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月からの甘い誘惑 番外編4

 「散らかっているぞ」
 食事を終え、そのまま自分のマンションに遼を連れ帰ってきた。
 ……………警察に行かれては困るからだ!
 …なんてそんな事も思っていない気もするが…。

 洸生の部屋のどこに行ってもあちこちに書きかけの紙が散乱している。
 どこでデザインが浮かぶか分からないからどこにでもすぐ描ける様に紙と筆記用具を置いてあるのだ。
 「………これって服のデザイン?」
 涼がその散乱した一枚を手に取って眺めていた。
 「そうだ」
 「………すごい…。……ねぇ、もしかして俺着てるこれのデザインも?」
 「それはそうだったかな…?3人デザイナーはいるが」
 「へぇ…」

 遼は興味深そうに洸生の描いたあちこちの紙を見ている。
 しかし、…と洸生は自分の部屋にいる他人の存在に不思議な感覚だ。
 なにしろ自分のマンションの部屋に人を入れたのは初めてだ。
 まぁ、コイツはうるさく騒ぐわけでもないしそこはまだいい。
 シーナのほうがよほどうるさい位だ。

 この間のパーティーでシーナに考えたフォーマルではこいつには合わないな…とふっと頭にデザインが出たのでネクタイを外している途中だったがすぐに描きとめる。
 さらさらと着替えも中途半端で立ったまま描き始めた洸生にそっと遼が近づいて手元を覗きこんできた。
 広いリビングのボードの上だ。
 描いている間中遼は黙っている。
 ここで声を出されたら怒るところだが遼は声を出さなかった。

 落ち着いたシックなフォーマル。ウェストは細め。体の線を見せて、でもきっちりと硬くボタンは多めに。ストイックでエロくだ。
 ふむ…と自分でも満足な出来に頷いた。
 じっと遼が黙って洸生の手元を覗き込んでいる。
 「お前に合いそうだ」
 「え?」
 声を出したらぱっと遼が顔を上げ、洸生と視線を合わせた。
 「これ、いいだろう?」
 同意を求めると遼がこくこくと頷いている。

 「俺に?…」
 「そう。シーナには合わん」
 ぱっと遼が悪魔ではない笑顔を作った。
 なんだこんな顔も出来るのか…。ってまだ高校生なら当たり前か。
 「……本当に泊まる気か?…それならシャワー浴びて来い」
 「うん」
 
 遼は迷った素振りもなく頷くのにはぁ、と洸生は小さく嘆息する。
 …確かまだ開けてないバスローブがあったはず。
 寝室のクローゼットからバスローブを出して遼に手渡し風呂場に連れて行った。

 「う、わ!ナニコレ!」
 ガラス張りのバスルームに遼が声を上げた。
 「マジ…?こんなの映画の世界だけかと思ってた…」
 「ここで外から見えないように出来る」
 ぱちんと切り替えのボタンを押すと遼が嘘だ、という顔をしていた。
 中からは変わっては見えないので当然だ。
 「外出てみてみろ」
 「あ!ホントに見えなくなってる!」
 素直な可愛い反応にくっと思わず洸生は笑った。

 「タオルはそこの使っていい。一応洗ってはある。他のも適当に好きに使っていい。開いてないのでも勝手に開けて使っていいぞ」
 そのまま遼を風呂場に押し込んで洸生は冷蔵庫からビールを取り出し、リビングのテーブルに座った。
 ビールを飲み、煙草に火をつけ咥えながらペンを握り紙に向かった。

 黒髪のストレート。白い肌。
 遼に合うデザインを考えていく。
 悪魔と天使。
 ぷっと自分で笑ってしまった。
 遼のイメージはそんな感じだ。
 会社に現れた時は悪魔にしか見えなかったが、さっきの笑顔は無邪気といっていい顔だった。

 両極端なイメージが湧いてくる。
 ああ、これを着せて写真撮影…いいかもしれない。
 白と黒。
 清純とエロ。
 湧いてきたイメージに洸生は次々とペンを走らせた。
 頭のなかにはもうイメージ画像までしっかり浮かんできていた。
 どれ位そうして描いていたのか、はっと気付けば灰皿がすでに溢れそうになっていた。

 「ぅ、わっ!」
 テーブルの向かい、床に座って目の前に遼がいたのにも全然気付いてなかった。
 「あがってたのか?」
 「…………あがって…もうかなり時間経ってるけど?」
 ふっと洸生が時計を見れば確かに帰ってきた時間から2時間は過ぎていた。
 こいつはその間ただじっとここで洸生が集中してデザインを描いていたのを見ていたのか?
 ……全然気にならなかった。 

 「遼、さっき言ったモデルの話、本当にいいのか?」
 「え?ああ、別にいいよ。俺でいいなら、だけど」
 「よし。じゃあさっそく契約しよう。お前の親は?いつならいる?」
 イメージが湧いてくるんだ。さっさと捕まえておくにかぎるだろう。
 「え?親?さぁ?休みも不定期だし。電話して確認すれば分かるかな」
 「…………お前飯とかどうしてるんだ?」
 高校生がいいのか?これで?
 「適当に。小さい頃はさすがに家政婦とか来てたけど」

 ……こいつの食生活は大丈夫なのか?
 余計なお世話だろうが…。
 そこでふと遼の格好が洸生の目に入った。白いバスローブにはだけた白い肌。
 風呂からあがってしばらく経っているはずなのにしっとりした髪。
 ……やっぱエロい。

 う~ん…と思わず洸生は呻ってしまった。
 食生活だけでなくて学校生活もこいつ大丈夫なのか?
 フェロモン出しまくりの気がするが。
 30男にもこんな風に見えるんじゃ男子高校生なんかこれに悩殺されるんじゃないのか?
 

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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