコを演じている碧の心の表面。
本当の心の奥底には歓喜が湧いている。
あの人じゃなくて碧を選んでくれた、と。
金も地位もなにもなく、女ですらもないただの碧を久世さんは選んでくれたんだと。
火事で全部なくした。けれどその代わりに今まで知らなかった歓喜を久世さんが全部与えてくれる。
心が満ちるのは初めてだった。
こんなにこんなに…碧の中が久世さんだけになっているんだ。
怖いくらいに。
それでもいいの?
久世さんが嫉妬に狂ってる、なんて言ってたけど、そんなの碧はとっくになっている。
由紀乃さんにこの間も会って浮かんだのはあなたの知らない久世さんを自分は知っているという優越感だ。
碧はこんなに汚い気持ちなのに…。
それでもいいのだろうか…?
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も一度…^^;
あけましておめでとうございます~^^
今年もどうぞよろしくお願い致します~m(__)m
年末から年始にかけて、
拍手コメ、メールフォームいただいた分のお返事を
前記事コメント欄開けて書きました~^^
お心当たりの方はチェックしてみてくださいね~^^/
ありがとうございます~m(__)m
それとギャラリーにおきわさんからいただいた
秀邦 5、6、7と 碧プラスしました^^
是非ご覧になってみてください~(^m^)
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