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僕の好きな人 59

 「はい、並んで並んで~」
 女子が仕切っていたけど、なにやら怖い事になっているみたいだ。
 「高橋はそのまま」
 なぜか譲は座ったままで撮影会。
 「なぁ、この子の名前は?」
 「内緒です~!ミスコンでは1-2の白雪姫で入れといてくださーい」
 ……ミスコン?
 何か間違ってると思うけど…。

 「…高橋、喋っちゃダメ!いい!?」
 脅すように女子が譲の後ろで耳元に注意を促すのにこくこくと頷いた。
 「ハイ、笑って!」
 笑顔を顔に張りつける。
 すると携帯のシャッター音があちこちから鳴り響く。
 何がどうなってんだ?
 椅子に座ってる譲の横に学校の生徒から他校の生徒、その他にも保護者なのか招待客なのか分からないけど、大人も混じって次々と並んで撮影。
 そのまま座席に案内して姫役男子がお相手しながら注文。
 スムーズにはいってるみたいらしいけど、譲は全然状況がつかめず、ただ女子の言いなりになっていた。
  
 「高橋、もうちょっとで終わりだから頑張って」
 ずっと笑顔を張りつけたたままの撮影会が続く中、終わらないんじゃないかと思ったらちゃんと終わらせてくれるらしい。
 「今何時?」
 世那が迎えに来てくれる前に着替えないと。
 「もうちょっとで1時」
 「え!?着替えないとっ」
 「はぁ?何言ってるの?今日一日そのまんまの格好!」
 「え!?だ、だって…世那…迎えにくる…」

 「宣伝係って言ったでしょ?そのままの格好に決まってるの。大体、折角何日もかけて作った衣装を午前だけ?」
 「…………」
 …甘かった…。だから他の姫男子は自由時間いらないって言ってたのか…。
 どうしよう…世那来ちゃう。
 「キャーーーーー!姫!王子サマの登場よぉ~~~!」
 世那!?
 眼鏡かけてないから分からないけど…。
 背の高い人が来たのは分かる。
 人波が分かれてその間を悠々と歩いてきて譲の前に立った。

 「……譲……?」
 やっぱり世那の声だ!
 見られた~!
 かぁっと顔が真っ赤になってるのが自分でも分かる。
 「高橋!いいよ~。行ってきて。あ、ちょっと待って」
 なんか背中に紙を貼られた。
 「せ、世那…何?」
 世那に背中を向けるとそれを見て世那がぷっと笑う。

 「あ、天間先輩の分もあります」
 「ああ?いらねぇよ」
 むっとした声を世那が出したけど女子は負けてない。
 世那の背中にも何か紙が貼られている。
 「じゃあ高橋!はい、いってらっしゃーい」
 「眼鏡なくちゃ何も見えないよ」
 「だからエスコート役って言ったでしょ」
 エスコート役って世那の事!?
 とにかく一回眼鏡かけて…。
 …と取り上げられてた眼鏡をかけて目の前の世那見たら絶句…。

 髪上げて衣装が黒のロングコート着て…。
 か、か、かっこいい………。
 ヤバイヤバイ!
 かぁっとして顔赤くなってるだろうな、と思いつつ見惚れていると世那も譲を見てた。
 「お前……それまずいだろ…」
 なんかずっと携帯のシャッター音があちこちから鳴ってるけど…。

 「高橋!眼鏡外して。見つめ合うのいいけど…はい、行ってらっしゃーい!」
 眼鏡を取り上げられて背中を押されればよろけてしまう。
 世那がそれを抱きとめるとキャーーーーっと黄色い声が響き渡りシャッター音が凄まじい音を立てる。
 はぁ、と世那が溜息を吐き出して、行くぞ、と譲の肩を抱き寄せればもう悲鳴からシャッター音からなり止む事はない。
 くくっと世那が笑って譲の耳元に顔を近づければさらに女の子達の気絶してしまいそうな悲鳴が響く。

 「………世那わざとやってる」
 「当たり前だ。今日だったらふざけてべたべたでも誰も何もいわねぇだろ?」
 「え…?ああ。じゃいいのかな?」
 「ん?」
 世那の腕にぎゅっと抱きつく。

 「……やるな?」
 またくっと世那が笑う。
 「高橋~!そのまま天間先輩とべたべたして校内回って来て!いってらっしゃーい」
 携帯片手に持ってる女子に快く送り出される。
 「じゃ行くか。腹減ってるだろ?」
 「うん」
 「………落ち着かねぇけどな…」

 視線から携帯から向けられて確かに落ち着かないけど、眼鏡がなければあまり見えないので譲は気にならない。
 それより学校で世那に堂々とひっついててもいいのが嬉しい、の方が上回ってる。
 「…お前裏って言ってたのに…いや、そんな事だろうなとは思ってたけど…」
 「だって!こんなの見られたくないでしょ!」
 「いや、可愛い。…可愛いけど…ちっと面白くないかな…」
 「面白くない…?」
 「ああ…他の奴等にも見られるのが。知ってるの俺だけでよかったんだけどな…」
 可愛い、とか…世那に言われると照れてしまうけど、なんとなく微妙な気もしてしまうのは仕方ないよね…。

テーマ : BL小説
ジャンル : 小説・文学

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