はのんのBL部屋

　心臓が大きくどくどくと鼓動が大きい。
　譲は世那の部屋の前のドアで深呼吸を繰り返した。
　何度もノックしようとして下ろした手で意を決してドアをノックする。
　「何？」
　部屋の中から世那の声がした。
　「…分かんないトコあるんだけど…教えて……」
　聞こえたかどうか分からない位の小さな声で譲が言うと世那がドアを開けてくれた。

　「どこ？」
　部屋の中には入れてくれないのかドアを半分開け、そのドアに手をかけたまま世那が譲の持っていた教科書に目を落とした。
　「ここ、なんだ…けど…」
　譲は顔を俯けたまま教科書を指す。
　「ああ、コレ…」
　世那が説明してくれるけど、ドアはそのまま押さえ、譲を部屋に入れてはくれないらしい。
　やっぱり…。
　身体が震えて涙が溢れそうになってきた。

　「譲？聞いてるのか？」
　「……き、…て、ない……」
　聞こえない…。
　ぼたぼたと涙が零れ始めた。
　「譲っ…！？」
　「せ、な…もうやだ…？」
　「ああ？」
　うう…と我慢出来なくて声まで出てくる。
　だって今日一日ずっと我慢してたんだ。

　「譲…？」
　世那がドアをちゃんと開けてそしてそっと世那が譲の肩に手を触れてきた。
　「…嫌なのはお前の方だろ？」
　「何が？僕がヤなのなんかないもん！」
　ばん、と教科書を世那に押し付けた。
　こんな事しながらも世那の部屋に入れて欲しくて、触って欲しくて、キスして欲しくて…、バカみたいだ。
　「世那…触ってもくれない…っ……部屋…入れても…くれないっ……！」
　世那がぐいと譲の腕を引っ張ると世那の部屋の中に引っ張っていく。
　…ヤ、なんじゃないの！？

　「いいよっ！」
　「何が！？」
　「世那、ヤダなのに…っ！」
　「こっちこそ嫌だなんかあるわけないだろう！」
　世那の手が譲の腕をぎっちりと掴んだままだ。
　「触って部屋にいれたけど？」
　違う！そうじゃなくて…。
　ぼたぼたと涙が止まらない。

　「僕が…あ、…んな事…」
　考えて…触って欲しいとか、キスしてほしいとか…それに…もっと…。漫画に描いてあったの想像してとか…。
　「あんな事？」
　世那の手は譲の腕を捕まえていたけどただ捕まえているだけで抱きしめてくれもしない。
　やっぱりもう…世那は…。
　キスして…やっぱ譲みたいなのとは…は思ったんだ。

　「……何でそんな泣くんだよ…」
　世那が譲の腕を離すと涙が溜まった眼鏡を外してティッシュをわしゃわしゃと取ると顔を拭いてくれる。
　今だけ！
　泣いてる今なら世那は優しいから拒絶しないかも…。
　屈んで譲の顔を拭いていた世那の首に抱きついた。
　「譲？」
　世那が怪訝そうな声で譲を呼んだけど、ぎゅうっとさらに力を入れて世那にぶら下がるように抱きつく。

　やだ…離れたくない…。
　世那の首あたりに顔を埋めるようにして頭を横に振ると世那が譲の背中に手を回して抱きしめてくれた。
　「せ…なぁ…」
　抱きしめてくれた。
　好き…。
　「…いいのか…？」
　世那の囁く声が小さく聞こえた。

　「な、に…が？」
　「お前、俺に触られるの嫌なんじゃねぇのか？」
　「そんな事ないっ…触って…くんないの…がやだ…」
　「……だってお前逃げるし、びくつくし」
　「そんな事…ない…もん…」
　「あるだろうが。だからえっちい事嫌なんだ、と思って。今朝だって逃げるように一人で先に学校行っただろ」
　「あれは…だって世那が…キスも…し、て…くんない…し…朝も…世那…キス、で起こして…って言ってたのに…一人で起きて…僕の事…嫌なんだ…って……」

　「……キス…待ってたんだ？」
　待ってた、とかって！
　…そう。待ってた…。
　でも！そんなの言えないっ！
　ぎゅぎゅうっとますます世那にしがみつくと世那が譲の耳元でくすくすと笑い出した。
　「…なんだそっか…。譲、待ってないで自分から来い」
　「…え？」

　「いつだって、どこだっていい…。俺が拒絶することはないから」
　「う、ぁっ！」
　世那が譲の身体を持ち上げた。足がぷらぷらするのにびっくりして世那に埋めていた顔をあげた。
　「ん」
　すると世那がくすと笑ったままちょっと唇を突き出した。

　…譲からしろ、って事…？
　どきどきしながら世那の頬を手で挟んでそして顔を近づけた。
　世那のアップが近づいて目を閉じる。
　いつでも、どこでも…？譲からしていい…？ホント…？
　唇が合わさると、世那が譲の身体を下ろし、そして後ろ頭を抑えながらもっと深く、そして何度もキスを繰り返した。
　昨日の分と今朝の分をまるで取り返すかのように何度も何度も…。

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続きに拍手コメお返事です^^

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学