はのんのBL部屋

　学校の帰りにコンビニに寄って世那が履歴書を購入。
　ホントにホントなんだ、とやっぱりちょっとヤな気持ちが出てきそうになるのを譲は押し留めた。
　「…場所ってどこなの？」
　「駅近くだから一回家帰ってからでも余裕だ」
　「…そうなんだ…」
　「もし決まったらちゃんと譲にも教える」
　「……世那なら大丈夫でしょ」
　だっててきぱきしてるし、見た目だってかっこいいし、背も高くて大人っぽいし、きっと女性客とかだっていっぱい来そうだもん…。

　そういう人取らないはずないと思う。
　勉強だって譲は要領が悪いからもたもたしてるし、理解するのも時間がかかるし、世那は予習をちょっとしてる位っぽい。
　きっと元々の出来が何事においても譲とは違うのだろう。
　はぁ、と世那に分からない位に小さく溜息を吐き出した。
　
　そして次の日、面接に世那が行くと、世那の知り合いの先輩の紹介という事もあってあっという間にバイトは決まったらしい。
　駅は西高生も多いけれど世那なら平気だろう。
　それがもし譲だったら多分無理だ。…きっと絡まれてしまうだろう。
　どうして自分はこうなんだろう…？
　なんか色々と凹んでくる。

　「慣れるまでは来るなよ？」
　世那はバイトが決まって機嫌がいいみたいだ。
　「……うん…。世那なんか欲しい物とかあるの？」
　「欲しい…つぅか…まぁ色々とな。ただ連日みっしり入るつもりはないから。譲…寂しい？」
　「………」
　ご飯を食べ終わって世那の部屋でベッドに寄りかかって並んで座っていたけど世那にそう聞かれ、いいのかな、と思いつつ世那の腕に抱きついてから小さく頷いた。

　世那がよしよしと頭を撫でてくれる。
　いてくれればいいのに…そんなの我儘だと思っても自分で勝手にそう思っているだけならいいだろう。
　でも心の中でこんな事思ってるなんて…世那の顔をまともに見る事が出来ない。
　世那によく思われたい。やだ、なんて言って駄々こねて世那に呆れられたら絶対に嫌だ。だったら我慢して理解あるようにしてた方いいに決まってる。
　「頑張ってね」
　「ああ……譲…」
　世那が譲を呼んで顎に手をかけると軽くキスする。
　照れくさいし恥ずかしいけど、世那とのキスも大好きだ。

　世那はバイトをはじめたけれど、帰りが一緒なのは同じ。ただ帰ってきて着替えてからバイトに行っていなくなってしまう。
　譲はやっぱりご飯の用意して、そして勉強して時間を潰す。
　あまりにもテストの点数が悪かったら悲惨だ。世那はいいみたいだし、もう学校中で義兄弟になった、という事は分かられているみたいで、世那になんでも迷惑かからないようにしないと！

　極端に成績下がったりしたら先生にも何言われるか…。
　譲はそれだけの事でもう手一杯でさらにバイトなんて考えられない。
　ご飯の用意だって勝手にしてるだけだ。
　…世那の好き嫌いが見えるから。
　おいしいとぱっとした顔をして譲を見てくれるし、あまり好きじゃないのは眉間にちょっとだけ皺がよる。それでも残すって事はないから…。

　お父さんも誉めてくれるし、人から誉められるのが嬉しくて勝手にしてるだけだ。
　お母さんは私いらないみたい、って笑ってる。
　和気藹々の団欒が嬉しい。お母さんと二人だけだったのがこんなにすんなりとお父さんにも世那にも生活にも順応して、世那の事がこんなに好きになるなんて。
　…一人でそんな事を考えて照れくさくなる。

　そしてちょっと苦しく思う時もある。
　世那の事を考えて苦しくもなるし、堂々と親にも告げる事も出来なくて苦しいという事もある。
　でもどうしたって世那以外考えられない。あんなに心臓が壊れそうになるのはやっぱり世那だけなんだ。
　譲は机に向かって予習してたのにまた余計な事ばかり考えていてはっとした。　
　だから自分はダメなんだ。
　ちゃんとしないと！

　どうしても世那のバイトが気になって気がそぞろになってしまう。
　世那は一体何が欲しいんだろう？バイトしなきゃいけないくらい高価な物が欲しいんだろうか？
　譲はゲームもあんまりしないし特にこれといって欲しい物もない。
　小さい頃から母一人だったし本当に必要な物以外は我慢出来る。
　でも世那だってそんなに物が溢れてるっていうほどじゃないと思うんだけど…。
　世那が何を考えて行動しているのかなんて譲に分かるはずはなかった。

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続きに拍手コメお返事です^^

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