はのんのBL部屋

　「………どうした？」
　「え？え？…なに、が？」
　電車に乗ってから世那に聞かれて譲の視線が泳いでしまう。
　だって…なんか妙にリアルに感じてしまって…。
　漫画で見たのと、世那の裸と今朝の…思い出して一人でうろたえてしまっていつもよりもさらに挙動不審になっていた。

　でもいくら譲が好き、と思ったって漫画みたいに！あんな風になるなんて事ありえないけど！
　…というか、なりたい、の…？…自分でもよく分からない…。
　でも…譲がくっつくのは嫌じゃない、よね…？
　でも、勘弁してくれ、って言ってたよね…？
　なんかもう確認出来ない事ばかりだ。
　世那は嫌じゃない…？本当に？

　つっと譲は世那の制服の裾を掴んだ。
　すると世那が口角を仄かに上げる。
　嫌だったらこんな顔しないよね？と自分に都合のいいように思う事にした。
　じゃあ勘弁して、って何に…？
　はぁ、とまた溜息を吐き出したら世那がどうした？ともう一度聞いてきたのに譲は頭を横に振った。
　なんかもう自分の中がぐちゃぐちゃで分からない。

　世那にドキドキして、言葉が気になって、態度も気になって、またドキドキして、でも義理の兄弟で、嫌じゃないって言われたのに兄貴じゃなくて、でも勘弁してくれって…彼女がいるかもで、保健の先生とも親密。
　「ぅ～～～…」
　小さく呻いた。
　こんなのいくら考えたってどうにもならない。
　「譲、こっち」
　電車が混んできたので世那が譲の後ろに回って手すりを持つ譲を守るように立ってくれる。
　男で痴漢に遭うなんてみっともないと思うのに、世那はそれどころかすごく気にしてくれているのが嬉しくて面映い。

　「おはよう」
　「おはようございます」
　会長は毎日爽やかだ。
　「宮下。見つけられないのか？」
　「いないね。時間変えたんじゃないか？」
　「……ならいいけど」
　今日はすんなりと会話を始めた二人にどうしたんだろ？と世那を見上げる。

　「お前はちゃんと掴まっていろ」
　「…なぁにがお前は、だ。あ、高橋くん、今日は役員会があるからね」
　「あ、はい」
　「したがって帰りは僕が送って行ってやるよ」
　「いらねぇ。譲が終わるまで待ってるよ」
　「え！そ、そんな……いいよ…」
　わざわざ何時までかかるか分からない役員会なのに待ってる、なんて。

　「うわぁ～やだやだ。独占欲丸出し」
　「うぜぇ」
　また二人が険悪な雰囲気になってくる。
　「世那…帰り…いいよ…」
　譲的には世那と一緒の方が嬉しいけど…。
　「ダメだ」
　ダメ…って…。
　「ウチの駅は特に心配だからな」
　それは…譲だって確かに心配だし、心細いけど…。
　「本当に…いいの…？」
　「気にするな」
　世那が優しく言ってくれるから甘えたくなってしまうんだ…。
　「……うん」
　

　「あの…これ…」
　クラスの女子にビニールの本を返した。
　顔が変な風に赤くなってしまう。
　「読んだ？」
　「…ちょっと、だけ…」
　また数名の女子に囲まれた。

　「で？本命どっち？生徒会長？天間先輩？」
　「あの…別にそんなんじゃ…」
　「だって～！毎朝二人に挟まれて！」
　ね～！と女子羨ましそうに言われるけど…。その気持ちは分かるけど…。
　「あの僕だって一応男…」
　小さい声で抗議したら、はんっ？って鼻で笑われた。

　「高橋クン？喧嘩売ってる？あんたが女だったら勿論黙って見てるわけないでしょ？生徒会長と天間先輩のいい男二人従えて女だったら無事じゃないよ？男の子だから黙って応援してあげようとしてんじゃないの」
　にっこり言われて…怖い。逆らえない…。
　「…で？どっち？」
　また笑顔で聞かれた。
　「……世那…です…」
　キャーーーーっと黄色い声があがる。

　「で、で、でもっ！僕が…勝手にっ！だから…っ！僕みたいな冴えないやつに…なんて世那は…義理で弟ってだけでも迷惑だろうし…」
　「大丈夫！任せて！協力するから！ねぇ～～～」
　…何を協力してくれるのだろうか…。
　「高橋は自信持っていいよ？女だったら許せないとこだけど、天然眼鏡クンで受けで…おいしい…。おまけにダサダサ眼鏡だし。でもとれば可愛いから大丈夫」

　「…………」
　「学園祭あるでしょ！任せて！変身させたげるから！」
　いえ、遠慮したいです…。と小さく言ったってもう聞こえていない。
　「こんなおいしい状況…他に漏らしちゃだめ！」
　女子は何か知らないけど結託しているらしい…。
　女子で固まって何か相談を始めたのにそそくさと譲は自分の席に逃げた。
　
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続きに拍手コメお返事です～^^　

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