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僕の好きな人 6

 「あ、の…ありがとうございます」
 譲は世那にぶんと頭をさげた。
 譲が2時間かけて散らかしたものを2時間かけて全部綺麗に納める事が出来た。
 …譲だけだったら絶対ムリだったと思う。 
 「いや」
 その口調はどうでもいい、といわんばかりでその時に階下からご飯よ~、という声が聞こえた。

 「…ほら、行くぞ」
 世那に背中を押されてびく、っとしてしまうと世那が手を離した。
 「あ、…は、い」
 「………あのさ。疲れるだろ。タメ口でいいから」
 階段を下りながら世那に言われたけどタメ口なんてまだ無理だと思う。
 「で、…だ……ってっ…」
 「…………そんなにコエぇ?」
 はっとして譲は後ろに立っていた世那を振り返った。

 「あ!ばか!」
 「え…?」
 後ろを向いた拍子に階段でぐらんと譲の体勢が傾くと世那が慌てた顔をして譲の腹に手を回し、もう片方の手は階段の壁につき譲の身体を支えてくれた。
 「…お前…あぶねぇ…」
 はぁという安堵の溜息と低い声が譲のすぐ耳の近くで聞こえた。
 後ろから世那に抱きすくめられている体勢に譲は真っ赤になる。

 「す、すみま…っ!」
 「いい。まず落ち着け。深呼吸しろ」
 目をぎゅっと閉じたままで言われた通りに深呼吸を繰り返す。
 「いいか。ここは階段だ。分かったか?足ちゃんと確かめろ」
 言われる通りに足でちゃんと段を確かめる。
 「…離すぞ」
 こくこくと譲が頷くとそっと世那の腕と身体が離れ、譲もほうっと息を吐き出した。
 …びっくりした。あまりにも近くて。

 「……危なっかしいヤツだな…」
 「ごめ…なさい」
 「別に謝る必要はないだろ」
 そのまま一階に到着してダイニングに。
 すでに料理が並び、お父さんはニコニコ顔で座っていた。
 「世那く~ん、ごめんなさいね~。うちの子かなりトロくさいから迷惑かけちゃうかも」

 「………………いえ」
 すでに部屋の片付けから階段での事まで迷惑かけまくっている…。
 ごめんなさい、と譲が小さくなると隣の席に並んで座った世那がトンと譲の膝を軽く叩いた。
 …気にするな、って言ってる…みたいなんだけど。違うかな…。
 ちょっと心がほっこりして世那を見ると譲を見ていて、相変わらず表情は変わらないけれど小さく肩を竦めるのに、やっぱりそうなんだ、と譲がはにかんだ。

 なんだ…怖くない。
 怖いどころか譲を助けてばっかりくれる。
 よかった、と嬉しくなって笑みが零れた。


 お口に合うかしら~とか母親が言いながら食事が進む。
 譲にはいつもの味だけど、世那はどうなのかな…?
 何も言わずに世那は食べている。
 「月曜からいなくなるけど…家政婦さん断ったけどやっぱり一日置き位でも頼んでおけばよかったな」
 「大丈夫よ?譲家事出来るもの!」
 「え?でも」

 お父さんとお母さんが話しているとそれを聞いて世那がちろりと疑いの目を譲に向けてきた。
 それに気づいてまた譲は小さくなる。
 世那の言いたい事がよく分かった。片付けも出来ない、階段でもコケるドジっこが家事出来るのか?と言いたいんだと思う。
 「それに合鍵がまだ…」
 「いいよ。俺が譲と一緒に出て一緒に帰ってくりゃいいだろ。どうせ学校も一緒だ」
 食事しながら何でもない事のように世那が言った。

 …譲なんかと一緒って嫌じゃないのだろうか…?とちょっと心配になるけど黙っておく。
 「じゃあそうしてくれ。帰ってきたらすぐに作るから」
 お父さんはにこにこ顔だ。
 「いいなぁ。譲くんは可愛いし…」
 小さくて、という意味なら可愛いも分かる…。
 お父さんも世那も背が高くてかっこいい系で、譲は確かにそこからはかけ離れているけど…。

 「部屋の片付け終わったの?」
 「え、と……手伝って、もらった…から」
 「あら~!世那くんごめんなさいね」
 「いえ。別に」
 上機嫌らしい親二人に譲もちょっと緊張が解けてくる。
 世那は手伝ってくれたし、助けてくれたし、どうなるだろうと思ったけれど全然大丈夫な感じがする。

 それでも兄弟なんかじゃないと言われた言葉はどうしても頭の中に残っているけれど。
 それに会長に気をつけろ、と言われた事も。
 世那に聞いたら答えてくれるのかな…。
 でもまださすがに自分からあれこれ聞くとかは出来ないかも。
 それに名前でいいと言われてもまだ呼べていないし。

 やっぱり色々な事がくるくると譲の頭を回っている。
 「…家政婦さん頼まなくて本当に大丈夫?」
 お父さんが心配そうに譲を見て聞いてきたので、はい、と譲が頷き、母親は軽快に笑っていた。
 「家事は大丈夫なんだけど。その他の事はごめんなさい、世那くんよろしくお願いするわね」
 世那が小さく頷いたのが見えて譲はちょっと顔が火照る。
 家族、になったんだ…。

 …でも兄貴じゃない、って言われてるけど…。じゃあ何なんだろう…。
 
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続きに拍手コメお返事です~^^
 
mm3様
 リスですか~?(笑)
 どっちかといったらハムスターのような気が…^^;
 構いたくはなるよねぇ~^^
 イラっとくるか構うかどちらかかな?
 私は多分イラっとくる^^;
 男の方がこういうのに弱いでしょう~?(笑)
 ありがとうございます~^^

SR様
 ちょっとの玉の輿ね(笑)
 二階堂家とか、一条家ほどじゃないので、
 一般の上?(笑)
 なのでおぼっちゃまというほどでもないです^^;
 しょうがねぇなぁ~、になっちゃいますね~?(笑)
 ふふふ…ありがとうございます~^^

tsr様
 お目覚めよかったです♪
 無愛想、無口が私の好きなタイプなんですけど!
 でも段々おしゃべりになってくんだよね~(><)
 そして壊れていく…^^;そんなはずじゃなかったのに~(T^T)
 …といつもなってます(笑)
 ついたーありがとうございます~////
 やだ~!そんな褒められたら調子ぶっこきます~(笑)
 ありがとうございます~^^
 午後も頑張って下さいね^^/

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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