気分は落ち込んだまま朝が来て譲はのそりと起き出すと着替えをして階下に降りた。
世那はまだ寝ているみたいで、朝ごはんの用意をしながら洗濯機を回し、と動き出す。
片付けは苦手だけど、余計な物を出さないように、元あったところに戻すを心がければ散らかることもなく、自分の部屋もリビングも綺麗なままを保っていた。
今日は掃除機をかけようかな…。
世那は出かけるだろうし、自分は暇だ。
学校の友達にも自分から誘いをかける事もなかったし、滅多に誘われることもない。
なにしろチビでダサダサ眼鏡だ。
皆、彼女欲しいとかで休みの日は遊びに行って女の子誘ったりしてるみたいだけど譲じゃあぶれるのが分かってる。
別に今までも彼女が欲しいとも思った事もなかったし、それに今は遊びに行くよりも世那の近くにいた方がいいに決まっている。
家で待ってれば世那は出かけたって帰ってくるんだし。
今日は天気があまりよくなくてどんよりだ。
昨日は世那と出かける、と嬉しくて気分もよくて天気も良かったのに今日は曇り空。
まるで自分の気持ちのようだ、と譲はぼうっと今にも雨が降り出しそうな空を眺めた。
洗濯物も干して一息ついたところに世那が欠伸しながら起きてくる。
「毎日お前はえぇな…別に毎日家事なんかしなくていいんだぞ?今日なんか折角の休みなのに」
世那は昨日の夜の譲の余計な一言に怒ったままではなかったらしく、普通に話しかけてくれてほっとしてしまう。
「…無理は全然ないから…平気」
「…そうかぁ?」
ぽんと譲の頭を軽く叩いて世那が洗面所に向かったのによかった、と譲は胸を撫で下ろした。
怒ったままだったらどうしようと思って心配したけどそうではなかったらしい。
気張って家の事をやっているつもりは全然譲はなくて、今までだってやってきてた事だから普通なんだけど…と思いながら朝ごはんの用意を始めた。
むしろ母親と二人だけだった時よりも出来てよかった、と思うだけだ。
ホント普段はダメダメだけど、家事だけは自慢できるかも、と仕込んでくれた母親に感謝する。
けど、外で他の人に自慢出来ない所が情けない。何が得意?って聞かれて家事です、なんてまさか男子高校生が答えられるはずもない。
でもそれ以外自分のいいとこなんてなさそうだ。
はぁ、と小さく溜息を漏らす。
ダサダサ眼鏡にチビでガリで、ぐじぐじうだうだで、世那には余計な一言ばっか言って怒らせて呆れさせて、ドジふんだりコケたりで迷惑ばっかかけて…。
考えるだけでも落ち込んできてしまう。
「譲は出かけないか?」
「…うん。家にいる」
あんまり喋ってまた世那を怒らせたらやだな、と思って譲は余計な事を言わないように口を開かないようにしていた。
「譲…?」
リビングのソファでクッションを抱きしめながら世那の隣に座っていたけど、世那が手を伸ばしてきて譲に触れそうになると譲はびくっと反応してぎゅっとクッションに力を入れた。
すると世那が小さく舌打ちしてイライラとし始めた。
…また…怒らせた…?
なんで…?
怒らせたくないのに…。
「ゆ…」
譲、と名前を世那が呼ぼうとしたんだろうけど、その瞬間に世那の携帯が鳴った。
「はい、もしもし!」
世那の声が苛立っている。
「ああ?……もう着いた?……ああ、分かった。今出る」
ったく!と苛立ったままで世那が電話を切ってソファから立ち上がった。
「出かけてくる。譲、もし誰か来ても出る事ないからな?」
「………分かった…」
もう着いたって事は世那をお迎えに来たのだろうか…?
「じゃ、行ってくる」
玄関で出かける世那を見送って、そして譲は慌てて二階の自分の部屋に駆け上がった。
譲の部屋なら道路に面している側に窓があるので外が見える。
窓から下を見下ろすと派手なスポーツタイプの赤い車が停まっていて世那が助手席に乗り込むところだった。
…車でお迎え…。
保健の先生を思い出す。
綺麗で背が高くて確かにあの車が似合っている。
世那を名前で呼ぶくらいだから…。
……やっぱりそうなの…?
走り去った車をただ窓から見て、そして頭をうな垂れながらもう一度とぼとぼと階下に向かった。
誰もいない広い家で一人は寂しい。
母親と二人だった時はアパートで狭かった。あれでよかったんだ。
広い家に慣れない譲には世那がいなくなっただけで心細くなる。
ずっと世那がいてくれたから平気だったけど…。
ソファに小さくなってただ寂しさをまぎらわすだけのテレビを見ていた。
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SORAさんよりイラスト4枚も!いただきました^^
サムネイルになっておりますのでクリックで拡大します~
ありがとうございます~m(__)m
社長×遼(白) 社長×遼(黒)
世那×譲
テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学