後夜祭は体育館で、総立ちで生徒や他校生も皆入り混じっている。
生徒会役員の譲は実行委員の人と一緒に裏方で進行の手伝いとかの予定だったのが、眼鏡がないために何も役に立たない。
その代わりに世那が動いていた。
「ったく何で俺が…」
「ごめんなさい~」
「いや、譲は何も悪くないだろ」
眼鏡がなくてほとんど見えない譲は邪魔にならないようにとただ舞台裏で椅子に座っているだけだ。
吹奏楽にバンド演奏と盛り上がっていくけど、一番はなんといってもミス、ミスターコンテストだろう。
女子なんか特にもう準備しながらもずっとその話題ばかりだった。
去年は1年生ながらも会長だったけど、今年は世那がミスターコンテストで一番だったらしい。
ミスは誰かなぁ…。
なんかミスとミスターでオモチャの王冠被せられて写真撮影とかあるらしいけど…。
去年の学園祭の新聞を見たら会長が王冠かぶって、去年のミスの人と並んで写ってた。
世那の一番が嫌っていうわけじゃないけど…やっぱりちょっとそれは嫌かな…。
だってそれだけもてるって事なわけで…。いや分かってるけど!
かっこいいし!優しいし!…ちょっと意地悪言う時もあるけど。
「何だ?」
片付けを手伝って戻ってきた世那が屈んで座っている譲の顔を覗きこんできた。
「ううん…なんでもない。なんか…世那に迷惑ばっか…だよね…」
「別に迷惑とは思ってねぇよ…それより…」
そっと世那が譲の耳元に顔を近づけてきた。
「な、なに?」
「譲…分かってるだろうな?」
「何が?」
「帰ったら…」
「え!?あ、う…ん……分かってるよ」
「だよな。お前エロだし?」
……むぅっと口を尖らせると世那がくっくっと笑っている。
「もっとエロくなって誘うようになれよ?」
「さ、さ、誘う…?」
「そ」
いくらなんでも誘うっていうのは難しいような…気がする…。
「ま、大体分かるけどな」
誘うって!と頭をぐるぐるさせていると世那がまた笑った。
「…分かる!?」
「そりゃ分かるさ!お前エロい気分になってると顔真っ赤にして目ウルウルさせてもじもじしてるもん」
恥かしくてかぁっと顔が熱くなって世那の肩をどんどんと叩くと世那が余裕で受け止めながら笑っている。
譲の前で膝をついている世那の格好の所為でなんかちょっと変な気分だ。
だってホントに王子サマみたいなんだもん。だからって別に王子サマに憧れてたわけじゃないけど…。
なにしろいつもと世那の格好がちょっとばかり違うから…。
「ほら、そこイチャついてないで!ミスターとミスコンの発表に入るぞ」
「べ、べ、別にイチャついてなんてっ!」
舞台裏にいた譲達のところに来た会長の言葉に譲は慌てながらステージの方に耳を傾けた。
異様な歓声が聞こえてくる。
そしてノリノリな実行委員の司会進行も聞こえてくる。
『お待たせしました~!メインイベント!今年もミスター、ミスコン絵の発表の時間です~~~~!!!』
うお~、からキャーまで色々な声が混じっている。
学園祭が初めての譲はすごいなぁ~と自分が裏にいるのがちょっと悔やまれた。
「あ!ミスターって世那なんだよね!大変!ここにいたら見られないっ!」
慌てて立ち上がろうとしたら世那と会長に止められた。
「どうせお前下に行ったって眼鏡なきゃ見えないだろ?」
「……そうだけど…」
「大人しくここにいろ」
「………見たいのに」
見えなくたって世那がステージに立って王冠かぶるトコは見たいのに!
「あ、携帯っ携帯っ!ってここから写メ出来ない!」
「いいよ。あとからどうせいっぱいもらえるだろうから」
「あとから?いっぱい…?」
世那が苦笑してた。
『ミスターは2-4天間 世那~~~~!今年は圧倒的に女子の票総ざらい!断トツの1位!』
「ほら!行け!」
会長が譲の肩を抑えて世那を顎で促した。
はぁ、と嘆息を一つ漏らして世那が立ち上がるとステージに向かって姿を消してしまう。
世那の姿がなくなった途端に譲は心細くなり、代わりに舞台上に現れたのだろう世那の姿に黄色い声が体育館の中に飛広がった。
『王冠の授与~~~~!おめでとうございます~!そして続けてミス~~~!』
キャーーーーーー!と女子の声。
……ん?女子の声?ミスコンに?なんで?
『こちらも今年は女子の票総なめ!おまけに気付かない男子くんも結構いたらしい!ぶっちぎりの1位!1-2高橋 譲~~~!勿論男子!なんだけど!票が全部白雪姫って書かれてたので!間違ってないかな!?』
間違ってな~い!の女子の合唱。
…………………高橋 譲?って…自分!?
いや!間違ってるでしょ!
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