はのんのBL部屋

　「お疲れ様でした」
　挨拶して譲は生徒会室を出て、保健室で寝てると世那から携帯にメールが来てたので保健室に向かおうとした。
　「高橋くん、一緒に行くよ」
　すかさず会長もついてくる。
　え…いいのに…、って思ってしまってから前だったらきっと光栄だとか思っただろうに、と思ってしまう。
　それよりも世那が保健室にいる、というのが譲には引っかかっていた。
　だってなんか世那は保健の先生とと妙に親密だったし…。
　ちょっとドキドキしながら保健室のドアをノックしてそっと開けた。

　「すみません…世那…いますか？」
　「ああ、いるよ。世那」
　保健の先生がやっぱり世那を名前で呼ぶのがやだな…と譲は顔を俯けた。
　「…高橋くん？どうかした？」
　顔を俯けた譲に会長がすぐに気付いて声をかけてくれる。
　「え？あ、いいえっ！なんでも…」
　譲は保健室のドアを開けたまま廊下にいた。世那は保健室のベッドで寝ていたらしく、欠伸をしながらカーテンを開けて姿を見せた。
　それにほっとしたんだけど…。

　「あ、世那…ちょっと」
　保健の先生が世那の身体に触れて何か耳打ちを始めたのを見て譲はきゅっと唇に力を入れてまた顔を俯けた。
　「………なんか天間と親密そうだね？」
　こそりと会長が譲に耳打ちしてきた。
　「ああ…彼女って見た事ないと思ったら…もしかしてそういう事なのかなぁ…？」
　ね？と会長に同意を求められても頷きもしたくない。

　…でも…やっぱり…そう見える…？
　なにやら世那は保健の先生とこそこそ話をしているけど…世那の態度も普通な感じで、表情も柔らかい気がする。
　「譲、わり。待たせた。……ってなんで宮下までいるんだよ」
　譲は顔を俯けて小さく頭を横に振った。待たせたのは譲のほうだ。
　「帰る方向が一緒だからね」
　「……譲…？どうかしたか？」
　顔を俯けっぱなしだった譲の顔を世那が覗き込んだ。

　「え？な、なんでもない、よっ」
　「そうか？」
　じゃ、帰るかと世那が会長を無視して譲の背中をぽんと叩いて促すのにこくんと小さく頷く。
　「じゃあな、世那。あ、高橋くんも会長もさようなら」
　保健の先生が軽やかに挨拶するのに譲は小さく頭だけ下げる。
　世那って呼ばせないで…。
　なんで保健の先生なのに世那、って名前で呼ぶの？
　世那もなんでそんな普通にしてるの？

　……やだ。そしてこんな事思ってる自分も嫌だ。
　「なんだ？静かだな？…ホントにどうした？具合悪いか？」
　ずっと顔を俯けたままの譲を世那が心配そうに見ていたのに違う、と首を振るしか出来ない。
　口を開いたら余計な事を言ってしまいそうだ。
　だって…やなものはやだ。

　「高橋くん」
　会長が譲に近づいて手を譲の肩に触れてきて譲は会長にさっきされた事を思い出し、ぱっと会長の手を振り払うと慌てて世那の背中に隠れるようにくっ付いた。
　「譲？」

　…もう！頭の中がわけわかんないっ！
　でも、分かったのが一つだけある。
　やっぱり譲が好きなのは世那だ。
　会長を好きだと思っていたのは憧れで、さっきされた事を思い出すと唇をぐいと拭った。
　本当に触れるか触れないか位の掠めるようなものだったけど、それでも嫌だったんだ。

　じゃあもしあれが世那だったら…？
　心臓が苦しくなる。どきどきする。…けどきっと嫌じゃない。
　でも世那には保健の先生かどうか分からないけれど、彼女がいるらしい。世那のキスする相手は別にいるんだ。
　それも嫌だ。
　なんか嫌、嫌ばかり。
　はぁ、と小さく譲は溜息を吐いた。

　電車もなんとなく無言のままで会長が先に降り、そして譲と世那も駅まで無言だった。
　小さく何度も何度も譲は溜息を吐いた。
　キスされた事、世那の彼女、保健の先生、今日は嫌な事ばっかりだった。
　「譲」
　駅に着いて世那に促されて駅に降りればいつもよりも遅い時間で西高の生徒が少なく、ほっとする。
　それでもちらほらとガラの悪い西高の生徒の姿があったので譲はそっと世那にくっ付くようにしていた。

　やっぱり世那に待っててもらってよかったかも…。
　少ないとは言っても一人で駅を降りるのには無理がありそうだ。
　そしてまた溜息。
　世那に頼ってばかりじゃダメだって分かっているのに…。世那が待っててくれるって言ってくれて嬉しかったんだ。
　それなのに保健室でのアレを見たら全然嬉しくない。

　保健の先生とつきあってるの…？
　聞きたくたって聞けるはずない。そんな勇気もないんだ。
　ホント何したってダメな自分に嫌になってくる。
　ぐじぐじ、うじうじ、ぐだぐだ、…ダメダメだ。
　
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続きに拍手コメお返事です～^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学