はのんのBL部屋

　「どこ行く？」
　「トイレ！」
　碧が乾杯を終え早々に立ち上がると社長が碧の腕を掴んだ。
　それを振り払いトイレに向かい、個室に入って電話をかけた。
　「久世さん？」
　『どうした？まだ始まったばかりくらいだろう？』
　「うん…あのね…来たら、社長いた」

　『………………分かった』
　久世さんの声が低くなったのに碧が肩を竦ませる。
　『とにかく！飲みすぎるな！触らせるな！』
　すでにあちこち触られてます…とは言えない。
　「…触られたら…久世さん…どうするの…？」
　『どうしようか？…ウチに碧を閉じ込めておこうかな』
　それならそれでも別に碧はいいのだけど。
　なんか嫉妬してもらえるのが嬉しいなんて変わっているのかな…？

　そういや今こうして久世さんといられるのって社長がちょっかいかけてきたからで、ナニゲに感謝しなきゃいけないのかもしれない。
　『とにかくすぐ行く』
　「え？いいよ？大丈夫」
　『気が気じゃないから。とにかく碧、気をつける事！』
　「うん」

　へへと思わず笑ってしまう。だってやっぱりそんなに気にしてもらえたら嬉しいし！
　久世さんがすぐ来てくれるらしいのにも思わず顔が笑ったまま席に戻った。
　今日バイト休みのやつ等も皆出てきててみんなヤローばかりの集まりだ。
　彼女がどうの、って話に自然に向かっていくけど、そんな間も社長との攻防が続く。

　「シーナ、そんな嫉妬深い男はやめた方がいいぞ？」
　「余計なお世話です」
　さすがに大きな声では言えない事でぼそぼそと隣で酒を飲みながら社長が言ってくるのに碧が返す。
　「俺の所にくれば束縛はないし」
　「いいの。久世さんにだったら束縛された方いいから」
　「………変わったやつだな」
　「だから放っておいてください」
　「たまには遊んでも」
　「遊びません」

　やっぱり社長はゲーム感覚なのだろうと思う。本気になったら絶対違う。
　今の碧がそうだ。
　一人でいいし、一人でありたいと思う。
　久世さん来たかな…？と店の方が気になってしまうが、座敷であまり店を窺い見る事が出来ないのが残念だ。もう早く終わらないかな～とばかり思ってしまう。

　「シーナ？」
　社長が碧を睨んでいた。
　「……あの男が来るのか？」
　「うん」
　皆もう酒が回って誰も碧と社長の事なんて気にしていないようだった。はじめのうちはちらちらと見られていたけど。…何人かはそういう目で社長との事を窺い見てたって事なんだと改めて再認識してしまった。
　今までは全然気にした事なかったし、今だって碧は別に社長の事なんか何とも思ってもないんだけど！

　ちっと社長が舌打ちするのに碧が目を見開いた。
　いつも余裕でからかうような感じばっかりだったのに…。
　「……本気なのか？」
　「本気だよ？社長も本気の相手探したら？…全然違うんだよ…」
　碧がうっすらと笑みを浮べると社長は苦々しい表情を露わに出す。こういうのも珍しい。
　「そんなのはいらん」
　「………かわいそ」

　ぷぷと笑いながら碧が言うとまた社長に睨まれた。でもそんなの全然平気だ。
　お開きになって二次会行くぞ～と騒いでいるやつ等の一番最後から碧がついていく。きょろりと店を見渡して久世さんを探した。
　結構人が入っていて中々見つけられなくていたけど、すぐに通路横から久世さんが姿を見せた。
　「…何もなかったか？」
　「ないよ」
　本当か？と久世さんの目がまた胡乱そうに見ている。

　「シーナ！」
　外から呼ばれて碧は外に出る。久世さんはその間に会計をしていた。
　「俺二次会行かないから！」
　シーナさんも行きましょうよと誘われるのを断る。
　久世さんがすぐ傍にいるのに行くわけない。
　え～、とか言われながらもじゃあね～！と手を振れば皆ぞろぞろとネオンの光る方に消えていった。

　ただ碧の傍には社長が残っていた。
　「社長？行かないの？」
　「…………呼び方ももうずっと社長ばかりだ」
　「だって社長でしょ？」
　「碧」

　そこに久世さんの声が聞こえてぱっと碧は振り向くと思わず顔が破顔してしまう。
　抱きつきたいなぁと思うけれど、さすがに酔っ払いばかりとはいえ、人の目がある所で男が男に抱きついちゃダメだろう。
　…と思ったのに久世さんはぐっと碧を抱き寄せるように肩をつかんできた。
　「…帰るぞ」
　そう言いながら目の前にいる社長を久世さんが睨んでいた。
　
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続きに拍手コメお返事です～^^
　

テーマ : 自作BL小説
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