はのんのBL部屋

　「なんだよ、あんまり乗り気じゃなかったようなのに」
　世那がはしゃぐ譲に苦笑していた。
　「そんな事ないよ？」
　世那と一緒に出かけるってだけでも嬉しかったけど、動物園なんて久しぶりで来てみたら結構新鮮だった。
　天気もいいし、世那も機嫌がよさそう。

　それに…、譲からしてみたらデートと言っていいだろう。
　途中の売店でソフトクリーム食べたり、小さい頃は大きさとかもただ大きいしか分からなかったけれど、自分も大きくなってから来るのもいいかもしれないとかなりテンションが上がった。
　小さな子を連れた家族が多い中を世那とくっ付きながら園内を歩いて、話をしながら世那が譲に合わせてゆっくり歩いてと、それがまた譲の気持ちを上昇させてかなり譲は満足した時間になった。

　休みの日ってあんまり出かけたりとかってなかったけど、こんな休みって楽しい！
　どちらかと言えば休みの日には家に籠もって本を読んだりしてる事の方が多かった譲にとっては滅多にない楽しい時間になった。

　そのまま帰りは買い物に行って、食料品を買い込み、そして家に帰った。
　譲は一日楽しい気分で、鼻歌でも歌いたい位でキッチンに立っていると、そこに世那が冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しに来た。
　「あ、譲」
　「ん？何？」
　「明日ちょっと出かけてくるから」
　「え…？そ、うなの…？」
　「ああ、ちょっと用事あるんだ。昼過ぎに出かけて夕方までには戻る」
　「……うん……分かった」
　でも誰と、どこへ、と世那は言わない。
　…デートなのかな…？

　そう考えただけでさっきまでのよかった気分が落ち込んでくる。
　そこからはもう今日の楽しかった事よりも明日の世那の出かけるのが誰となのかが気になって仕方なくなった。
　そのくせ怖くて聞けないんだ。
　「譲？どうかしたのか？」
　「え？ううん？」

　世那の明日出かけるを聞いてからはどうしてもそれが気になってしまい、楽しかった気分が払拭されてしまって俯いている事が多くなってしまい、それを気にして世那が何回か聞いて来たけど譲は首を振るだけ。
　譲の気分が落ち込んだのに世那は気付いているからそう聞いてくるんだろうけど、譲は首を振るしかできないんだ。
　　
　「…もう寝るね…」
　ご飯も終わってシャワーも終わっても気分が上昇する事もなく勝手に凹んだままで聞くのも怖い譲は早々に自分の部屋に引きこもる事にした。
　「…疲れたか？」
　「ううん。楽しかったよ」
　それは本当。
　テレビを消し、リビングの電気を消し階段を上がる世那の後ろをついていく。
　「世那」
　つんと階段を上がる世那のＴシャツの裾を引っ張った。

　「んん？」
　「………またどこか…連れてって…」
　いいかな…？
　「…いつでも」
　世那がくすと笑って答えてくれた。
　「……うん」
　へへ…と譲が嬉しそうに笑ったら世那が手を伸ばして頭をくしゃっと一撫でしてくれた。
　それだけだって嬉しい。

　「僕…兄弟とかいなかったし…嬉しい」
　兄弟だったらいいんだよね…？
　すると世那はむっとした顔をした。
　「兄貴じゃないって言っただろ？」
　「……………」
　言われた、けど…。
　ひやっと空気が冷たくなった。
　心臓が嫌なドキドキになってくる。世那を怒らせた？
　譲は顔を俯けた。

　「じゃ、おやすみ」
　階段を上がって部屋の前に来るとそう言って、そのまま世那は自分の部屋に入ってしまった。
　譲もそっと隣の自分の部屋のドアを開け、そしてそそくさとベッドに潜り込む。
　なんで？
　どうして世那を苛立たせるような事しか言えないんだろう…？
　連れてって、と言った時は世那も笑って頷いてくれたのに、兄貴じゃないって言われて…じゃあどうしたら世那の傍にいられるの？

　だって義理の兄弟じゃなかったらなんで世那は優しくしてくれるの？
　なんで動物園とか連れてってくれたの？
　だってお母さんと世那のお父さんが再婚してなかったらこんな風にはなってなかったはず。
　譲は前は世那の事がただ怖いだけだったけど、今は違うし、もっと一緒にいたいと思っている。
　でも世那は彼女いて…義理でも兄弟という名目があったら一緒いてもいいかな、と思ったのに…。

　自分の部屋に世那が入る時に譲の方を見てもくれなかった…。
　前から兄弟じゃないって言われてたけど、それを言って世那を怒らせたんだ…。
　それとも呆れた…？
　嫌われたくない。
　世那に手を伸ばして欲しい。
　ぐず、っと潤んだ目を閉じて布団を被った。
　
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続きに拍手コメお返事です～^^　

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