「コンセプトは反対のイメージだ。白と黒。天使と悪魔。陰と陽。清純と色気。2パターンで。白バージョンと黒バージョン」
「…面白そうだ」
洸生の説明にカメラマンもにやりと笑う。
撮影は遼の学校が休みの土曜日。
一日がかりでポスターからパンフレットから広告分まで全部撮影。
しかも全部白と黒バージョンがあるからかなりかかるだろう。
「洸生さん…」
つんと着替えを終えた遼が後ろから洸生の服を引っ張ってきた。
「なんだ…?」
「俺…大丈夫…?」
撮影スタッフから衣装係りからと人数が多く、人が忙しく動き回っているのに遼が不安そうにしていた。
「ああ。大丈夫だ。最初は白バージョンからな?そのままでいい。お前に似合うデザインを俺が考えたんだ。ダメなはずないだろう」
「………うん」
よしよし、素直な白バージョンだ。
「ちゃんと見てる。教えた事忘れるな」
「はい」
洸生が遼の頭を撫でれば遼はこくりと頷き、そして撮影が始まった。
初めての本格撮影にも遼は物怖じもしないでカメラマンの要求通りに応えていく。
「社長!この子いい!」
「そうだろう?」
カメラマンの賛辞に洸生も鼻が高くなる。
衣装を変え次々と順調だ。
「社長!ちょっと人と絡ませたのも撮りたいんだけど?彼、妙に色気があるから…大人になりきれてない中途半端さがいい!誰がガタイのいい男性モデルと絡ませて中性的に…」
「ダメだ」
そんなもの撮らせるか!
「え~?社長、久しぶりにKOUSEI出しませんか?」
「…………俺か?」
「当たり前です。今ココに絡めそうなのあなたしかいないでしょう?今から他のモデル呼んでも時間かかりますし。話題性というのではいいと思いますけど?」
遼と大っぴらに絡み…はいいかもしれない。
「ただし顔は出すなよ」
「分かってます。あ、上半身裸で」
カメラマンの言葉にばっと洸生がスーツの上着とYシャツを脱ぎだすと遼がどうしたの!?という顔で大きく目を見開いて洸生を凝視していた。
そして洸生は上半身裸になるとそのまま遼に近づいた。
「洸生さん?ど、したの…?」
「一緒に撮影。カメラマンの要望で」
しれっと洸生が答えると顔を仄かに赤くしながらぷぷっと遼が笑っている。
その間もフラッシュがびしばしと焚かれる。
ちょっとはにかんだような遼の表情に洸生も満足だ。
戯れるように遼が可愛い顔で洸生に凭れたり無邪気な笑顔を見せたりとカメラの中でも遼は自然な、そして魅力的な表情で白の撮影が済んだ。
「次、絡みの黒で」
カメラマンもいいものが撮れたのか声が弾んでいる。そして遼が黒の衣装に着替えを済ませてくると洸生はぐいと今度は遼の腰に手を添え引き寄せた。
「こ、洸生さん?」
「し…」
そして遼の項に唇を這わせる。
「ぅ…」
「感じてもいいが、勃たせるなよ」
「ちょっ」
涼の耳元に舌を這わせながら囁いた。
「いいよ~~~!!」
カメラマンの場違いな声が響くのに遼は救われているかもしれない。
そのままあちこち遼の身体を触りまくって遼が熱い吐息を漏らし熱を帯びた表情をさせながら洸生との絡みの撮影を終える。
それが良かったのだろうその後の遼一人の黒の撮影も色気たっぷりの表情で見事に白との違いを見せ付けた。
「なんか…」
順調にすべての撮影を終えた帰りの車の中で遼が口を尖らせていた。
「俺ばっかエロい気分になって、それなのにそんなの撮られて恥ずかしいんだけど!」
「いいの撮れてたぞ?……帰ったらエロくなった気分は責任とるから」
「…………だよね。洸生さんのせいだから」
「はいはい」
くっくっと笑ってしまう。
「でも本当にいいのが撮れた」
「………それならいいけど…」
「初モデル仕事はどうだった?」
「…なんか変な感じ?現実じゃないみたい」
「そのうち街中に今日撮ったお前の顔が貼り出されると思うぞ?」
「え?」
「はぁ~…綺麗だね」
出来上がったパンフレットやポスターを持って店舗に届けに来るとそれを見てシーナがうっとりと溜息を吐き出す。
「白は可愛くて清純、黒は大人でエロだ…しかもナニコレ…誰コレ?」
遼が色気ある流し目でしなだれかかっているのは男の身体だ。
「俺に決まっている」
「…決まってるんだ?」
シーナが呆れたような目を向けて来た。
「あ、ねぇ社長!コレ俺もらってもいいかな?」
「そりゃいいけど?どうするんだ?」
「久世さんに見せてやろっかな~と思って~」
小さく言ってくすくすとシーナが楽しそうに笑っていた。
「シーナさんの彼…って…かっこいい?」
そのシーナの言葉を聞いて隣にいた遼がまだ気にしているのかシーナにおずおずと聞いている。
「うん!カッコイイよ!社長とは大違い!」
「え!洸生さんこんなにかっこいいのに!!!」
「え~……だって胡散臭い」
「……自社の社長に向かって胡散臭い?」
「あ、すみませ~ん。あ、でも薄れたかなぁ?………社長、本気、分かったでしょ?」
シーナが洸生を見て得意そうにしながら、そしてシーナに笑われた。
「……そうだな」
洸生が仕方なく頷けばさらにあははと声まで立てて笑われたのにイラっとする。
「ユウキくん」
「シーナ!」
シーナが何を思ったのか遼に抱きついたのを洸生は慌ててひっぺはがし、そして遼を背中に隠した。
「ココにも嫉妬深い男いるし?」
シーナにニヤニヤとされ洸生はちっ、と舌打ちする。
「遼、帰るぞ」
「え、あ、うん…」
ぐいと遼の身体を引き寄せて店を出る。
「軽々と他の男に触らせるな!」
「え…あ、……うん」
遼がはにかみながら嬉しそうに笑った。
それがまた可愛いと思ってしまうんだから…本気とは困ったものだ。
テーマ : 自作BL小説
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