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僕の好きな人 67

 お風呂でシャワーを浴び、続けて世那が行ったのでその間にご飯の用意。
 お母さんが用意していってくれたみたいで温めたりよそったりだけなので簡単に済ませる事が出来る。
 ……なんかしてないと落ち着かなくて…。ドキドキしながら無駄に動いてしまう。
 だって!……2回目、なんだもん。
 心臓がますますうるさくなってくる。
 まずご飯が先!
 それにほら、すぐってわけじゃないだろうし!

 ……すぐでも譲はいいんだけど…とか!
 ぺちぺちと熱くなった頬を叩く。もう期待しまくりなんて…何考えてるんだよ、ととりあえず自分に突っ込んでとにかく今はご飯先!
 「譲」
 「はぅっ!」
 世那の声に驚いて持っていたへらを落としてしまう。
 早!いつの間に上がってきたの?…というか譲が一人で悶えてたのが長かったのか!

 「何してんだよ」
 くっと世那が笑ってへらを拾ってくれる…のはいいんだけど…。
 髪がちょっとまだ濡れて上半身裸って!…いや男なんだからいいんだけど!でもなんか男の色気っていうか…。
 世那はおとなっぽいし身体も筋肉ついててかっこいいから…。貧弱な譲とは大違いだ。自分と比べちゃダメでしょ、とは分かってるけど。一応男ですから、いい身体は羨ましい。
 「も、もう…ご飯食べる?」
 「ああ。腹へった」
 落ち着かない気分で何度も箸落としそうになったりして一人であわわわしてる。

 「譲」
 くくっと笑って世那が譲を後ろから抱きしめてきた。
 「何慌ててんだ?」
 「そ、そんな…じゃ」
 「そんなんじゃないんだ?」
 ………いや、そうなんだけど…。
 かぁっとしてまたどきどきしてくる。
 後ろから世那がぎゅっとしてきて世那の声が耳に響けばぷるぷると身体が震えてしまう。

 「んぁっ」
 世那がくすくす楽しそうに笑いながら譲の耳をかぷっと食んできてさらにびくんと身体が反応してしまう。
 「…そんなに期待されてんだ?」
 「そ、そ、そ…んな…」
 …事あるけど…。
 目が回りそう!
 「ご、ご、ご飯っ!」
 「ん?ああ…」
 世那はずっと上機嫌で笑いっぱなし。

 その世那の腕がするりと解けたのでご飯をよそい、テーブルに運んだりと譲も落ち着かないながらも動く。動いていた方が何かと落ち着く。…とは言ってもわたわたとはしてしまうんだけど!
 「逃げないから落ち着けって」
 世那に苦笑しながら言われれば恥かしくて!
 「ホントは飯なんかどうでもいいんだけどな…。お前はちっさいからちゃんと食わねぇとな。体力も切れたら困るし?」
 そ………んな切れそうな位…する…の?
 顔はずっと赤いまま世那を窺うように見る。

 「離してやんねぇぞ?」
 「い、い、……いい、よ」
 いい、というか、離してなんか欲しくない。
 世那に熱の籠もったような視線を向けられればそれだけでふわふわと気持ちが舞い上がっていきそうだ。
 ぽわんとした夢見心地なままもくもくとご飯を食べたけど、味も何も全然分からない位浮き足立っている。
 だって、だって…。

 隣に座っている世那の顔を見られなくて、でも気になって視界の端には常に世那を意識してしまう。
 もう余所の事が何も手につかない、他が何も考えられない位世那の事だけで譲の中がいっぱいになっている。
 好きってこんな風になるんだ…。
 考えるんじゃなくて感じるんだ。
 会長の事好きかも、って思ってたけど、全然違う。自分の心の中がいう事をきかないんだ。

 好き、見て欲しい、触れたい、触って欲しい、キスして欲しい、もっと、もっと…色々な想いが勝手に湧いてくる。
 考えてるんじゃなくて勝手に心が思ってしまうんだ。
 世那といると嬉しい、優しい気持ちが増えていく。
 こんなの初めて…。
 優しくされるのも、言葉をくれるのも、恥かしくて、照れくさくて、悶えそうになるけどでもやっぱり嬉しい。

 …自分なんかのどこがいいのかは謎だけど。
 ちんまい、という意味では確かに可愛い部類に入るかもしれないけど、野暮ったいど近眼眼鏡だし、ドジだし、いいとこなんてどこもないのに…。それになんといっても女の子なわけでもないのに、きっとよりどりみどり選べる世那がなんで自分なんかと一緒にいてくれるのか。
 でも、好きなんだ。どうしようもない位。自分で自分がいう事をきかない位に。

 ちらと世那に視線を向けたら世那が気付いて譲を見てくれる。
 それが嬉しくて思わず顔が笑ってしまうんだ。

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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