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こちらは「虹の指針」のSSになっております。未読の方は「虹の指針」を
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バレンタインデーには小さなチョコケーキ。去年もそうだった。
そして今年はバイトやパートの人にも頼まれてしまった。いつも手伝ってもらって助かっているからそれは構わないのだが…。
それに綾世の作る物がおいしいから、と言われたら勿論悪い気はしない。
午前のランチを終えて頼まれた分をラッピング中。
「綾世さん」
莉央がひょいと業者搬入口から顔を覗かせた。
「時間空いたんで来ちゃった。少し休ませて。………それバレンタイン用?」
「そう。頼まれてた分。取りに来るだろうから」
今日パートに入っていた人には渡したけれど、今日入ってない人は今から取りに来るはず。
「綾世さんの作るスイーツもおいしいですもんね~」
莉央が椅子を引っ張ってきて綾世の横に座る。ここは莉央の定位置だ。
「綾世さんお昼食べた?」
「いただいたよ」
くすりとどうしても笑ってしまう。未だに変わらず綾世のお昼は莉央の弁当だ。時計を見ればもう3時で莉央はとっくにお昼を食べたはず。
莉央は変わらずいつでも綾世を大きく包んでくれる。楽しい事も嬉しい事も思い出が色々増えた。時には不安や寂寥感が綾世を襲うこともあったがそれも全部莉央が昇華してくれる。頼りきってしまっているのは分かっているけれど莉央がいつも笑って綾世を大きく包み込んでくれてそれに甘えきっている。
莉央がにやにやと締まりない顔で綾世を見上げていた。
「……何?」
「え~?……ケーキ、俺も貰える?」
「………当然だろ」
「当然なんだぁ?…明日綾世さん休みじゃないけどいっぱいしてもいい?」
「…………」
いちいち聞かなくていいのに。莉央がしたいと思ってくれるならそれで構わないのにわざわざ確認するのがいやらしい。
ちろりと莉央を睨むと莉央が肩を竦めた。
「たまには綾世さんから~…言われたいなぁ…?滅多に言ってくれないから~…」
そんな事!恥かしいだろうが!
だいたい莉央はノーマルなんだから…一緒にいてくれるだけでも十分なのに綾世から誘うなんてできっこない。
「こんにちは~!ケーキ取りに来ました~」
表は閉めているので裏からパートさんが入って来た。
「川嶋さん、莉央くん!今虹出てますよ!凄く綺麗!」
「え!」
「!」
莉央と顔を合わせる。すると莉央が慌てて立ち上がり、綾世の腕を引っ張って外に綾世を連れ出した。
「本当だ!」
「……久しぶりに見た…」
冬の寒い空気だが青い空に綺麗に虹がくっきり綺麗に出ている所を莉央と並んで見上げた。
「……」
そういえば…。
ゆっくりと綾世は莉央に視線を向けると莉央もじっと綾世を見ていた。
「あ!ヤバイ!お客さんのとこ行く時間だ!綾世さん、すみません!俺行きますね!じゃあ夜、楽しみにしてます!」
「え?……あ、ああ……」
じゃ!と莉央は手をあげてあっという間にいなくなってしまった。
「……………」
さっさと道路に停めていた会社のバンに乗って莉央は行ってしまうと綾世はむぅっとして面白くなくなった。
せっかく出た虹なのに!
去年は一緒に虹は見ていないのに!久しぶりに…莉央の誕生日以来の一緒に見た虹なのに!
…三回目の虹なのに…。
莉央は忘れてるのだろうか…?
ずっと虹を見ていなかったから…。でも虹が綾世の特別だって知っているはずなのに。莉央にだって特別だって…言ってたのに…。
三回目、一緒に見たら……って言ってたのに…。
プロポーズなんてそんなのはいいけど、せめてもうちょっと一緒に見ててもいいじゃないか!まだ虹は消えてないのに!さっさといなくなるってどう言う事だ!?
「…莉央は…忘れた…のかな…」
まさか、と思うけれど…。だって虹と聞いて莉央は綾世の腕を引っ張って急かすように外に連れ出したのに…。それなのに綾世をほっぽりだしてさっさと仕事に行くってどういう事だ!?
…いや、仕事だったら仕方ないんだけど…。せめてもうちょっとだけでも一緒に見ていたかった…。
「川嶋さーん?どうかしたんですか?」
パートさんが慌てていた綾世と莉央を窺う様に外に出てきた。
「あ、いや…なんでも…」
「あれ?莉央くんは?」
「………仕事に行った」
むっと綾世は眉間に皺を寄せる。
面白くない!
「……川嶋さん…?」
綾世がむっとして不機嫌になったのが分かったのかパートさんがさらに窺う様に綾世を見た。
不機嫌になったって仕方ない!
…折角の虹だったのに!久しぶりの虹だったのに!…二人で見る三回目だったのに…。
莉央が悪い!絶対!
テーマ : BL小説
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