ハァ~…と世那が盛大に溜息を吐き出した。
……それも分かる。
なんか落ち着かなくてキスしか出来てないまま日にちだけが過ぎていた。
毎日一緒にいるのに…。
学校ある日も学園祭が近くなって忙しく、帰宅時間がいつもよりも遅くなって、…学校ある日は次の日譲が酷いだろうから週末に、って世那が言ってたのに、外食に行こうとかお父さんが張り切っちゃったり、階下から声が聞こえるのにえっちなんか出来そうもなくて…。
「……なんでお前目の前にいるのに、いつでもいるのに…手出せねぇんだ…?」
世那ががっくりしながら譲を抱きしめて呟く。
…ほんとだよ…と、思わず譲も思ってしまう。
「世那…」
帰ってきて着替えて世那の部屋でキス…と思ったら、ただいま~、と玄関の開く音。
お母さんが帰ってきたみたい…。
はぁ、とまた二人で溜息を吐き出した。
「今度の土曜日学園祭だから学校」
晩御飯の席で世那が言うとお父さんがえ!と思い切り声を高く上げた。
「なんだ残念…学園祭…行かれないな…」
「……来なくていいに決まってんだろ」
「世那じゃなくて譲くんが見たかったのに…」
あっそ、と世那が呆れている。
「今度の土日は恵さんを紹介しに親戚回りをしてこようと思ってたんだが…」
「いいよ。行ってきて。泊りがけでだろ。譲いるし」
「まぁね…譲くんが出来る子でよかった…」
あれ…?もしかして日曜日までお父さんとお母さんいないの?
ちらっと隣の世那を見たら世那も譲をちらっと見てにやりと口端を緩めていた。
「譲に家事仕込んでホントよかったわ~」
うんうん、と譲も頷く。それで二人が安心して出かけてくれるなら世那と二人っきりだ。
それにお父さんに出来る子、って言われたのが嬉しい。
自分が誉められるなんて事なかったから…。
「まかせてっ」
思わず大見得を切ると世那がぷす、っと笑ってた。
「何で笑うの!?」
「いいやぁ?なんでもねぇよ?」
「もうっ」
世那とじゃれてると向いでお父さんとお母さんが嬉しそうな顔をしていた。
「どうなるかなと…思っていたけど…よかった」
お母さんが嬉しそう。
「最初は…お母さんさえよければいい、と思ってたけど…お父さんも優しいし、世那も優しいし…僕…すごく幸せ…だと思ってる」
「譲くん!」
お父さんが嬉しそうにして、そして世那が隣から手を伸ばして譲の頭を撫でてくれる。
「世那が優しいというのは信じがたいとこはあるけど…」
「え?そう?」
お父さんの言葉に首を傾げる。
「義理でも兄弟で仲良くなんて…」
ずきりと、ちょっと心が痛む。
……だってただの兄弟じゃない…。そう、世那には最初から兄弟じゃないって言われてたし…。
それでも譲だってもう世那以外こんなに好きにならないと思う。
心苦しいのもちょっとだけだ。
だってもう何よりも誰よりも譲の中では世那だけがいればいいんだ。
お父さんお母さんには言えないけど、謝る事もしない。
譲は世那と目を合わせてそして笑みを浮べた。
「お前…後ろめたい……って思うか?」
お風呂も終えて世那の部屋。
勉強見てもらって終わったら世那が唐突に聞いて来た。
「え?お父さんお母さんに?」
「そう」
「……思わないよ?……世那は思うの?」
「う~ん…お前のお母さんには…ちょっと…後ろめたいのとは違うけど…」
世那に身体を抱き上げられて世那の膝の上で向かい合わせに乗せられた。
その世那の頬を両手で挟んだ。
「僕は全然思わない。……世那が好き…。誰に何言われても何されても世那がいればいい」
「……………」
世那がじっと譲を凝視し、そしてふっと笑った。
「お前…強いな…」
「え?弱いよ?」
「ばぁか。力の強い弱いじゃねぇよ」
軽くキスされる。
「どうなるかなぁ…と思ったけど…なんか全部お前の方が肝据わってんな…」
「そ、そう…?」
どこが?
自分じゃ分からないけど…。
でも嬉しい…。
「お父さんにも出来た子だって…言われて嬉しかった。世那にも強いって言われるの嬉しい。……だって、ほら、僕なんか全然ダメダメなのに…」
「ダメダメじゃねぇよ?ダメダメだったら好きになんかなんねぇだろ…譲」
世那が啄ばむように何度もキスする。そしてくすっと笑った。
「……………俺も何言われたって止めようないけど…。譲、土曜日な?」
「…………うん」
小さく頷いて世那に抱きついた。
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