「はい!これ、あげる!」
「?」
何?とクラスの女子に手渡された封筒に首を傾げた。
「ホントはもっとたくさんあったけど写りがいいのを抜粋してきた!データいるならあげるよ?」
開けてみて譲はふき出した!
「こ、こ、これっ!」
もしかしなくても!譲と…世那だ!
振り替え休日の翌日、教室に着いたとたんに渡されたそれに冷や汗が流れそうだ。
学園祭の時は眼鏡を外されてて鏡を見ても視界がはっきりしなく、自分で自分の姿が全然分かっていなかったのだが…。
ぱらぱらと写真を見ていって顔が赤面してしまう。
ナニコレ…?
なんか自分でいうのもなんだけど、けっこう普通に可愛いかも…とはいっても、化粧もしてもらっていたし、格好も普通じゃない!
女の子だったらアリかもしれないけど、あくまで譲は男なんだから!
でも問題はそこじゃなくて…自分がこんな顔して世那の隣にいたのか?って事だ!
なんか写真で見るとまるきり女子で…なんか…もう世那とべたべたした写真ばっかりだ。
いや!確かにべたべたしてたけど!
それは目が見えなかったから!
……言い訳に過ぎないのは分かっている。
どの写真を見ても世那を見てる自分の目が世那の事を好きー!っていう目をしているように思えてしまう。
……そんな事思うの自分だけかもしれないけど!
なんか恥ずかしい…。
ステージでキスされてるのとか、お姫様抱っこされてるのも…。
コレ、お母さんお父さんに見せられないでしょ!
「あ、ありがと…」
一応お礼を言って全部見ないうちにそそくさとそれを鞄の中にしまってしまう事にする。
「お礼言うのこっちだから~!いや~!目の保養!楽しませてもらったよね」
あ、そうですか…。
「ステージでこけたのわざとでしょ?」
わざとじゃないけど…素でコケたってのもちょっと恥ずかしいのでうやむやに返事をしないと女子は勝手にお姫様抱っこで話が盛り上がっていくのでほっとしてしまう。
そのまま曖昧に相槌を打っておけば勝手に話は進んで勝手に終了していくので助かった。
「じゃ、高橋は天間先輩ゲット頑張って!可愛いって言ってもらえた?」
ぽんと肩を叩かれ応援されてそれも曖昧に頷いておく。
「まぁ、天間先輩もまるきり脈なしっぽくないけど~!読めないからねぇ。義理の兄弟だから、っていえばそれまでな感じだし」
あ、そう…?それならよかった。
世那が悪く言われるんじゃなかったらそれはそれでいいや。
学園祭の時に隠れて世那に体育館倉庫であんな事されてました、なんて絶対言えない。
……しかしホントに女子の力って凄い。
一緒にいた姫男子にも多分ばれてるはずなのに全然譲が世那を本当に好きとかそんな話は出ていないらしい。
…表では、かもしれないけど。
学園祭はもうとにかく終わったのでよしとする。問題は世那が本当にバイトする気みたいで学校から帰ってきてからと土日もするらしいって事だ。
親がいない時は絶対休むって言ってたけど。
親がいたっていなくたって譲は世那がいないんじゃ寂しい。
でもそんな我儘な事言えるはずない。
何をどう考えて世那がバイトなんて言い出したのか譲は分からない。譲といるのが嫌になった…って訳じゃないんだよね…?
なんか世那のバイトの話を聞いてからちょっと気持ちが凹んでいる気がする。
学校が休みで親も日中仕事でいなかったからずっと譲は世那にくっついてべたべたしてたけど…やめた方いいのかな…。
元々譲は自分に対して自信満々なわけじゃないのでどうしても一回悪い方に考えちゃうと段々と凹んできてしまう。
はぁ、と譲は溜息を吐き出した。
なんで世那はバイトって言い出したんだろう?
譲がべたべたしすぎで頼りすぎだから…?
…そうじゃない、はず…多分。
大体世那が譲を好きってのが分かんない。いいとこなんてどこもないのに。
世那が決めた事を譲があれこれ考えても仕方のない事だ。
でも自分がこんなだから…それに世那はかっこいいし…きっともてちゃうはず。
もしやっぱりこんな譲なんか…って思われたら…。
そんな事思ったってどうしようもないけど…。
いいんだ、譲が世那を好きなのは変わらないし、世那もきっと…。
そう思っておかないと!
一応義兄弟になって、家族になったのに、男なのに、それでも好きだと世那も言ってくれるんだから!
強く思ってなきゃそんな事にはならないはずだ!きっと!
そう。
自信のない自分を考えないようにと譲は小さく頭を振った。
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